コンプライアンス推進のカギ! アンケートのポイント

コンプライアンスアンケートとは

「コンプライアンスアンケート」は、社内でのコンプライアンス推進・浸透状況を把握し、改善施策を展開するための基礎となるソリューションです。

このコラムではコンプライアンスアンケートの目的や方法を整理し、結果の活用に向けたポイントを紹介します。

  • コンプライアンスアンケートの目的と方法、役割を理解する
  • アンケート結果を活用するためのステップを確認する
  • コンプライアンスアンケートの「5つのポイント」を整理する
目次

    アンケートは何のため?

    コンプライアンスを社内に浸透させるための取り組みにおいて、まず必要になるのは現状の把握です。「コンプライアンスアンケート」は、まさにそのためのソリューションといえます。

    「コンプライアンスアンケート」では、社内のコンプライアンスの状況や社員の意識・組織風土などを可視化します。

    ポイントは、一度きりではなく定期的に実施すること。調査結果の経年比較から、新たに発生した(あるいは発生しつつある)課題をいちはやく認識し、タイミングよくコンプライアンス推進・浸透施策を展開することができます。

    アンケートにはウェブフォームや紙の調査票を使用し、企業全体または対象とする部門(部署)ごとに実施。コンプライアンスの浸透度、社員の意識、社内の規則・制度の運用状況などを調べ、コンプライアンスの推進・浸透状況を測ります。

    調査実施後には「サーベイフィードバック」を行い、調査結果を適切に分析・認識して、その後の取り組みに活用することが重要です。

    不祥事の「芽」を発見する

    コンプライアンスアンケートの役割と有用性について、「企業の不祥事」という視点から考えてみましょう。

    近年、企業の社会的責任が強く問われるようになりました。これに応えて、各企業はコンプライアンス推進・浸透の取り組みを進めています。

    こうしたなかで発生する近年の「不祥事」には、どのような特徴があるのでしょうか。

    近年の「不祥事」の特徴とは?

    1. 不正をけん制する仕組みがある程度整っていることから、一人で起こしているものではない(複数人が関与している。または、薄々気づいていても無関心を装う)
    2. たまたま起きたのではなく「意思決定」されて起きている
    3. 不正に関する情報が、社内の本来の情報ルートではなく、社外から明るみになる(内部告発など)
    4. 企業は、十分な調査の時間的余裕がないままに、記者会見などの情報開示の対応を迫られる
    5. 発覚後の企業の対応が「とかげのしっぽ切り」のように見られる
    6. 企業の対応の悪さが、さらに企業イメージを低下させる
    7. 企業体質への批判が高まる
    8. 企業体質の健全性を証明することは難しく、イメージ回復に時間がかかる

    いわば組織的に不正が進行し、発覚後はその影響が急速に大きくなるといった特徴が見えてきます。

    こうした事態を防ぐためには、社内の変化や予兆を把握し、タイミングを逃さずに対策を施すことが重要です。

    そのためのカギとなるのが、定期的に行なうコンプライアンスの現状把握です。不祥事の「芽」となるような変化を捉えて、効果的な対策の検討・実施に役立てることができます。

    アンケートの方法とポイント

    現状把握に向けたコンプライアンスアンケートは、主にアンケート用紙(紙の調査票)やウェブフォームで行われます。

    アンケートには「規模の大きな調査でも比較的短期間で実施できる」といったメリットがある一方、実施にあたっては、注意しておきたいポイントもいくつか挙げられます。

    アンケートのメリット

    1. 短時間に多数の調査対象者から情報を得ることができる
    2. 調査対象者からの言語報告(回答)を、統計処理などにより客観的に扱うことができる

    注意しておきたいポイント

    1. アンケートの設計には、専門的なノウハウが必要
      たとえば:課題の発見・解決に役立ち、調査のテーマや目的に合った設問/理解しやすい質問文(表現)や、負担になりにくい質問数の設定
    2. 調査の計画・実施とあわせて、結果を活用した改善の取り組みについても計画しておく必要がある

    「調査目的に合わせたアンケートにする」「回答者の負担を抑える」といった実施時の工夫と合わせて、調査実施後の活用についても事前に検討しておくことが大切です。

    ここが大事!

    • 回答を適切に処理・活用するためには、アンケートの目的に沿った設計・設問を行うことが重要です
    • 調査のゴールは「実施すること」ではなく、その結果を活用して対策が施されること。調査への参加者は、自分の回答が改善に活用されることを期待しています

    結果を改善に活かすには?

    コンプライアンスアンケートは、調査を行い、報告書をまとめることがゴールではありません。その結果を活用して、次の施策につなげることが重要です。

    「サーベイフィードバック」は、アンケートの結果から現状を認識し、調査結果をその後の取り組み・改善施策に活用するために欠かせないステップです。

    サーベイフィードバックの主な内容は、次の3つです。

    サーベイフィードバックの主な内容

    1. 調査・アンケート結果の報告(報告書の共有)
    2. 結果をもとに現状を分析し、課題を明らかにする
    3. 課題の解決方法や、改善のための施策について議論する

    このなかでも特に重要なのは、3つめの「課題の解決方法や、改善のための施策について議論する」というパートです。調査によって明らかになった現状を適切に認識したうえで、アンケート回答者(もしくは経営・管理者)が、自ら議論に参加し、今後の改善策を探ります。

    調査結果の分析から明らかになった課題をもとに、改善に向けた施策を展開し、社員一人一人のコンプライアンスに対する意識を高めて、社内への浸透につなげましょう。

    サーベイフィードバックの「効用」とは?

    適切に行われたサーベイフィードバックには、以下のような効用が期待できます。

    効用1

    数値化・分析されたデータ(報告書)を用いることで問題を客観視することができ、短時間で合理的に問題を共有できる

    効用2

    調査結果をもとにした議論に参加することで、回答者がコンプライアンスに関する問題・課題を自分自身のものとして捉え、その解決に向けた主体性が生まれる

    効用3

    サーベイフィードバックのプロセスを通じて問題の発見から解決までを経験するため、調査・フィードバック終了後も、状況に応じた解決の方法を社内で設計・修正できる

    効用4

    課題の解決に向けて各自の役割を認識するとともに、お互いが他者に対する期待感を持つことで、チームの効果性が高まる(チーム力が向上する)

    サーベイフィードバックがうまくいかない理由

    しかし、サーベイフィードバックを実施する際、以下のような要因から効果的な議論・活用が妨げられる場合が少なくありません。

    サーベイフィードバックがうまくいかないのはなぜ?

    1. 当事者としての意識が欠如しており、結果を活用しようとしない。結果(客観的に集計・処理された数値)を受け入れず、調査の実施時期による影響としたり、「たまたま良くない結果が出た」と解釈したりする。
    2. 課題の明確化や具体的な問題解決を行うために、どのように議論すればよいのか分からない
    3. 参加者が安心して発言できる環境が整っていないため、意見が出ない。あるいは本音が引き出せないため、表面的な目標設定になってしまう

    こうした要因を取り除き、参加者が積極的に意見を述べられる「場の雰囲気」をつくることが、サーベイフィードバックの重要なポイントのひとつ。そこで重要な役割を担うのが、議論の舵取りを行なうファシリテーターです。

    ファシリテーターには、司会・進行だけでなく参加者が本質的な課題について議論できる場(環境)を整え、目標にコミットする雰囲気をつくり出すことが期待されます。

    まとめ:5つのポイント

    最後に、ここまでの内容を整理してみましょう。

    「コンプライアンスアンケート」5つのポイント

    1. 「コンプライアンスアンケート」により、社内のコンプライアンス推進・浸透状況を客観的に把握することができる
    2. 社内の変化を捉え、タイミングよく施策を展開するためには定期的な現状把握を行う
    3. アンケートは、適切な設問(内容・数)で回答者の負担を抑え、その結果を「次」につなげることが大事
    4. サーベイフィードバックでは調査結果をもとに本質的な議論を行い、改善のための施策を検討する
    5. 議論を行う際には参加者が調査結果にもとづく客観的な評価を受け入れ、積極的に議論できる環境をつくる

    コンプライアンスの現状把握は、コンプライアンス推進・浸透の重要なカギになるもの。ポイントをおさえて、コンプライアンスを支える制度の改善と、社員一人一人の意識に根付かせるための取り組みを進めたいところです。

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