
次世代育成プログラム導入事例:「持続可能性」を実現する組織への挑戦
秋田県に拠点を置く東電化工業では、事業規模の拡大・成長に応じた組織づくりと、社員の主体性向上、そして次世代育成が課題となっていました。そこで活用されたのが、ビジネスコンサルタント(BCon®)の次世代育成プログラム「未来プロジェクト」です。

ジェイテクト労働組合は、組合員数約1万人・12支部を擁する大規模な組織です。母体企業である株式会社ジェイテクトが組織変革を進めるなか、同組合もまた、自らの存在意義、目的を改めて定義し直すことが期待されていました。
この記事では、ビジネスコンサルタント(BCon®)の支援を活用して展開された、多くの組合員を巻き込む参画型プロセスによるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定の取り組みをご紹介します。
「理念やビジョンを掲げても、現場に浸透しない」「結局は一部の人だけで決めてしまう」「組織が大きくなるにつれ、一人ひとりの当事者意識が薄れていく」――こうした悩みは、規模が大きく複数の拠点を持つ組織の多くが抱えるものではないでしょうか。
本事例でご紹介する取り組みは、労働組合はもちろん、企業をはじめ「大きな組織で、どうすれば一人ひとりが当事者になれるのか」という問いに向き合うあらゆる組織に、多くの示唆を与えてくれるものです。
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ジェイテクト労働組合が、組織変革に取り組み始めたのは2019年のことでした。当時は、経営提言など労働組合の活動が、執行委員それぞれの視点や課題意識に基づく範囲にとどまり、かつ創設以来の綱領への意識が薄まっているという課題がありました。
これに対して、中央執行部では「組合員の幸せ」「会社の持続的発展」という『2つの柱』を改めて発信し、組織的な組合活動への転換を進めていきました。
2024年には、母体企業がMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を刷新。これを契機とした経営との対話から、労働組合としての存在意義、組織が目指す姿を改めて整理し言語化する必要性が高まったことから、同組合はMVVの策定に取り掛かります。
しかしMVVの策定は、同組合として初めての取り組みでした。さらに組合員の判断基準や共通言語として浸透を図り、一人ひとりの自律的な行動を促していくことも含めた取り組みとするためには、内部のリソースのみでは困難だと考えられました。
そこで、外部からの支援を活用し専門的な知見を取り入れるとともに、より多くの人(役員、組合員)が意思決定に参画するプロセスの実現を目指すことに。これまでにも労働組合の取り組みを支援してきた実績を持ち、組織変革に関する豊富な知見を持つBCon®が、パートナーとして伴走させていただくこととなりました。
MVV策定の取り組みは、フェーズ1(2025年3月〜6月)とフェーズ2(2025年7月〜12月)の2段階で進められました。
一連の取り組みにおいてポイントとなったのは、ワークショップなど参加者が直接顔を合わせて議論する機会の充実、そして意見集約と取り組みの連続性を高めるオンラインツールやAIの活用です。
フェーズ1では12支部の代表約50名が集まる対面ワークショップを計3回実施。このフェーズの目的は、中央執行部のメンバーだけでMVV策定を進めるのではなく、すべての支部の三役(支部長、副支部長、支部書記長)が参画する機会をつくり、多様な声を集めることでした。
「フューチャーサーチ※」の手法を用いて、それぞれ「過去」「現在」「未来」をテーマにワークショップを実施。「2035年まで」という具体的な期間を設定し、単年度など短期的な目標設定ではなく、より長いスパンで組合の目指す姿を明確にしていきました。「グラフィックレコーディング※」で作成したディスカッションの記録は、以降の取り組みにおいても活用されました。
さらに各ワークショップの実施後は、参加者(各支部の三役)が体験から得た学びや視点をそれぞれの支部に持ち帰り、支部メンバーと「ミニ対話」を実施。ワークショップと同様の問いかけを行い、組合員の参画を促す工夫がなされました。
各ワークショップと、その後に行われた「ミニ対話」での検討内容や発言・意見をオンラインホワイトボード上に集約することで、ワークショップと各支部での対話に連続性をもたせました。また多くの意見を効率的に集約するため、クラウドによるデータ共有と即時処理も活用。参加者が「UMU※」に入力した感想などを生成AIで類型化することで、さまざまなコメントを分類して投影・共有できる即時性を実現しました。各支部でのミニ対話で集まった多くの声も生成AIを活用して要約、次回ワークショップの冒頭で共有し、組織全体の声を反映しながら進めているという実感を生み出す工夫を行いました。
●フューチャーサーチ
利害や立場の異なる多様なステークホルダーが一堂に会し、過去・現在の認識を共有したうえで、望ましい未来を探索・共創する対話型の会議手法。「ビジョン」よりも広い「Common Ground(共通基盤)」を見出すことに特徴があるとされる。
●グラフィックレコーディング
ディスカッションやプレゼンテーションの場で、文字やイラストを使ってリアルタイムに可視化。論点の整理にくわえ、感情や雰囲気といった情景を含めて記録できるため、理解を深めるとともに、後から見返した際にも詳細を思い出しやすい資料になる。
●UMU
オンライン学習プラットフォーム。動画などの資料を利用した学習とともに、受講者が意見を投稿するなど双方向の学びを支援する。
フェーズ1で集まった組合員からの多くの声をベースに、組合執行部4〜5名により、MVVの具体化と合意形成を進めました。
中央定期大会
※中央定期大会は、社内の取り組みとして例年9月に実施されているもの
第1回・第2回では、MVVの基本構造や方向性を確認・検討。中央定期大会後に実施した第3回・第4回では、フェーズ1で集まった多様な意見を一つの言葉へと絞り込み、議論を重ねて表現を練り上げました。
この段階において、BCon®のコンサルタントは主に検討の枠組みづくりや毎回の論点整理を担います。議論の「答え」を示すことはせず、あくまで執行部メンバー自身が考え、話し合い、決定するためのサポートに徹します。
こうしたプロセスを経て、ジェイテクト労働組合のMVVは以下のように策定されました。
一連の取り組みが組織にもたらしたのは、MVVだけにとどまりません。フューチャーサーチ参加者を対象としたアンケートでは、「自分がこのMVV策定に関わる当事者だと思いましたか」という問いに対し、84%の参加者が「非常にそう思う」「そう思う」と回答しました。こうした高い当事者意識を引き出せたこともまた、参画型プロセスによる大きな成果の一つといえます。
MVV策定後も、各支部の役員を中心に自発的・自主的な姿勢が育まれ、組織とその活動への関わり方に変化が生まれました。「どうすれば一人ひとりが自分ごと化して関われるか」――この問いを軸に、さまざまな手法を活用しながら議論の場とコミュニケーションを組み立てることで、組織の大きさをむしろ強みとして活かし、継続的な取り組みに転換させることができました。
多くの人を巻き込んで組織のあり方を検討し、方向づける取り組みについて、ご興味をお持ちの方は以下のボタンからお問い合わせください。
ジェイテクト労働組合で取り組みを主導された、中央執行委員長の伊藤様、中央副執行委員長の鈴木様・堀田様、中央書記長の山下様に、一連のプロセスやコンサルタントへのご評価を伺いました。
伊藤:いちばんの成果は、一部の人だけでなく、いろいろな人の声を反映し、集約したものをMVVとしてつくり上げられたことです。はじめは「執行部が中心になって盛り上げる」という感覚もありましたが、取り組みを重ねるうちに、組合員自身が自発的に関わるようになっていきました。「組合のMVVは、会社のMVVを土台から支えるもの」と位置づけて両者がつながるよう意識し、検討の過程においては多くの組合員を巻き込み、表現の一つひとつを細かくやりとりしながら形にしました。「みんなの声を総合してつくったMVVだ」と胸を張っていえること、その過程を経験できたことも、組織にとって大きな財産、学びになりました。
鈴木:組合の過去・現在・未来を体系的に捉え直すプロセスに、特に大きな価値を感じました。約20年にわたるジェイテクト労働組合の歴史、現在の状態、これから目指す姿を整理しながら、中央本部と12支部の三役が一体となって議論することができました。設立時を知るメンバーから当時の様子を直接聞くなど、若い世代や後から関わったメンバーが、組合の成り立ちや価値観を深く知る機会になりました。こうした経験は、組織としての一体感や納得感の醸成につながったと感じています。
堀田:目的とする成果物はMVVであっても、その過程で、能動的・主体的な姿勢を引き出すことができました。また、フューチャーサーチの開始当初は、数カ月先、あるいは数年先というような目先の未来に参加者の意識が寄りがちでしたが、次第に「もっと先(の未来)まで視野を広げて考えないといけない」と気づいていきました。「未来」に対するメンバーそれぞれの意識や視野の違いに気づけたことも、大きな発見でした。
山下:12支部に分かれた三役が一体となって直接対話し、いろいろな声が形になったことは、この取り組みでなければ成し得なかったと感じています。
伊藤:一部の支部から、「こう展開したほうが組合に根づくのではないか」「MVV浸透のために予算を組みたい」といった提案が、自発的に出てきました。提案の内容はもちろん、支部が本部に向けて、主体的に提案したこと自体にとても大きな価値があると思います。これまでの本組合にはなかったことです。
鈴木:中央本部・支部三役によるワークショップの後、各支部において「ミニ対話」を行うという連携を進めたことで、「中央本部・中央執行部主導の取り組み」ではなく、支部の組合員を含めた一体的な活動として広げられたと感じています。
堀田:組合のMVVの軸が会社の向かう方向とズレていないことを、策定の段階でも確認することができました。経営層とのコミュニケーションの量は、以前とは段違いに増えています。
伊藤:多様な意見を一つに絞り込むプロセスは、本当に難しいものでした。それでも、BCon®のコンサルタントは決して「答え」を示すのではなく、メンバーが言葉にしきれない想いを要約や言い換えで言語化し、確認しながら形にしてくれました。AIを活用して整理するといった工夫もあり、あくまで主役は私たち自身で、私たちを「その気にさせる」のが本当に上手い。こうして伴走をしてくれたからこそ、最終的に高い満足感と達成感を得ることができたのだと感じています。
鈴木:特に印象に残っているのは、MVVの最終案を固めるコアチームの会議です。観点の違いから議論が大きく広がり、なかなか着地できませんでした。そのときコンサルタントは、出てきた意見を一つひとつ丁寧に整理しながら、「何を大切にするのか」という軸に立ち返らせてくれた。単なるアウトプットの作成支援にとどまらず、プロセスそのものの価値を高めてくれる存在でした。
山下:労働組合で、MVVのような「軸」となるものを持つ組織は、それほど多くないと思います。BCon®のサポートで、客観性を取り入れながらつくり上げていくことができました。取り組みを常にコントロールするのではなく、伴走してくれる距離感が、私たちにはフィットしました。プロセスの節目では絶妙のタイミングで「そろそろいかがですか」という連絡がある。業務が忙しく検討が滞りがちなときでも継続的に押し進める、よい合図になりました。
堀田:議論の手法についていうと、グラフィックレコーディングはその場で内容や過程が可視化されていくので、理解を深めるのに役立ちました。各支部からの参加者も、ワークショップ中に描かれたものを写真に撮って各支部に持ち帰り、対話にも活用していたようです。
伊藤:BCon®には、LEMS®やODL®といった公開講座を含め、学ぶためのメニューが豊富にあります。公開講座では、私たちのような労働組合の幹部だけでなく、経営者をはじめ多様な立場の方々と関わることができ、視野が大きく広がりました。自分たちだけでは思いつかない視点に出会える学びの機会を、これからも活かしていきたいと考えています。
鈴木:MVVは、策定して終わりではありません。つくった言葉をどう定着させていくかが次の課題です。全組合員が同じ認識を持ち、MVVを単に「掲げるもの」とするのではなく、日々の行動や意思決定に活かされる「行動指針」として根づいている状態を目指しています。
※文中敬称略
策定したMVVを、いかに組合内に浸透させ、具体的な活動と実践に結びつけていくかが、新たな課題です。
同組合では活動方針をMVVを軸としたものへと組み直すとともに、より多くの組合員にMVVを知ってもらうための工夫を始めました。MVV策定の背景や意図を動画で共有するほか、「自分にできる小さな一歩」をテーマにしたワークシートなどにより「一人ひとりが自分ごと化していくもの」へと育てていこうとしています。

MVVを名刺サイズのカードに記載した「対話カード」は、BCon®との取り組みとは別に、同組合が自主的に作成したアイテムです。各支部において職場委員が組合員へ手渡す際に、MVVを策定した背景や込めた想いをあわせて伝えることで、配布そのものが職場での対話と浸透のきっかけになっています。
さらに今後は、社員(組合員)が年度ごとに作成する「MYチャレンジ(チャレンジ宣言)」にも同組合のMVVが活用され、個人の成長と会社の成長が結びついていくことを目指しています。
ジェイテクト労働組合とBCon®による今回の取り組みは、規模の大きな組織においても多くの人が当事者として関わり、多様な意見を踏まえた指針づくりの軌跡です。また、その過程を通して生まれた組織の変化も、大きな成果といえるでしょう。
BCon®は組織開発の知見を活用し、今後も、ジェイテクト労働組合の組織としての成長と、MVVの浸透をはじめとした取り組みを支援してまいります。
組織に変化のきっかけを生み出し、じっくりと議論に伴走しながら、プロジェクトを支えていく。BCon®は一人ひとりが主体的・自発的に関わりたくなる場づくりとコミュニケーションを設計し、組織のなかにある多様な意見や想いを集めて活かすしくみづくりをサポートしています。
「組織の方向性や目指す姿を言葉にして、ビジョンやMVVとしてまとめたい」「一人ひとりが当事者として関わる風土を育て、組織そのものを変えていきたい」――そのようにお考えの企業、組織のご担当者の皆さまは、ぜひお気軽にご相談ください。
BCon、LEMS、ODLは、株式会社ビジネスコンサルタントの登録商標です

事業環境の変化が早く、働く人の多様化が進むなか、エンゲージメントを高め、組織の持続的成長の要となるのが「私たちは何屋なのか」「私たちは何を目指すのか」「どんな価値観を大切にするのか」といった、組織運営の上位概念です。
BCon®ではこれらの概念を「MDCVS®(ミッション・ドメイン・コアバリュー・ビジョン・ストラテジー)」と定義し、その問い直しから策定、浸透までを支援します。組織開発コンサルタントがプロジェクトに伴走し、視野を広げた検討と本音での対話を実現します。経営の根幹をなす考えを整理・可視化するとともに、プロジェクトメンバー同士の相互理解を促進し、チームとしての一体感の強化を図ることで、新たなMDCVS®実現への推進力を高めます。
組織開発や人材開発に関する最新情報や、他社事例などを学ぶセミナーです。マネジメントの原理原則を体系的に学ぶとともに、自己革新型組織を実現するための組織変革の考え方などを学習します。
組織開発の理論やテクノロジーを踏まえながら、自組織の現状を捉え、今後の施策検討に向けたヒントを得ることができます。
自ら組織に働きかけ、周囲とともに変化を生み出すリーダーシップを、3泊4日の組織活動実習を通じて実践的に学ぶプログラムです。参加者は、組織をつくり、役割を担い、他のチームや組織と関わる中で生まれる協働や対立、変化に当事者として向き合います。そこで起きていることを捉え、より良い組織にするために、自分は何をすべきか、周囲にどう働きかけるかを学びます。