このようなときに大切なのは、リーダーが組織の中で働く人たちに対して心理的安全を提供することです。これは率直(オープン)で明瞭に物事を伝えたり、相手ときちんと向き合い、そして信頼や希望のシグナルを送ることによってできます。人間の脳は、不確実なことを嫌います。状況をコントロールできなくなることや、社会から疎外されることを恐れるのです。
人間の脳は、仲間をつくり帰属すること(インクルージョン)、貢献したり影響力を発揮すること(コントロール)、そして互いに率直であること(オープンネス)を好みます。私たちの安全と生存を守るのが脳の役割ですから、危機やストレスに直面したときには、現実よりも悲観的に物事を認知してしまうのです。ですから、とくにこういった状況では、リーダーが状況の深刻さから目を背けることなく、しかし落ち着いた穏やかな態度や希望といったものを発信する必要があるのです。
私たちの脳は、常に身の回りの情報を十分に集め、その状況から脱却・進化するための次のステップを計画したいと思っています。それが、組織や会社の戦略なのです。ですから、組織の意思決定や戦略を伝えるときには、なぜそのような意思決定に至ったのかをきちんと説明し、そして状況が変わることがあれば常に情報が開示されるということが理解されていなければなりません。