多くの企業が「本業を問い直す」理由とは?
最近、多くのお客さまから「本業を問い直したい」という言葉をお聞きします。
日本の産業が成熟化し、産業構造はすでに大きく変わっています。第4次産業革命とも呼ばれるデジタル技術の進展により、業界の垣根が急速になくなりつつあります。そうしたことから「自社のビジネスモデルが、10年後も通用するのか」「通用しないのであれば、我が社は“何屋”になっていくのか」ということを、多くの経営者が考えるようになりました。
そこで改めて確認したいのが「モノ中心の経済から価値創造経済へ」という言葉です。現在の経営環境において、競争の軸はモノや技術そのものではなく、顧客・社会との「関係性」、顧客にとっての「意味」「存在意義」をいかにつくり出すかというところに移っています。
加速する「価値創造経済」への転換
実際に、「モノ」から「コト・イミ」へと提供価値の転換を図る企業の動きは加速しています。
写真フィルム事業で培った技術をヘルスケア分野へ展開し、顧客接点の再構築に取り組んできた富士フイルムや、モビリティ領域でサービス化を志向する方針を掲げるトヨタ自動車などが、こうした文脈で紹介されることがあります。
「脱・本業」という文脈で、「脱・旅行」や「脱コンビニ」といった表現が、JTBやローソンに関連して用いられることがあります。これらは自社が提供する価値(事業)を、切符や商品の販売ではなく、「旅そのものの体験デザイン」や「(高齢化に対応する)生活・医療の拠点となること」へと進化させようとする動きといえるでしょう。
つまり「本業を問い直す」というのは、単に「事業領域を変える」ということではありません。価値の起点を自社の「モノ」に置くのではなく、顧客を中心に据えて発想し直し、顧客との関係性を再接続(再構築)することなのです。
「今のビジネスモデルが10年後も通用するのか?」
この問いに対し、多くの経営者が「通用しないかもしれない」という危機感を抱き、「脱・本業」を掲げ、新たなビジネスモデル、新たな価値創造のあり方として、「サービス化」を模索しているのです。
デジタル技術がもたらす2つの変化
サービス化の実現に密接に関わるのが、デジタル技術です。急速に発達するデジタル技術は、私たちの仕事のやり方やあり方そのものを変えつつあります。デジタル技術によって生産性を向上させ、さらには社会課題の解決にもつなげられるかという点が、これからのサービス化を進めるうえで重要な基準になっていくのではないでしょうか。
デジタル技術の活用による「製造業のサービス化」と「シェアリングエコノミー」
デジタル化の進展による変化は、ECサイトによる「チャネルのデジタル化」や、本や映像がデジタルデータになるような「商品・サービスのデジタル化」だけではありません。

デジタル化によって生み出される新しい潮流の1つは「製造業のサービス化」です。従来の「モノを作って売って稼ぐ」というビジネスモデルから、「製造したモノの使用(コト)から稼ぐ」モデルへの転換を意味します。製品の対価としてではなく、その製品の稼働状況を把握してメンテナンスやアフターケアを提供する、あるいは利用量や成果に応じて対価を得るモデルです。
もう1つは「シェアリングエコノミー」です。インターネット上のプラットフォームを介して、場所・モノ・人・お金などの遊休資産を個人間で貸し借りしたり、交換したりする動きです。
社会課題解決にもつながる「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」
これら新しいモデルの大前提にあるのが、「働いていない、使われていない、空いている状態の資産を活用することで成長機会を獲得する」という、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の視点です。
少し具体的なイメージをしてみましょう。たとえば、日本における自家用車の稼働率はどれくらいだと思いますか?ある調査によると、その稼働率はわずか「4.2%」だそうです。つまり、95%以上の時間は駐車場に停まっているだけで、価値を生んでいない「もったいない」状態なのです。他にも、病院で処方された方の半数以上に、薬の飲み残しが生じているといったデータもあります。
これまでの大量生産・大量消費の時代は、「資源を取って、作って、最後に捨てる」という一方通行のモデルでした。しかし、これからは「(資源を)借りて、使って、戻す(循環させる)」モデルへと転換していく必要があります。

一方通行の経済モデルにおいては、事業サイクルは長くて重いものであり、売り切った時に一度しか価値を生みませんでした。しかし、サーキュラー・エコノミーにおいては、DXを活用した短くて速い事業サイクルが実現可能になります。一つの資産を使い倒すことで、何度も価値を生み、資産回転率が劇的に向上します。今後は「所有の経済」から「利用の経済」へ移ることが指摘されています。
サービス化やシェアリングは、モノを無駄に作らず、今ある資産を有効活用するアプローチでもあります。つまり、ビジネスをサービス化することは、収益構造の変革であると同時に、地球環境問題などの社会課題解決にも直結する戦略だといえるでしょう。