若手育成の効果的な方法とは?最新調査から見える課題と解決策を紹介
若手社員の育成における悩みとは
若手社員の育成において、多くの企業から共通して次のようなお悩みを伺います。
- エンゲージメントが低い傾向にあり、仕事に対するやりがいや成長実感を得られていない若手がいる
- 部下の成長を思って責任ある仕事や難しい課題を任せても、主体的にチャレンジする姿勢がなかなか見られない
- 日々忙しく、現場で十分な育成の時間を確保できていない
- パワハラと受け取られるのではないかと上司が指導の方法に悩んでいる
- 若手が将来のキャリアを描けず、「この会社にいても成長できない」と感じ、離職につながっているが、十分な対策を打てていない
- 管理職を目指さず、専門性志向の若手が増えている
何らかの対策が必要だとは感じていても、課題は複雑であり、打ち手が明確にしづらいといったお悩みがあることが伺えます。
最新調査から見る若手社員の傾向
弊社は、2024〜2025年に従業員エンゲージメントサーベイ(※1)と新入社員アンケート調査(※2)を実施しました。2つの調査から読み取れる若手社員の傾向をご紹介します。
従業員エンゲージメントサーベイの結果より
弊社のエンゲージメントサーベイでは、「組織」「仕事」「職場」に対する魅力や愛着、働きやすさや働きがいといった観点を、7分野・21項目の質問で可視化します。
*エンゲージメントサーベイについて詳しく知りたい方はこちら
25歳未満は、働きやすさは感じているが、働きがいに関するスコアは低い
エンゲージメントスコアで上位となったのは「職場メンバーから困ったときにサポートをもらえる」「福利厚生には魅力を感じている」「人事評価結果に納得している」といった働きやすさに関する項目でした。
一方で、「私の仕事は人の役に立っている」「私は仕事で強みを発揮する機会がある」といった働きがいに関する項目のスコアは低い結果となりました。働きがい、すなわちワークエンゲージメントに関して懸念を持っているといえます。
25〜30歳未満は、エンゲージメントスコアが全体的に低下、特に理念や将来キャリアについて低いスコアとなった

全体平均は25歳未満より0.30ポイント下がり、入社して数年たつと、エンゲージメントが低くなっていく傾向がみられます。高スコアの項目は25歳未満とは異なります。
「職場メンバーから困ったときにサポートをもらえる」は同じですが、「褒められたり、認められたりしている」「昇進・昇格の機会がある」といった、働きやすさに関する項目と働きがいの項目が高スコアの中に混ざっていました。
一方で、「私は今の仕事が好きである」「私は仕事で強みを発揮する機会がよくある」といった働きがいに関する項目に加え、「私は、今の会社で自分の将来のキャリアを明確に描いている」といった理念や将来キャリアについての項目もスコアが低く出る結果となりました。25歳未満ではワークエンゲージメントに懸念を持つ傾向が見られましたが、本結果からは、組織や業務で数年の経験を積んだ後でも、その懸念が大きく改善されていないことが分かります。
言い換えれば、日々の業務にただ取り組むだけでは、ワークエンゲージメントを自然に高めることは難しいと考えられます。
新入社員アンケート調査の結果より
弊社の新入社員アンケートは、新入社員の定着や早期活躍を促進することを目的としており、新入社員本人の行動や傾向、職場環境への期待について調査をしています。
*新入社員アンケート調査について詳しく知りたい方はこちら
上司や同僚には、挑戦を「見守ってほしい」という手厚いセーフネット(心理的安全性)を求めている
上司や職場の仲間にサポートを求める回答は【約90%】と、極めて高い割合を示しました。その背景には「自分はうまくやれないかもしれない」という不安があり、「優しく見守り、助けてほしい」という気持ちの表れとも考えられます。
自身の成長への期待と、キャリアへの漠然とした不安が混在している
新入社員の【約80%】は自己成長への期待を持っている一方で、「職場に適応できるだろうか」という不安や、「成長がどのようにキャリアにつながるのか」に自信を持てていない回答も【約40%】見られます。期待と不安が混在している点が特徴です。
勤続意欲は高いものの、仕事のストレスを抱えそうだという不安もある
入社した企業で長く働きたいという意欲を示す回答は【約80%】見られました。一方で、「今後ストレスを抱えそうだ」と答えた人も【約50%】に達しています。新入社員は活躍や貢献への意欲を持ちながらも、仕事に伴う負荷を現実的かつ冷静に捉えている姿勢が浮かび上がりました。
※1 サーベイ:エンゲージメント診断(E21)
アンケート期間:2024年4月1日~2025年3月31日
回答数:179組織90223名
※2 サーベイ:2025年度新入社員アンケート調査
アンケート期間:2025年3月~5月
回答数:312組織8127名
若手社員育成の課題
弊社では、これら2つのアンケート結果から、若手社員の定着と育成には大きく3つの課題があると考えます。
働きがいの不足は離職リスクにつながる
若手社員において、働きがいが不足している傾向が明らかになっています。25歳以下の層で平均より低かったスコアが、25歳以上でさらに低下しています。「自分の強みを発揮できている」「人の役に立っている」と感じられないと、エンゲージメントは低下しやすくなります。働きやすさだけでは定着につながりにくく、仕事への意義や貢献実感を高める工夫が欠かせません。
主体的な行動への不安とサポートの必要性
若手・新入社員は、自ら行動を起こすことには不安を抱えがちです。上司やOJTトレーナーが適切に支援し、「挑戦しても大丈夫」という心理的安全性のある環境を整えることで、自律的な行動につなげることが重要です。
キャリアの不明瞭さが定着を妨げる
長期的なキャリア像や成長の道筋が見えないと「ここで働き続ける理由」が弱まり、定着意欲が弱まります。組織として、どのようなキャリアがあるか、そしてその具体的な支援策は何かを提示することが求められます。
上記を踏まえ、弊社では若手の成長や定着を促進するうえでは、「働きがいの創出」「挑戦を促す心理的安全性の醸成」「組織における成長・キャリアをイメージしやすくする」これら3点の課題に向き合うべきと考えます。
調査を踏まえたBCon®が考える若手育成のポイント
これらの課題に対応するためには、次の3つの視点を押さえることが効果的です。
働きがいを高めるために、個々人の強みや特性を理解し、適した関わりをする
若手の価値観や性格は多様化しており、働きがいを感じるポイントはそれぞれ異なります。そのため、一律の育成方法では効果が出にくくなっています。個人診断ツールを活用することで、それぞれの特性に応じたアプローチを行いやすくなります。
心理的安全性とフォロー体制を整える
「挑戦しても大丈夫」と思える心理的安全性のある職場環境を整えることが、自律的な行動を促します。さらに、上司やOJTトレーナーによるフォロー体制を仕組みとして整えることで、若手が安心して繰り返し挑戦できる環境を実現します。
育成ストーリーを描き、将来像を共有する
例えば「この3年間でどんな成長を遂げられるのか」といった育成ストーリーを提示することで、若手は自分の成長イメージを持ちやすくなります。明確なロードマップがあることで安心感が生まれ、定着率の向上にもつながります。
ただし重要なのは、個人に合わせた育成だけでなく、組織としての環境整備も欠かせないということです。ここで参考になるのが、クルト・レヴィンの公式です。
クルト・レヴィンの公式とは
クルト・レヴィンの公式
B = f(P・E)
B:行動(behavior)/ P:個人(person)/ E:集団環境(environment)/ f:関数(function)
この公式によれば、人の行動(B=Behavior)は「個人(P=Person)」と「集団環境(E=Environment)」の相互作用で決まります。若手育成においても、個人のスキル開発や意欲向上と同時に、上司や先輩の関わり方や職場文化の整備が重要となります。
※クルト・レヴィン(Kurt Lewin)は、ドイツ出身の社会心理学者。ベルリン大学で心理学を学び、のちにアメリカへ渡り、集団力学や組織変革の研究を通じて、現代の組織開発や人材育成の基礎を築いた人物です。
BCon®がおすすめする若手育成の方法
若手育成を効果的に進めるには、3つのポイントをおさえ、なおかつクルト・レヴィンの公式にならい、個人へのアプローチと組織としてのアプローチの両面から取り組むことをおすすめします。
取り組みの例
- 個人(若手本人)
-
自己の特性の把握
強みの活用
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セルフエスティーム向上
-
ジェネリックスキルの把握と啓発
- 組織・職場(環境)
-
部下の特性を踏まえた関わり
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職場マネジメント改善
ポジティブ・リーダーシップ開発
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学びの機会の充実化
キャリアパスの見える化
働きがいの創出
個人(若手本人):自己の特性の把握
BCon®では、自己の特性を把握するための診断ツールとしてVIA診断、キャリア・ポテンシャル診断を提供しています。いずれも本人が自分の働きがいを高めるために活用できる診断です。
・VIA診断:VIAとは「Values in Actions」の略で、自分自身のキャラクター・ストレングス(徳性の強み)を知るための診断
・キャリア・ポテンシャル診断:仕事において高い成果を出していくために必要とされるコンピテンシーの現在の発揮状況を理解するための診断 ※弊社ではコンピテンシーを「ある職務における高いパフォーマンス(業績や働きぶり)をあげる個人的属性」ととらえています。
個人(若手本人):強みの活用
・VIAプログラムの活用
自分の強みを知ることができるVIA診断を用い、自分の強みをどのように仕事に活用できるかを考えます。強みを仕事に生かすことで、自分らしさや仕事の意義、熱意を感じることができ、ポジティブ感情や、目標に向かうエネルギーを高めることができます。
・ジョブクラフティング研修の活用
仕事そのものを変えることではなく、自分自身の仕事に対する見方・捉え方や取り組み方法を変えることに焦点を当てた研修です。「強みの仕事への活用」「仕事の目的や貢献」「関係者とのつながり」「成長に必要な経験」の4つの観点から、仕事を見つめ直します。エンゲージメントを高めるために、どのように仕事を捉え、デザインするか検討します。
組織・職場(環境):部下の特性を踏まえた関わり
普段のコミュニケーションや診断の結果を踏まえて、部下の強みや特性を把握します。そのうえで、強みと課題の両方を適切に押さえ、どの点をどのように伸ばしていくかを具体的に考えながら日々関わります。関わり方は、欠点を指摘するネガティブアプローチではなく、ポジティブアプローチを意識すると効果的です。
挑戦を促す心理的安全性の醸成
個人(若手本人):セルフエスティーム向上
セルフエスティームは、自分自身を尊重し、ありのままの自分自身を受け止めるポジティブな感情のことです。セルフエスティームが高いと、粘り強く課題に取り組んだり、失敗を受け止め、新たな行動につなげたりすることができます。個々人のセルフエスティームを高めることは、挑戦を促し、主体的な行動を引き出すための土台となります。
組織・職場(環境):職場マネジメント改善
心理的安全な職場とそうでない職場の違いを学び、どのような環境づくりが望ましいかを検討します。上司やOJTトレーナーが継続的にフォローできる仕組みを整えることや、日々のコミュニケーションの取り方を工夫することで、安心して挑戦できる職場マネジメントへと改善していきます。
組織・職場(環境):ポジティブ・リーダーシップ開発
ポジティブ・リーダーシップを発揮できるリーダーは、周囲に「幸福感や満足感、エンゲージメントや一体感、創造的な活動」を生み出すことができると言われています。メンバーのポジティブなエネルギーを引き出す関わり方や、高い目標に対しても果敢にチャレンジするメンバーに伴奏する方法を学習します。
*ポジティブ・リーダーシップ開発について詳しく知りたい方はこちら
組織における成長・キャリアの明確化
個人(若手本人):ジェネリックスキルの把握と啓発
成果を上げためには、思考力・対人関係能力・自己管理力・課題解決力といったジェネリックスキルも不可欠です。アセスメントツールを活用し、ジェネリックスキルを可視化することで、現状の把握と、どのように啓発すべきかの方向性を明確にできます。このプロセスを通じて得られる自己理解は、長期的なキャリア形成にも役立ちます。
組織・職場(環境):学びの機会の充実化
学びの機会が充実していることは、キャリア形成に役立つだけでなく、「この会社で働くことで多くのことを学べる」という実感につながり、離職防止にも効果があります。どのような教育・研修制度があるのかを整理し、社員がいつでも閲覧できる環境で公開することで、個々の成長を後押しし、キャリア形成を支援することができます。
組織・職場(環境):キャリアパスの見える化
さらに中長期のキャリアプランを提示することで、若手社員は将来像を描きやすくなります。業務に慣れた段階ごとに不安を払拭できるよう、フォロー体制やキャリア支援、上司や先輩とのコミュニケーション促進を仕組み化することが重要です。
株式会社ビジネスコンサルタントでは、多くの若手育成プログラムを提供しています。年間3300組織の支援実績と60年にわたる知見をもとに、貴社の状況や課題に応じて柔軟にカスタマイズが可能です。
まとめと今後の方向性
本コラムで取り上げたポイントを整理すると、若手育成において特に重要なのは次の3点です。
- 働きがいを高めるために、個々人の強みや特性を理解すること
- 心理的安全性とフォロー体制を整え、挑戦を後押しすること
- キャリアの育成ストーリーを描き、将来像を共有すること
さらに、それを実践する具体的な方法として、個人へのアプローチと組織としてのアプローチの両面から取り組むことが大切だとご紹介しました。
今後の方向性としては、従来型の一律の研修や経験則に依存する育成から脱却し、データに基づいた個別最適化、心理的安全性を高める組織文化づくり、キャリア支援を含めた長期的な育成設計が不可欠となります。
BCon®では、長年の人材育成の知見と最新の調査の結果を踏まえ、若手育成を総合的に支援するプログラムを提供しています。貴社においても、本コラムで紹介したポイントをヒントに、若手社員が安心して挑戦し、成長し続けられる育成環境を整えていただければ幸いです。