新入社員フォローアップ研修で取り入れるべき要素
フォローアップ研修は、新入社員が自身の成長を実感し、今後のキャリアを主体的に考えるための重要な場です。研修を通じて、単なる知識やスキルの習得にとどまらず、思考を深める内省、これまでの経験の振り返りによる成長の実感、自己理解の促進、期待役割の把握、先輩社員との対話、次の1年に向けた目標設定といった要素を取り入れることが求められます。
これらを組み込むことで、新入社員が自らの成長を前向きに捉え、今後の行動に目的意識をもつことが期待できます。
「なぜそう考えたか」に気づけるダブルループ学習の習慣化
ビジネスパーソンとしての成長を促すうえで、振り返る力を啓発することが効果的です。
成長につながる振り返りとは、「〇〇という目標を達成できなかった。なぜならその理由は△△という事象が発生して、計画通りに進められなかったから」というような表面的なものではありません。振り返る力を高めるために、ダブルループ学習の習慣化を促しましょう。
例えば、「なぜ顧客対応でミスをしてしまったのか」を振り返る際、「上司に相談しなかったから」だけではシングルループの振り返りです。一歩踏み込んで、「なぜ上司に相談できなかったのか」「なぜ、上司に声をかけることをためらってしまったのか」「その時自分はどのような恐れや懸念を抱いていたのか」「その時自分は何を優先していたのか、お客さまに満足いただくことより自分が怒られないことを優先したのかもしれない」などと問いを進めることがダブルループ学習です。こうした問いを繰り返すことで、自分自身の思考や行動のくせに気づくことができます。ダブルループ学習は、思考と行動のプロセスを見直すことで内省力を高め、より柔軟で主体的な行動へとつなげる有効な手法です。
ビジネスパーソンとしての成長を実感できる場にする
配属後まもなくは、慣れない目の前の業務に追われ、自分の成長を実感しにくくなる時期でもあります。フォローアップ研修では、これまでの経験や成果を「言語化」することが求められます。例えば、「学んだこと、うまくいったこと、いかなかったこと、障害となったこと」などの観点から振り返るといったワークを通じて、自分の変化を客観的に確認します。この「成長の実感」は、自信を取り戻すと同時に、今後のモチベーションを高める原動力となります。言葉にすることで、自分自身の変化に気づきやすくなる効果もあります。
自己理解を深め、自分らしい成長の軸をもつ
社会人として働き始めて半年ほどの時期は、目の前の業務をこなすことに精いっぱいで、自分の強みや特性をまだ把握しきれていないケースも少なくありません。そこで重要になるのが、自己理解を深める機会の提供です。フォローアップ研修では、自己の強みやコミュニケーションスタイルを把握するための診断ツールを活用し、自分の強みや行動傾向を可視化することで、客観的な視点から自分自身を見つめ直します。こうした気づきは、自分らしい成長の軸を築くうえで、大きな手がかりとなります。
また、診断結果をもとに対話を行うことで、自分では気づいていなかった一面を発見することもあり、今後のキャリアを主体的に描くためのヒントとなります。自分を知ることは、不安の整理にもつながり、自信をもって行動する力を育てる第一歩です。
自分に期待されていることを理解する
上司や会社から自分に今、何を期待されているのかを考えることは、社会人として成長していくうえで欠かせない視点です。日々の業務に追われる中では、自分の役割や求められている成果を見失いがちですが、改めて立ち止まり、「自分に求められていること」を捉え直すことで、目の前の仕事への向き合い方が変わってきます。
フォローアップ研修では、上司からの期待を伝える手紙やフィードバックを通して、客観的な視点から自分の立ち位置や期待を確認する機会が設けられます。そうしたメッセージを受け取ることで、組織の中で果たすべき役割や、今後の成長に向けた方向性を明確にすることができます。期待を知ることは、不安を整理する助けになると同時に、自らの目標設定にもつながり、自律的な行動を促します。
先輩社員との座談会でリアルな気づきを得る
実際に現場で活躍している先輩社員や上司との座談会を取り入れることで、リアルな経験談やアドバイスに触れることができます。例えば、「入社1年目の壁をどう乗り越えたか」「うまくいかなかったときにどう対応したか」といった具体的なエピソードが共有されることで、新入社員自身の悩みに対するヒントが得られます。
また、自分だけが入社後ギャップに戸惑いを感じている訳ではないと知ることで心理的な安心感が生まれ、今後の業務に前向きに取り組むきっかけにもなります。座談会は、先輩社員との距離を縮めるための貴重なコミュニケーションの場としても機能します。
次の1年に向けた前向きな意欲を引き出す
研修では、これまでの半年間を振り返るだけでなく、今後の1年をどう過ごしていくかを考えるパートも重要です。例えば、「1年後にどんな業務を任されていたいか」「そのために今どんな準備が必要か」といったワークを通じて、目指す姿を具体的に描き、達成に向けた行動計画を立てることができます。
こうした未来志向の取り組みを行うことで、目標に向かって努力する意識が生まれ、自律的な成長につながります。また、将来への不安を整理することにもつながり、前向きなマインドを育む効果もあります。