信頼される組織の鍵は「インテグリティ」―コンプライアンス浸透のその先へ

ガバナンスの体制づくりやルールの徹底といったコンプライアンス浸透に長年取り組みながらも、不正や不祥事、ハラスメント等の課題に悩む組織は少なくありません。これからの信頼される組織づくりのためには、視点を変えて「インテグリティ」を高めることが有効です。

本ページでは、インテグリティとは何か、インテグリティ向上がなぜ信頼される組織づくりと組織の持続的成長につながるのかをご紹介します。

  • インテグリティは「誠実さ、真摯さ、高潔さ」を意味し、「自ら考え、正しい行動をする姿勢」を指す
  • インテグリティが必要とされる背景には、コンプライアンスの概念が拡大していることが挙げられる
  • 信頼される組織をつくるには、社員一人ひとりのインテグリティを高めることが重要である
目次
    株式会社ビジネスコンサルタント

    株式会社ビジネスコンサルタント

    組織づくり・人づくりを支援する専門家集団として、組織開発や人材育成に関する情報を発信しています。Well-being経営の共創パートナーを目指し、現場で役立つ知見や実践事例をわかりやすくお届けします。

    インテグリティとは

    インテグリティは「誠実さ、真摯さ、高潔さ」を意味する概念です。「たとえ誰にも見られていなくても、正しいことをする姿勢」や「言っていることとやっていることが一致している姿(言行一致)」を指し、個人や組織が一貫した価値観と倫理観に基づいて行動することを意味します。これまでにも、リーダー人材育成やマネジメント教育で注目されてきた概念ですが、コンプライアンス推進の文脈でも重要視されるようになってきました。

    コンプライアンスとインテグリティの比較

     
    コンプライアンス
    インテグリティ
    発想
    • ルールで縛る(不祥事防止)
    • やらされる(受け身)
    • 会社理念の実践
    • 自律的に考え行動する
    取り組み
    実践の焦点
    • 仕組みづくり、体制整備
    • ルール化と厳格な運用
    • ハード面の整備(スタッフ主導)
    • 職場風土の醸成
    • 理念の共有、一体感の醸成
    • コミュニケーションの促進
    • ソフト面の充実(ライン主導)
    行動規範
    • ルールの遵守
    • ~してはならない
    • 誠実さ、真摯さ、自律
    • ~することが望ましいと自ら判断する
    研修内容
    • 法令等の知識付与
    • 一方的な講義、eラーニング
    • 周知徹底
    • 双方向の参加型
    • コミュニケーションの機会
    • 動機付け、気づき

    コンプライアンスは、その語源であるComply(遵守)から「法令遵守」と訳されましたが、その意味・定義は拡大し続けてきました。現在におけるコンプライアンスは、法令遵守はもちろんのこととして、社会規範遵守、さらには社会の要請に対して適切な対応を行うという意味も含まれるようになりました。

    一方でComply(遵守)を語源とするコンプライアンスは、社内で展開される際に「~してはならない」「~を守らなければならない」という表現がいまだに多く、消極的・受け身なイメージがあることから、現場で当事者意識が生まれにくい状況が続いています。

    コンプライアンスという言葉の解釈には限界があり、またその概念が拡大しているからこそ、社員が「自ら正しい判断と行動」を選択できるようにすることが求められます。そのために有効な視点が、「言行一致」のマネジメントや社員の行動を支えるインテグリティの向上なのです。

    コンプライアンスの概念の広がりと浸透における課題

    • 企業の社会的責任の拡大
      SDGsやESG経営の広がりにより、企業に求められる責任の範囲が大きくなっている。

    • 仕組みの限界
      不祥事防止の仕組みをいくら整えても、違反は完全にはなくならず、最終的には個人の倫理観が問われている。

    • 位置づけの変化
      従来の「悪いことをしない」という消極的な意味合いから「良いことをする」「正しいことをする」といった前向きな意味合いへシフトしている。
    • マンネリと閉塞感
      「コンプライアンス疲れ」に象徴されるマンネリ感や、性悪説に基づくマネジメントにより、かえって閉塞感を招く組織も増えている。

    信頼される組織に求められるインテグリティ

    信頼される組織とは、社員一人ひとりがインテグリティを発揮し、企業としての価値判断と行動に一貫性がある組織を指します。その土台をつくることが、これからの企業経営には不可欠です。

    近年、社会から企業に求められる倫理基準は一段と高まっています。単に「法令に違反していなければ問題ない」という発想では、信頼を失うリスクがあります。また、ひとたび社員の不適切な判断や対応、不祥事が発生すると、SNS等を通じて情報が瞬時に広まり、会社の評判や信頼を大きく損なうリスクも高まっています。

    ルールで社員の行動や判断を規制する、正しい知識を周知徹底するだけでは、社員一人ひとりの誠実な判断や、判断に迷ったときに一歩立ち止まり、おかしいことをおかしいと発言する勇気ある行動を促すことはできません。

    組織全体の透明性と信頼性を高め、インテグリティを基盤とした職場風土をつくるためには何に取り組めばよいのでしょうか。

    インテグリティを高めるためには?

    インテグリティを醸成し、高めるためには、個人の意識づけ組織全体の風土づくりの両面からの取り組みが必要です。

    インテグリティが高まった状態とは

    個人

    • 自分が「こうありたい」と思っていることと、実際にやっていることが完全に一致している
    • 自分をごまかしていない
    • 期待されていることを実行できている

    組織

    • 会社理念や方針と、実際の活動に一体性がある
    • 組織の一人ひとりが企業理念や方針に共感し、その実現に努めている
    • 個人の良心が捻じ曲げられない健全な組織風土、心理的安全・心理的安心な状態である

    インテグリティを高める取り組み例

    個人の意識づけ

    • 「考える力」を育てる教育
      単なるルールの暗記ではなく、「なぜそれが正しいのか」「他者にどんな影響を与えるか」を自分で考える力を育てます。倫理的ジレンマを含むケーススタディーやロールプレイを取り入れた研修が効果的です。「正解のない問い」に向き合う経験が重要です。
    • 「こうありたい」自分をイメージする研修
      自分は何者かを洞察することが重要です。そのためには、自分の強みを正しく認識することが欠かせません。さらに、職業的自尊心の観点から自分を捉え直すことも大切です。仕事を通じて「どのような自分でありたいか」を見つめ直す研修が効果的です。

    組織全体の風土づくり

    • 言行一致の規範づくり(経営層・管理職の率先垂範)
      トップが「正しい行動を重視する姿勢」を明確に示すことが、最も強いメッセージになります。小さな不正やごまかしに目をつぶらず、行動で示すことが信頼を生みます。
    • 安心して声を上げられる職場づくり
      心理的安全性がなければ、インテグリティは発揮されません。「おかしいと思ったことを言っても否定されない」「失敗を共有しても評価が下がらない」と社員が思えることが必要です。
    • 日常業務での「迷い」や「葛藤」を共有できる場づくり
      1on1やミーティングで「最近、迷ったことある?」「判断に困った経験ある?」といった問いかけを日常化します。「一人で抱え込まず、共に考える」関係をつくります。
    • 評価制度への反映
      インテグリティある行動を評価対象に含めることで、「誠実な判断」が報われるという認識が広がります。結果だけでなく「過程」や「価値観に即した行動」も評価します。

    BCon®の支援

    BCon®は、個人の意識づけ組織全体の風土づくりの両面からインテグリティ向上を支援しています。60年以上にわたり組織開発を強みとしてきた実績に加え、2000年以降はコンプライアンス領域を本格的に展開し、これまでに800以上の組織を支援してきました。

    弊社のコンプライアンス・インテグリティ関連サービスは、組織・集団・個人のさまざまな課題解決に対応可能です。調査、コンサルティング、研修、eラーニングなど、多様な手法でご支援いたします。

    BCon®が提供するサービス

    これらの中からインテグリティ向上につながるサービスを抜粋して、ご紹介します。

    インテグリティ向上につながるおすすめサービス

    現状把握:コンプライアンス浸透の各種調査(アンケート)

    組織のインテグリティを高める第一歩は、社内の現状を多面的・総合的に診断し、見えにくい課題を構造的に把握することです。

    ただアンケートを行うだけでは不十分であり、結果を有効に活用するには「サーベイフィードバック」が重要となります。サーベイフィードバックでは、結果を踏まえて現状を共有し、管理職をはじめ回答者である社員自身が議論に参加します。その中で課題を抽出し、浸透に向けた改善策を検討します。継続的に取り組むことで効果を検証し、健全な組織風土を育むことができます。

    サービスの詳細はこちら:コンプライアンス浸透の調査(アンケート)

    ハラスメント予防研修 ~職場ぐるみハラスメント予防研修~

    組織のインテグリティを高めるために、安心して声を上げられる職場をつくる研修です。最大の特徴は、職場・チーム単位で「職場ぐるみ」で実施する点にあります。

    チーム全員で参加することで、実際の職場にある空気感や人間関係、対話のあり方を共に見直します。オープンで安心感のある職場を目指しながら、参加者一人ひとりが自分の関わり方を振り返り、他者の価値観に触れることで「安心して話せる関係」と「互いに聴き合う姿勢」を育んでいきます。

    サービスの詳細はこちら:ハラスメント予防研修 ~職場ぐるみハラスメント予防研修~

    管理職・中堅層向け研修:ヒューマン・エレメントプログラム

    インテグリティの高い行動とは、受け身ではなく自律的な行動です。そして、源泉となるのが、肯定的な自己概念(セルフエスティーム)です。
    セルフエスティームを日々の仕事で感じられることが、仕事に対する誇り、やりがい、充実感を高め、結果としてインテグリティの高い行動へとつながります。

    セルフエスティームを育むには、自己理解を深める「ヒューマン・エレメントプログラム」の活用がおすすめです。

    サービスの詳細はこちら:ヒューマン・エレメントプログラム

    ※上記以外のサービスも実施可能です。詳細はお問い合わせください。

    BCon®の強み

    1. 「人と組織の行動変容」を起点としたアプローチ
      表面的な知識の習得にとどまらず、参加者同士の対話やケース討議を重視した参加型プログラムを提供しています。対話や実習を通じて気づきを促し、学びを実践につなげる仕組みを組み込んでいます。

    2. 柔軟なカスタマイズ
      役員層から若手社員まで、階層別に対応した教育プログラムをご用意しています。管理職と一般職の混成チームでの実施も可能で、貴社の状況に合わせて日数や内容を柔軟にカスタマイズできます。

    3. 調査から浸透まで、一貫した支援
      コンプライアンス診断や行動基準の作成、デジタルツールの提供など、多層的な支援を組み合わせた3
      5年単位の組織風土改革プランの設計をご支援します。さらには、倫理観やマネジメント観を問い直す研修、心理的安全性の向上、再発防止に向けた職場単位の介入まで、あらゆるフェーズに対応可能です。貴社の実情に即した伴走支援を行います。

    まとめ

    法令遵守にとどまらず、誠実に考え、行動する力——それが、企業に求められるインテグリティの本質です。BCon®は、知識の詰め込み型ではない「気づきと受容」を促す教育を通じて、社員一人ひとりの行動変容を支援します。変化の激しい時代だからこそ、信頼される組織づくりは企業の根幹となる取り組みです。

    まずは、貴社の今の組織状態を見える化することから始めませんか?私たちが、貴社に最適なステップをご提案いたします。

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