新入社員フォローアップ研修の目的とおすすめカリキュラムご紹介

新入社員フォローアップ研修の目的とおすすめカリキュラムご紹介

入社時の導入研修を実施した後、現場配属された新入社員に対してどのようなフォローアップを実施していますか?新入社員の成長を支え、組織への定着を促すために、新入社員フォローアップ研修の実施方法やタイミングを見直す組織が増えています。年間約300組織の新入社員研修を支援している弊社では、新入社員育成に関するお悩みや受け入れ側の課題を数多く伺ってきました。

本記事では、新入社員に対してフォローアップ研修を実施するべき理由と研修の目的を確認し、効果性を高めるために研修に取り入れたいポイントをご紹介します。

  • 新入社員フォローアップ研修は、離職防止や定着促進、成長実感の醸成に効果的
  • 研修実施時期は入社から6カ月後や1年後とする組織が多く、成長段階や目的に合わせた内容設計が重要
  • 研修では経験の振り返り、自己理解の促進、他者との対話を通じて、次の1年に向けた前向きな意欲を引き出す
目次
    株式会社ビジネスコンサルタント

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    組織づくり・人づくりを支援する専門家集団として、組織開発や人材育成に関する情報を発信しています。Well-being経営の共創パートナーを目指し、現場で役立つ知見や実践事例をわかりやすくお届けします。

    新入社員フォローアップ研修の目的

    フォローアップ研修の目的は、新入社員が自らの成長を実感し、次の目標を描けるようにすることです。入社後の業務経験を振り返り、身につけたスキルや強み、今後の課題を整理することで、自信を深め、仕事への前向きな姿勢を養います。また、日常業務から一時的に離れることで、見過ごしていた気づきを得たり、自身のキャリアや目標を改めて見直したりする機会にもなります。こうした成長実感と自己理解が、結果として不安や孤立感の軽減につながり、早期離職の防止にも役立ちます。

    成長実感と目標の明確化

    自身が身につけたスキルや経験を振り返ることは、成長を実感し、自信を深めるきっかけになります。例えば、電話応対やビジネスメールの書き方、社内システムの操作など、入社当初は戸惑っていた業務が「当たり前にこなせるようになっている」と気づくことで、自分の成長を実感できます。

    さらに、業務の中で感じた課題や不足しているスキルを棚卸しすることで、今後どのような知識や能力を身につけるべきかが明確になります。例えば、プレゼンテーション力や業界知識、チーム内でのリーダーシップといった中長期的な成長目標を考えるきっかけにもなります。こうした自己理解と目標設定を通じて、キャリアの方向性が見えやすくなり、日々の業務にも目的意識をもって取り組めるようになります。

    同期とのつながりが安心感を生む

    配属後は、各現場での業務に追われる中で、孤独や不安を感じる新入社員が少なくありません。フォローアップ研修では、同期と再会する機会が設けられ、日々感じている悩みを共有することで、「自分だけが悩んでいるわけではない」と実感できます。

    同期との対話を通じて励まし合いや情報交換が生まれ、心理的な安心感が得られるだけでなく、仕事へのモチベーション維持や成長意欲の向上にもつながります。
    こうした人とのつながりの強化は、新入社員が職場に安心感をもち、前向きに業務に取り組む土台となります。

     離職防止と定着促進

    新入社員の早期離職の主な要因には、業務への不安、将来への見通しの不透明さ、そして職場での孤立感があります。フォローアップ研修は、これらの不安を軽減し、前向きな気持ちで働き続けられる環境づくりに役立ちます。

    研修では、自身の成長を振り返るとともに、同期との交流や目標設定の機会が設けられるため、「自分は組織の一員として受け入れられている」「成長している」という実感が得やすくなります。このようなポジティブな認識は、仕事への意欲を高め、離職への迷いを減らす大きな要素です。

    また、キャリアの方向性を再確認することで、日々の業務への納得感や目的意識が強まり、結果として定着率の向上につながります。フォローアップ研修は、単なる知識やスキルの習得の場ではなく、定着支援の重要な機会でもあります。

    新入社員フォローアップ研修の効果的な実施時期

    フォローアップ研修は、多くの組織で入社から6カ月後や1年後に設定されています。いつ実施するのが効果的かは、研修の目的や新入社員の成長段階によって異なります。そのため、一律に決めるのではなく、組織の状況や抱える課題に応じて柔軟に検討することが重要です。

    入社6カ月後の実施―リアリティショックの緩和とメンタルケア

    入社から約6カ月が経過すると、業務に一定の慣れが出てくる一方で、「思っていた仕事と違った」といったリアリティショックに直面したり、知らず知らずのうちに疲労や不安が蓄積していたりすることがあります。この時期のフォローアップ研修では、これまでの経験を振り返り、不安や疑問を整理することで、心理的な負担を軽減することが目的です。また、同期との再会による交流や情報交換は、孤独感の軽減や安心感の醸成にもつながります。メンタルケアの視点からも、半年後の研修は新入社員の心身のリセットをする機会として有効です。

    入社1年後の実施―2年目への備えと後輩育成意識の醸成

    1年目を終える頃には、一定の業務経験を積み、職場での役割も少しずつ広がっていきます。そして、多くの企業では新たに後輩が入ってくる時期でもあります。2年目を迎えるにあたり、新入社員は自分自身の成長を再確認すると同時に、今後は「教える立場」としての意識をもつことが求められます。

    1年後のフォローアップ研修では、これまでの成長を振り返りながら、次のステップへの課題や目標を明確にすることが重要です。また、後輩への接し方や伝え方など、簡単な指導スキルへの意識づけを行うことで、2年目社員としての自覚と自信を育むきっかけとなります。

    新入社員フォローアップ研修で取り入れるべき要素

    フォローアップ研修は、新入社員が自身の成長を実感し、今後のキャリアを主体的に考えるための重要な場です。研修を通じて、単なる知識やスキルの習得にとどまらず、思考を深める内省、これまでの経験の振り返りによる成長の実感、自己理解の促進、期待役割の把握、先輩社員との対話、次の1年に向けた目標設定といった要素を取り入れることが求められます。
    これらを組み込むことで、新入社員が自らの成長を前向きに捉え、今後の行動に目的意識をもつことが期待できます。

    「なぜそう考えたか」に気づけるダブルループ学習の習慣化

    ビジネスパーソンとしての成長を促すうえで、振り返る力を啓発することが効果的です。

    成長につながる振り返りとは、「〇〇という目標を達成できなかった。なぜならその理由は△△という事象が発生して、計画通りに進められなかったから」というような表面的なものではありません。振り返る力を高めるために、ダブルループ学習の習慣化を促しましょう。

    例えば、「なぜ顧客対応でミスをしてしまったのか」を振り返る際、「上司に相談しなかったから」だけではシングルループの振り返りです。一歩踏み込んで、「なぜ上司に相談できなかったのか」「なぜ、上司に声をかけることをためらってしまったのか」「その時自分はどのような恐れや懸念を抱いていたのか」「その時自分は何を優先していたのか、お客さまに満足いただくことより自分が怒られないことを優先したのかもしれない」などと問いを進めることがダブルループ学習です。こうした問いを繰り返すことで、自分自身の思考や行動のくせに気づくことができます。ダブルループ学習は、思考と行動のプロセスを見直すことで内省力を高め、より柔軟で主体的な行動へとつなげる有効な手法です。

    ビジネスパーソンとしての成長を実感できる場にする

    配属後まもなくは、慣れない目の前の業務に追われ、自分の成長を実感しにくくなる時期でもあります。フォローアップ研修では、これまでの経験や成果を「言語化」することが求められます。例えば、「学んだこと、うまくいったこと、いかなかったこと、障害となったこと」などの観点から振り返るといったワークを通じて、自分の変化を客観的に確認します。この「成長の実感」は、自信を取り戻すと同時に、今後のモチベーションを高める原動力となります。言葉にすることで、自分自身の変化に気づきやすくなる効果もあります。

    自己理解を深め、自分らしい成長の軸をもつ

    社会人として働き始めて半年ほどの時期は、目の前の業務をこなすことに精いっぱいで、自分の強みや特性をまだ把握しきれていないケースも少なくありません。そこで重要になるのが、自己理解を深める機会の提供です。フォローアップ研修では、自己の強みやコミュニケーションスタイルを把握するための診断ツールを活用し、自分の強みや行動傾向を可視化することで、客観的な視点から自分自身を見つめ直します。こうした気づきは、自分らしい成長の軸を築くうえで、大きな手がかりとなります。

    また、診断結果をもとに対話を行うことで、自分では気づいていなかった一面を発見することもあり、今後のキャリアを主体的に描くためのヒントとなります。自分を知ることは、不安の整理にもつながり、自信をもって行動する力を育てる第一歩です。

    自分に期待されていることを理解する

    上司や会社から自分に今、何を期待されているのかを考えることは、社会人として成長していくうえで欠かせない視点です。日々の業務に追われる中では、自分の役割や求められている成果を見失いがちですが、改めて立ち止まり、「自分に求められていること」を捉え直すことで、目の前の仕事への向き合い方が変わってきます。

    フォローアップ研修では、上司からの期待を伝える手紙やフィードバックを通して、客観的な視点から自分の立ち位置や期待を確認する機会が設けられます。そうしたメッセージを受け取ることで、組織の中で果たすべき役割や、今後の成長に向けた方向性を明確にすることができます。期待を知ることは、不安を整理する助けになると同時に、自らの目標設定にもつながり、自律的な行動を促します。

    先輩社員との座談会でリアルな気づきを得る

    実際に現場で活躍している先輩社員や上司との座談会を取り入れることで、リアルな経験談やアドバイスに触れることができます。例えば、「入社1年目の壁をどう乗り越えたか」「うまくいかなかったときにどう対応したか」といった具体的なエピソードが共有されることで、新入社員自身の悩みに対するヒントが得られます。

    また、自分だけが入社後ギャップに戸惑いを感じている訳ではないと知ることで心理的な安心感が生まれ、今後の業務に前向きに取り組むきっかけにもなります。座談会は、先輩社員との距離を縮めるための貴重なコミュニケーションの場としても機能します。

    次の1年に向けた前向きな意欲を引き出す

    研修では、これまでの半年間を振り返るだけでなく、今後の1年をどう過ごしていくかを考えるパートも重要です。例えば、「1年後にどんな業務を任されていたいか」「そのために今どんな準備が必要か」といったワークを通じて、目指す姿を具体的に描き、達成に向けた行動計画を立てることができます。

    こうした未来志向の取り組みを行うことで、目標に向かって努力する意識が生まれ、自律的な成長につながります。また、将来への不安を整理することにもつながり、前向きなマインドを育む効果もあります。

    新入社員フォローアップ研修 効果的なカリキュラム例(1日版)

    このフォローアップ研修は、「自己の強みの確認」「他者との対話」「キャリアの再設計」の3つを軸に構成されています。同期との再会や入社後の振り返りを行うワークを通じて、不安を共有・整理し、内省を深めます。さらに、上司からの手紙や先輩社員との座談会では、自身への期待や職場のリアルな声に触れることで、今後担うべき役割や進む方向性を再確認します。また、自分の強みを把握する診断を活用し、客観的に自己を見つめ直すことで、自己理解を深め、今後の行動や人間関係にも生かすきっかけとなります。

    最後に、得られた学びを行動計画として具体化し、次の1年に向けた前向きな一歩を後押しします。

    タイムテーブルのイメージ(PC表示) タイムテーブルのイメージ(SP表示)

    おすすめの研修

    新入社員フォローアップ研修の設計に悩んでいるご担当者さまに向けて、弊社で実施しているおすすめの研修をご紹介します。

    弊社が提供する【新入社員フォローアップ研修〈公開講座〉】では、配属後に直面する「思っていた業務とのギャップ」や「成長を実感しにくい」といった課題に対応したプログラムを用意しています。単なる座学ではなく、グループディスカッション、他社の新入社員との交流を通じて、自分自身の強みや成長課題を見つめ直す機会を提供します。
    特に、以下のようなポイントを重視した内容構成となっています。

    ・入社後の業務経験を振り返り、成功体験と課題を言語化することで、成長を実感できる

    ・他社の新入社員との交流によって、広い視野をもち、自社内では得にくい新たな気づきを得られる

    ・今後のキャリア形成や2年目への備えについて具体的なアクションプランを描く

    詳細は以下のリンクよりご覧いただけます。

    まとめ

    新入社員の定着や活躍を支えるうえで、配属後しばらくたった頃に生じやすい不安や迷いにどう向き合うかは、非常に重要なポイントです。フォローアップ研修は、そうした感情を整理し、これまでの経験を振り返る中で自分の成長を実感できる貴重な機会となります。その結果、モチベーションや主体性が高まり、業務への前向きな姿勢につながっていきます。研修設計では、「同期との再会」「スキルの棚卸し」「目標の明確化」「他者からの学び」など、成長と定着の両面にアプローチできる要素をバランスよく取り入れることが効果的です。

    本記事でご紹介したカリキュラムや観点を参考に、ぜひ貴社でも自社の状況に合ったフォローアップ研修を企画・実施し、早期離職の防止と中長期的な成長支援にお役立てください。

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