サービス化を支える2つの「つながり」
サービス化を進める上で欠かせない、重要なステップの1つが「モノの利用に伴うデータ」の獲得と活用です。ここでは「つながり」をキーワードに、サービス化を支える技術と仕組みについて取り上げます。
IoTが「つながるビジネス」の基盤に
「サービス・ドミナント・ロジック」が主張した「サービス」の概念が急速に浸透した背景には、ビジネスに必要な情報をデジタル化し、共有して活用するデジタルトランスフォーメーション(DX)の広まりがありました。
そもそも「モノを使うこと・経験によって価値が生まれる」のならば、企業はまず、顧客がどのようにモノを使っているのか、どのような経験を得ているのかを把握することが必要です。
「モノ(というサービス)を提供し、データを集め、価値を計る」という流れをつくる上で重要な役割を担ったのがIoT(Internet of Things モノのインターネット)です。さまざまなモノがインターネットに接続され、データの送受信、あるいはモノ同士での情報交換が可能になりました。そして企業は、顧客がモノを利用したときの状況をデータとして蓄積・保有し、解析することができるようになったのです。
こうした仕組みを活用することで、企業が利用状況をデジタルデータとして収集・分析し、顧客に還元される(情報のアップデート)という循環が生まれました。顧客はそのメリットを、特に意識せずに享受することができます。
つまりサービス化は、IoTによって収集されたデータを活用し、企業と顧客の共創によって「価値づくり」を図る、企業と顧客がつながるビジネスモデルを目指す取り組みでもあるのです。
企業同士がつながる「インダストリープラットフォーム」戦略
サービス化の進展において重要なポイントの1つが「顧客が得る経験の質」の向上です。
顧客のニーズはさまざまです。しかし、そうした多種多様な顧客課題やニーズに対応しようとする多品種少量生産、あるいは個別受注生産への対応は、個々の企業やサプライチェーンに大きな負担をもたらします。
そこで、国や企業、業界や業種の垣根を越えたオープンイノベーションによって問題を解決しようとする企業が登場しました。ヒト、モノ、カネ、情報、ブランドといった経営資源を共有することで負担を軽減し、生産性の向上を目指したのです。
こうした、オープンイノベーションに基づいて構築された産・学・官にまたがる共同体は「インダストリープラットフォーム」と呼ぶことができるでしょう。
サービスの提供者と利用者が集まる魅力的なプラットフォームに参加する企業は、バリューチェーンの獲得、新たな顧客との接触、利用状況に関するデータの取得、あるいは角度の異なる顧客へのヒアリングといったメリットを得ることができます。それぞれの強みや知見の共有・相互利用を可能にしたプラットフォーム(基盤)は、サービス化に推進力を与えるものとなりました。
プラットフォーム上でタッグを組む企業がそれぞれの強みを生かすことで、これまで難しいとされてきた分野にも挑戦できるようになりました。個々の企業が大事にしてきた顧客層をマッチングし、テクノロジーとノウハウ、価値観を共有するという、垣根を越えた“つながり”に基づく戦略の実現です。