
「モノ」から「コト・イミ」へ ~顧客体験(CX)を起点とした新たな価値創造~
モノを売るだけでは差別化が難しくなった今、企業が向き合うべきなのは、顧客が「使う中で何を感じ、どんな価値を得ているのか」という体験そのものです。

日本の産業構造が大きく変わり、製造業においても「モノ発想」から「コト・イミ発想」への転換が急務となっています。そして持続的な成長を目指す企業にとって、事業の「サービス化」は最も重要な課題といえるでしょう。
本コラムでは、顧客体験のフローを可視化し価値を共創するための「DCXLSモデル」と、それを活用して新たなビジネスエコシステムを導く「SXP」について詳しく紹介します。
*本レポートは2025年10月6日に実施したウェビナー「サービス化で差がつく未来戦略 モノ売りから脱却し、顧客価値を共創する企業へ」をご紹介するコラム記事の最終回です。
商品を手にする前の段階。現代のユーザーは、購入するかなり前の段階から様々な情報にアクセスしている。ECサイトの口コミなどを見ていると「まだ使っていないけれど、届くのが楽しみです!」といった投稿を見かけることも。まだ使っていないのに、もう評価が始まっている。顧客が頭の中で「こうやって使っていこう」「ああなったらいいな」と、利用シーンをデザイン(Design:創造)している状態。様々な情報チャネルを通して接触(Contact)し、頭の中でのデザイン(シミュレーション)を行ったり来たり繰り返しながら、期待値を高め、最終的に「これなら自分のやりたいことが実現できそうだ」と意思決定して購入に至る。つまり、買う前から顧客の体験はすでに始まっている。
商品を手にして使っている段階。ここで初めて、事前の期待との答え合わせが行われる。実際に使ってみる経験(Experience)を通じて、「思った通りだ」「意外とこうなんだ」と実感する。
さらに重要なのが、そこから顧客自身が何かを学習(Learn)すること。例えば服を買うとき、事前にネットの推奨サイズを見て「自分はMサイズかな」と思って店舗に行ったが、実際に履いてみるとSサイズの方がしっくりくることもある。試行錯誤する中で、独自の価値や意味が見出される。このZone2のプロセスにおいて、顧客自身の内側に本質的な価値(エッセンシャルバリュー)が生成されていく。
体験を通じて得た価値が定着すると、それは外へと広がっていく。これから商品を買おうとしている人たち(Zone1の人たち)は、実際に経験した人の生きた情報を欲しがっているからこそ、口コミ情報が意思決定の判断材料として絶大な効果を持つ。単なる満足や不満だけでなく、「こんな使い方があったんだ」「こういう時に便利だった」という「気づき」や「価値」が発信されることが重要だ。
感動した体験や発見を他者と共有(Share)したいという欲求は自然なもの。また書き込みや発信をしている本人にとっても、それは「自分は良い買い物をした」「こんな価値を得たんだ」と、自らのエッセンシャルバリューを「再認知」している段階といえる。自己実現の感動を共感し、推奨してくれるロイヤルカスタマーの発信は、どんなセールスパーソンよりも強力なセールスとなる。
Zone2(利用中)からZone3(利用後)にかけて生成される「エッセンシャルバリュー(本質的価値)」とは、どのようなものでしょうか。
BCon®では、製品やサービスそのもの(コンテンツ)の体験の価値、あるいはその体験から派生する「コンテクスト(文脈)」が持つ価値の総称を、「エッセンシャルバリュー(本質的価値)」と定義しています。
3つのZoneを見ていくと、「エッセンシャルバリュー」はZone2~3にかけて生成されていることがわかります。特に「利用中」においては、顧客自身の内側に「文脈価値」が生まれています。
企業がこのZone2・3の領域で顧客、あるいはその文脈に接触し、エッセンシャルバリューを引き出すことができれば、製品やサービスの価値を、さらに顧客と共創していく接点となり得るのです。
映画の世界では “Content is King, Context is Queen” というそうです。すばらしい脚本や題材(コンテンツ)が揃わなければ、顧客が感動する文脈(コンテクスト)は生まれないという意味です。
ビジネスにおいては、顧客が認める優れた製品(コンテンツ)を通じて、顧客が感動する文脈(コンテクスト)を生み出せるかが勝負になります。
この「文脈価値」へのシフトは、身近な例で見るとわかりやすいでしょう。例えば、ビールのテレビCMです。
かつてのビールCMでは、「キレ」や「コク」といった商品の機能を前面に出す表現が多く見られました。一方で近年は、誰とどの場面で飲むかといった情景や、一緒にビールを楽しむ人たちの関係性を描く構成も増えています。例えばアサヒ「マルエフ」やキリン「一番搾り」のCMは、こうした文脈価値を伝える表現として紹介されることがあります。
そこでは、「美味しいビール(コンテンツ)」であることは大前提として、それを通じて得られる「安らぎ」や「人間関係の再構築」といった「文脈価値(コンテクスト)」が提案されているのです。私たちは無意識のうちに、その文脈に共感し、商品を手に取っているというわけです。
顧客が製品を利用している最中、つまり製品やサービスと接触する文脈中に、特別な感情や動機が生まれていないか。あるいは、顧客の体験価値をどうやって実現させていくのか、どんな視点でそこにアクセスしていくのか。DCXLSモデルといくつかのヒント(視点)を掛け合わせることで、これまで見過ごしていたビジネスの種が見つかるはずです。
DCXLSモデルを活用して、文脈的価値を生み出し、新しいビジネスをつくり出す。そうした取り組みを支援するため、BCon®が提供しているプログラムが「SXP(Service Transformation Program)」です。
ここで取り組むのはいわば「価値共創マーケティング」のためのプロセスであり、最終的には、顧客との共創による文脈価値が貴社にとっての「バリュープロポジション」となればすばらしいことだと考えています。
SXPでは、以下の3つのステップで企業の提供価値そのものの変革を図ります。
現状の延長線上でSWOT分析などを行うのではなく、「未来のあるべき姿」や「社会課題」を起点に状況を認識します。競合はもはや同業他社だけではありません。広い視野で市場を捉え直します。
ここで「DCXLSモデル」を活用します。顧客の利用プロセスを徹底的に分析し、どのような「サービスとしてのビジネス(X as a Service)」が成立するか、価値共創マーケティングをデザインします。
「顧客はなぜ我が社を選ぶのか」「顧客は何を得られるのか」。これを明確にする「バリュープロポジション」を定義します。ここでは、従来の「顧客・自社・競合」の3C分析に加え、「社会課題に対する姿勢」も重要な要素となります。顧客と社会に対して独自の提供価値を言語化し、ビジネスモデルへと実装します。
SXPの3つ目のフェーズ「P (Value Proposition)」では、具体的な価値提案を創出します。一般的にバリュープロポジションといえば、「顧客」「自社」「競合」の3つの円が重なる部分で考えられます。しかし、これからの時代に求められる価値提案は、従来のアプローチだけでは不十分ではないでしょうか。
BCon®では、下図のような独自のモデルを用いて検討を行います。
この図には、2つの大きな特徴があります。
従来のモデルでは顧客の要望(①)に含まれがちだった「社会課題」を、独立した重要な要素(③)として外に出しました。サステナビリティやSDGsへの対応が求められる今、社会課題に対してどのような姿勢で取り組むかは、企業の存在意義そのものに関わるからです。
「競合が提供する価値(④)」の円をあえて小さく描いています。これは、「競合=同業他社」という固定観念を捨てるためです。業界の垣根が消えつつある現在、本当の競争相手は全く異なる業界から現れる可能性があります。そのため、既存の競合との差別化ばかりに目を向けることの重要性は、相対的に低くなっていると考えています。
「①顧客の願望」を知り、「②自社の強み」を分析し、「③社会課題」を取り入れ、「④競合が提供できない価値」を提案する。これらが重なり合う中心点が「顧客はなぜ我が社を選択するのか」「顧客は体験から何を得ることができるのか」を明確にする「我が社のバリュープロポジション・コンセプト」となります。
では、SXPの進め方、ビジネスのサービス化のプロセスを、もう少し具体的に見てみましょう。
SXPでは、以下の「ステップ0」から「ステップ6」までのプロセスを通じて、サービス化(Service Transformation)と、新たなエコシステムの構築を支援します。
SXステップ0:まずは「カスタマージャーニー」です。ユーザーの立場になり、探求・接触・利用・評価といった一連の流れで起きる行動や感情を徹底的に考えます。
SXステップ1:ステップ0を踏まえ、「なぜ買いたいのか」「使って何を得たいのか」を考え、価値提供の大枠の方向性を定めます。
SXステップ2:単一の商品ではなく、複数の「コト」と「サービス」を組み合わせ、事業化するためのアイデアと、それを実現するための課題・対策を検討します。
SXステップ3:どのようなプラットフォームを構築し、どんなメンバー(パートナー)に参加してもらうべきかを考えます。ここでは直近ではなく、「将来のSWOT分析」を行い、未来の対策を検討します。
SXステップ4:循環型経済(サーキュラーエコノミー)の視点を取り入れ、新たなステークホルダーとの連携や、持続可能なビジネスモデルを模索します。
SXステップ5:重点的に投資すべきサービスを明確にし、足りないコンテンツやパートナーの追加を検討します。
SXステップ6:最終的なまとめとして、ビジネスエコシステム全体のバリュープロポジションを再検討・明文化し、ビジネスモデルの提案書として仕上げます。
サービス化を通じて顧客との「共創」をつくっていく。SXPのコンセプト、あるいは目標は、この「共」という字で描いたサイクルで表せるのではないかと思います。
はじめはBCon®と企業が新たな価値を共に創り出すところから始まりますが、やがて、業界や業種を越えたビジネスパートナーとの共生関係になっていく。その成果として、お客さまにとって最適なサービスが提供され「お客さまが喜び、パートナー企業と共に喜ぶ(共歓)」ことができる。こうしたサイクルが、戦略を展開していくなかで生み出せるような取り組みを目指したいと考えています。
※本稿に記載されている会社名・商品名・サービス名等は、各社の商標または登録商標です。
BCon®では、サービス化を進めることで新たなビジネスモデルを構築し、お客さまにとってはもちろん、社会課題の解決においても価値ある事業の実現を目指す企業をサポートしています。
サービス化についての理解促進、自社の強みの維持・強化、新たな付加価値の獲得への取り組みについて、ぜひご相談ください。サービス化実践支援プログラム「SXP」をはじめとした多彩なプログラム、個別のコンサルティングサービスにより、未来戦略の計画と実行を支援いたします。
以下のお問い合わせフォームから、お気軽にお問い合わせ・ご相談ください。

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モノを売るだけでは差別化が難しくなった今、企業が向き合うべきなのは、顧客が「使う中で何を感じ、どんな価値を得ているのか」という体験そのものです。

「今のビジネスモデルは10年後も通用するのか?」――多くの企業が直面するこの問いに対し、カギとなるのが「サービス化」への転換です。

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