サステイナブルビジョン策定支援導入事例:SDGsと未来志向

JAみっかびでは「三ヶ日みかん」をはじめとする商品のブランド価値をさらに高めるとともに、高齢化による生産者の減少といった課題を解決し、組織の強みを伸ばす取り組みを続けています。ここでは、SDGsを基点にしたサステイナブルビジョンの策定と実現に向け、ビジネスコンサルタント(BCon)がお手伝いした事例をご紹介します。

組織名
三ヶ日町農業協同組合(JAみっかび)
カテゴリー
  • 組織開発
  • 人材育成
  • 持続的成長

※本文に記載の事例内容、取材協力者のお名前・所属等は、取材当時のものです。

課題とソリューション

Before

  1. SDGsが自治体の都市計画に取り入れられ、地域企業・組織に認知され始めていた
  2. 組織内では、サステイナビリティやSDGsについての認識・理解が十分ではなかった
  3. グループ組織内でもSDGsの活用事例がなく、取り組みを新たに企画する必要があった

After

  1. 研修とプロジェクトチームの取り組みを通して、サステイナビリティやSDGsへの理解が深まった
  2. サステイナブル経営の課題と進捗を“見える化”するツール「Future-Fit」で、組織の現状と課題を整理し、持続可能な組織・事業の在り方を検討できた
  3. 組織として2040年までの「サステイナブルビジョン」を検討・策定できた
  4. SDGsを指針に、組織と商品のブランド価値向上を図る取り組みが計画・検討できた
  5. プロジェクトチームでの取り組みを通して、若手の自律心が高まった

背景:気候変動や社会状況の変化が直接的な問題に

JAみっかびは、甘さとコクで知られる「三ヶ日みかん」の生産・販売を中心に事業を展開しています。

生鮮食品としては全国で初めて「機能性表示食品」として受理されるなど、商品価値を高める取り組みを積極的に進めてきました。

※2015年に骨の健康維持に有効とされる「β-クリプトキサンチン」、2020年に高血圧改善の効果が期待される「GABA(ギャバ)」を含有する機能性表示食品として消費者庁に受理された。

しかし、将来においても持続する組織であるためには、いくつかの課題がありました。

気候変動への適応・サステイナビリティへの貢献

気候変動に伴う自然環境の変化は、みかんを特産品とするJAみっかびにとって最も重要で直接的な問題です。これに対応し、さらにサステイナビリティの実現に貢献することが求められていました。

少子高齢化や外部環境の変化に対応する組織づくり

他の地域と同様に、少子高齢化による農業人口の減少が進み、みかんなど農作物の生産・販売事業の持続的成長を妨げる要因となりつつあります。そこで2021年には最新設備を導入した柑橘選果場を開設し、担い手不足、消費者ニーズの変化や流通の多様化への対応を進めました。

さらに女性リーダーの育成や人事制度改革を進めるなど、JAみっかびは常に組織としての成長に取り組んできました。BConは研修プログラムやコンサルティングを提供し、こうした組織力強化の取り組みをサポートしています。

課題:“2030年”の先を目指すための基礎づくり

SDGsを軸とした既存事業の変革・新たな事業の創出は、まさに今、目の前にある課題です。JAみっかびではSDGsの達成目標である2030年を1つの目処としながら、さらに20年後、30年後、その先の未来においても存続する組織をつくるため、3つの課題を設定しました。

組織全体でサステイナビリティとSDGsへの理解を深める

サステイナビリティとSDGsについて組織全体で理解を深め、浸透させる。

SDGsを指針に、三ヶ日みかんのブランド価値を向上する

「三ヶ日みかん」のブランド価値を維持・向上するため、SDGsの達成とサステイナビリティの実現に向けた施策を事業に取り入れる。

長期的な目標としてサステイナブルビジョンを策定する

事業に関する中期計画である「3カ年計画」を踏まえ、若手職員の意見を反映して2040年までの「サステイナブルビジョン」を策定する。

いずれもJAみっかびとして初めての取り組みであり、またJAグループ内での先行事例もごく少ないものでした。こうした背景から、サステイナビリティとSDGsの視点による既存事業の評価・分析し、サステイナブルな社会の実現に貢献する取り組みの検討を、ゼロから行う必要がありました。

取り組み:ビジョンを策定・共有し、実践への足がかりをつくる

3つの課題の解決に向け、JAみっかびでは以下のような取り組みを進めました。BConはサステイナビリティやSDGsに関する知見、そして組織開発のノウハウを活かして、その挑戦をサポートしています。

サステイナビリティとSDGsについての組織全体への浸透を図る

BConのコンサルタントが講師を務め、全職員を対象とした研修を実施しました。サステイナビリティとSDGsについての基礎知識や「持続可能性の4原則8項目」などのほか、国内外での企業による事例を紹介。さらに、JAみっかびがサステイナブルな経営・事業に取り組む意義を共有しました。

理解が深まるにつれ、SDGsはJAグループの基本的な考え方となる「JA綱領」との親和性があり、これまでJAみっかびが進めてきた身近な取り組みが、それぞれのゴールにつながっていることが見えてきました。

プロジェクトチームを立ち上げ、JAみっかびの「未来像」を描く

既存事業の課題を整理して解決方法を探り、サステイナブルな未来にあるべきJAみっかびの「未来像」(サステイナブルビジョン)を描くため、2020年にはプロジェクトチームが編成されました。

プロジェクトチームのメンバーは2年目の若手職員から主任までが中心となり、2カ月に1回程度のプロジェクトミーティングを実施。各回に設定されたテーマ(議題)について検討、議論を重ねてきました。

※「持続可能性の4原則8項目」について…… こちらのページでご紹介しています。
※「MDCVS」について…… M:ミッション(目的・使命)/D:ドメイン(事業領域)/C:コアバリュー(中核的価値観・信念)/V:ビジョン(ゴール・目指すべき姿 夢・希望)/S:ストラテジー(戦略・顧客価値の特定)

さらに、サステイナブル経営の課題と進捗を“見える化”するツール「Future-Fit ビジネス・ベンチマーク」を活用。SDGsの視点からJAみっかびの事業を再評価し、組織としての課題を明らかにしました。

BConは各回のテーマ・課題についての考え方をアドバイスするなど、具体的な提案に向けた議論をサポートしました。

Future-Fit ビジネス・ベンチマーク

「Future-Fit ビジネス・ベンチマーク」は、ビジネスが地球環境と社会に負荷を与えず、むしろ回復と持続性を助ける存在となることで、将来においても必要とされる企業になるための具体的な指針を与えてくれるツールです。

「Future-Fit ビジネス・ベンチマーク」について、詳しくはこちらのページでご紹介しています。

サステイナブルビジョンの実現に向けた施策を検討する

プロジェクトチームが具体的な施策を検討するにあたって、BConは他の組織での取り組み事例をご紹介しながらコーチングを実施。テーマから施策への落とし込み・具体的な目標設定などのプロセスをお手伝いしました。

約1年間の活動を経て、2021年の春、プロジェクトチームは活動報告としてJAみっかびのサステイナブルビジョンを全職員に向けて発表しました。

サステイナブルビジョンは「8つの柱」から成り、それぞれのテーマに紐付いた具体的な施策案に落とし込まれています。

サステイナブルビジョン:8つの柱と、それぞれに紐付いた施策案(目標)

  1. 循環型社会……紙ゴミの100%回収と再利用/みかんの木・皮を100%再利用/ジュースの搾汁残渣リサイクル/腐敗みかんのリサイクル
  2. 自然資源への配慮と再生可能エネルギー……風力、太陽光、バイオマス発電で農協施設のすべての電力をまかなう/バイオマス発電、バイオガス製造で農業廃棄物をゼロに
  3. 技術進化と省力化……肥料・農薬の廃棄をゼロへ/カビ0倉庫を目指す
  4. みかんから始まるNEWライフスタイル……世界中の人がみかんを食べている/出荷できない小玉を被災地・地元小学校に寄付する
  5. 人と自然との調和……自然を活かした施設づくりを行う
  6. 行政と連携した地域コミュニティの形成……町内の待機児童数ゼロ/高齢者サポート、婚活サポート/三ヶ日町観光地化計画
  7. 儲かる農業のバックアップ……儲かる農業のアピール
  8. 三ヶ日町農協らしく羽ばたくために……三ヶ日町のPR動画 再生回数1,000万回/チャンネル登録者数 15万人/単純作業から機械作業へ

プロジェクトを通して、若手のエンゲージメントを向上

プロジェクトチームに参加したメンバーも当初はSDGsについての知識は少なく、ミーティングでさまざまなアイデアを出しあいながらも、一方で「夢物語なのではないか」といった疑問や不安感が拭えなかったといいます。

変化のきっかけになったのは、理事会での中間報告でした。プロジェクトチームによる課題整理、そして解決に向けたいくつもの提案は高く評価され、メンバーに自信が生まれました。組織としての取り組み・経営に、若手をはじめとした現場の声が生かされる場が、エンゲージメント向上や後継者育成の基盤になることがわかります。

またチームでの活動が他部署や組合員にも知られていくにつれ、交流のきっかけになるといった点もメンバーのモチベーションを高める機会になっていたようです。

インタビュー:取り組みの成果とご評価

BConとの取り組みについて、JAみっかびの組合長と、プロジェクトチームのメンバーに伺いました。

若手の力を生かしたプロジェクトから、新しいビジネスの発想も。

代表理事組合長 井口 義朗 様

サステイナブルビジョン策定にあたって特に重要なポイントとして考えていたのは「SDGsの考え方を、いかに職員に浸透させるか」ということでした。この点についてはBConのサポートを受けながら若手職員によるプロジェクトチームが中心となって広めていくというアプローチが取られたことに、大きな意味がありました。

また若手職員、特に3~10年目くらいの職員は十分に能力があります。もっと仕事を任せれば、それを業務に生かせるのではないかと考えました。プロジェクトチームのメンバーに責任を持って仕事をしてもらうことで、モチベーションを高めるきっかけにもなっていたと思います。しっかり話し合えるチームになり、職員同士のつながりが持てたという点でも評価したいですね。

プロジェクトチームによる提案のなかで、紙のリサイクルやペーパーレス化といった手近なものは、すでに取り組みが進んでいます。また新たな選果場には、出荷できないみかんを処分するため「有機物残渣処理システム」が導入されました。これまでは焼却処分していたみかん(腐敗みかん)を、下水に排水可能な分解水と炭酸ガスに分解するものです。焼却処分と比べ、大幅にCO2排出量を削減することができるようになりました。

こうしたプロジェクトチームでの企画・成果を、組織として具体的な形にしていくことが大切だろうと考えています。ただ、SDGsへの取り組みは考えたこと・実行したことがすぐに結果として現れるものばかりではないでしょう。より長いスパンでの視点・発想を持つことが、これからの課題の1つだと考えています。

今後は特に「循環型社会」を優先的なテーマとして、農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」も踏まえながら、地域に貢献する具体的な施策、三ヶ日という地域ならではのJAのあり方を考えていきたいと思っています。たとえば、(年間を通して葉が茂る)常緑果樹であるみかんの特徴を生かして、CO2排出量売買(CO2排出量枠の販売)を行うといった事業にも可能性があるのではないかと考えています。

SDGsへの理解を深められたことが、組織の行動を変えるきっかけに。

【プロジェクトメンバー(左から)】東 様/竹下 様/大野 様

竹下:プロジェクトチームのメンバーに選ばれたときは、突然のことだったので驚きました。しかも、JAみっかびの一員となってまだ2年目なのに「若い世代の代表として」といわれてリーダーに。当時はSDGsについてほとんど知識がありませんでしたから、やる気半分、不安も半分。でも、実はSDGsについての理解度は他のメンバーも同様で、SDGsについて学び、JAみっかびとしてどのように取り組みを進めていくべきなのか、BConから丁寧に説明してもらうことができ、理解を深めながら議論を重ねていくことができました。

東:プロジェクトが始まってSDGsについて調べてみると、JAがふだんからやっていることが、実はそのままSDGsにつながっている部分もかなり多いと感じました。一方で、理解が深まっていくにつれて、既存の事業を「17のゴール」に当てはめていけば済むというような、簡単なことではないということもよく分かりました。こうしたズレをきちんと整理しながら考えていくことができたのは、BConのサポートがあったからこそだと思います。
プロジェクト1年目には「経営計画発表会」での発表がゴールになりました。難しかったのは2年目です。チームの提案が一部実現されたものの、今後どうなっていくのか、どう進めていけばいいのかがイメージできないことも。

大野:それでも、2年目に全職員研修でプロジェクトチームが説明を行った際には、職員全体が基本的な知識や共通認識をもった上で、SDGsやその取り組みについて理解してもらえているという実感がありました。また、最近は生産者の方々にもSDGsとの関わりを説明するとお話を聞いていただきやすく、理解してもらえる土壌ができていると思います。

東:「プロジェクトグループがなくなっても、組織の“流れ”として続けていける」というような、SDGsの考え方を基に、職員が自発的に取り組めるようになっていきたいですね。

大野:私が所属する部署では、「摘果みかん」の活用に取り組んでいます。みかん育成の過程で間引いた摘果みかんはそのまま食用にするのは難しく、大量に廃棄されてきました。そこでSDGsへの取り組みの一環として、苗木や幼木の摘果みかんをしぼって加工食品にしようという取り組みを進めています。一方で、生産者の手間や、冬場の(商品として販売する)みかん生産とのかねあいも考える必要があります。JAとしては「いいこと」だと思っていても、生産者への負担が大きく、経済的なメリットがなければ持続することは難しいでしょう。そうしたところを工夫して、続けていけるようにしていきたいと考えています。

竹下:プロジェクトチームに参加したことで、個人的に変化したと思うところもあります。私自身はもともと、個人よりもチームとして取り組むことが好きでしたが、プロジェクトでの経験を経て、協力してものごとに取り組む姿勢がさらに身につけられたと思います。また所属部署での業務についても、自分なりに考え、意見を示して、実際に行動に移していくという意識が培われました。他のプロジェクトメンバーからも「他部署のメンバーとの交流・活動が深まっていくうちにモチベーションが上がった」「職員の前で活動報告を発表する機会があり、成長する機会になった」という声があります。また、BConのサポートが行動のきっかけになり「資料や人から聞いた話だけで判断するのではなく、現地や設備を視察して理解を深め、提案をまとめられた」という経験も。「議論が行き詰まったときも、BConのアドバイスがゴールまでの道しるべになった」といった感想もありました。

(文中 敬称略)

次のステップへ:サステイナブルビジョンと事業の融合を目指す

JAみっかびが進めるサステイナビリティへの取り組みは、まだ始まったばかりです。しかし、基礎的な内容を学ぶ全職員向け研修から始め、プロジェクトチームの立ち上げ、サステイナブルビジョンの策定まで、約2年間の取り組みを順調に進めることができました。

ここまでのフェーズが成功した大きな要因として、組織のリーダー(理事会・組合長)が取り組みを推進、若手をはじめとしたプロジェクトメンバーによる提案・企画を尊重し、実現に向けて現実的な経営計画に取り入れて実行をサポートしたことがあります。

もちろん、プロジェクトチームに参加したメンバーの熱意も不可欠なものでした。現状を整理し組織の課題を自らの課題として捉える姿勢は、それまでにつくられた組織風土があったからこそ得られたものでしょう。

またSDGsや持続可能性の達成に向けた取り組みだけでなく、職員の一人ひとりに訪れた変化や成長も、大きな成果の1つだと言えるのではないでしょうか。

 

2030年が近づくにつれ、さまざまな企業・組織がサステイナブルビジョンの策定やSDGsへの取り組みを進めています。その多くはまだ本来の事業や業績に結び付けられずにいますが、いわば「本業」とサステイナブルビジョンを融合させることが、持続可能な経営基盤につながっていきます。

JAみっかびの若手職員による今回のプロジェクトは、JAグループの中でも先駆的な取り組みになりました。BConはその成果を基に進められるであろう、サステイナビリティを軸とした事業改革を、今後も支援してまいりたいと考えています。

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三ヶ日町農業協同組合(JAみっかび)

本社
静岡県浜松市北区
事業内容
営農・生活指導事業/経済事業/信用事業/共済事業/厚生事業/その他
従業員
120人(2021年4月1日現在)
ウェブサイト
https://mikkabi.ja-shizuoka.or.jp/

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