コンプライアンス違反から組織を守る! まずはリスクと原因を理解する

コンプライアンス違反から組織を守る! まずはリスクと原因を理解する

法令を遵守し倫理的行動を取ることは、自社への信頼を高めるための重要な取り組みです。
コンプライアンスの徹底には制度設計や、コンプライアンスの重要性に対する理解の浸透、従業員一人ひとりの行動変容の促進といった幅広い施策を行う必要があります。顕在化している課題への対策だけでなく、職場の規範や組織文化に潜むリスクに目を向けることも重要です。

このコラムでは、企業におけるコンプライアンスについて基本的な情報を整理し、コンプライアンス違反を招きやすい職場環境や組織文化の特徴と、改善施策の概要を紹介します。

  • 企業におけるコンプライアンスは、法令の遵守だけでなく、倫理的行動を実践し、社会やステークホルダーの期待に応える姿勢が問われます。
  • コンプライアンスの実践と違反の防止には、管理者(管理職)が適切に役割を果たすことが必要です。
  • 組織内のコンプライアンス浸透を図るため、従業員の意識向上を支える仕組みを整えることも重要です。
目次
    株式会社ビジネスコンサルタント

    株式会社ビジネスコンサルタント

    組織づくり・人づくりを支援する専門家集団として、組織開発や人材育成に関する情報を発信しています。Well-being経営の共創パートナーを目指し、現場で役立つ知見や実践事例をわかりやすくお届けします。

    「コンプライアンス」は、より広い概念を含む言葉に

    コンプライアンス(compliance)は一般的に「法令遵守」と理解されていますが、企業活動においては単に法律を守るだけでなく、社会的規範や企業倫理に基づいた誠実な行動を含む概念として捉える必要があります。信頼性向上や持続的な成長のために、倫理的側面を含めたコンプライアンスの実践が求められています。

    企業における位置付けの変化

    企業にとってのコンプライアンスの位置付けは、時代とともに変化してきました 。

    2000年代初頭、国内外で大規模な企業不正が相次ぎ、企業の不祥事が社会に与える影響の大きさが改めて浮き彫りになりました。法令を遵守することが企業経営における最優先事項のひとつとされるようになり、コンプライアンス意識が高まりました。

    2010年代に入ると、企業活動の透明性や説明責任がより重視されるようになり、コンプライアンスの概念は法令やルールの遵守のみにとどまらず、倫理的な行動や社会的責任の実践を含むものへと拡大しました。この背景には、インターネットやSNSの普及によって、企業の行動が広く社会から監視・評価されるようになったこともあります。

    さらに2020年代に入ると、サステイナビリティ経営やESG(環境・社会・ガバナンス)への対応が本格化し、企業は多様なステークホルダーの期待に応える姿勢が求められるようになりました。特に、取引先や投資家、地域社会との信頼関係の構築が、企業価値の持続的な向上に直結するとの認識が広まっています。こうした背景から、企業を取り巻く多様なステークホルダーの期待に応えることが、持続的な企業価値向上に不可欠となっています(図1)。

    図1 企業を取り巻くステークホルダー

    企業がコンプライアンス推進に取り組むメリットと意義

    このように、企業におけるコンプライアンスは「してはならないことをしない・ルールを守る」という受動的な姿勢から、「何をすべきかを主体的に考え、ステークホルダーの期待に応える」という能動的な姿勢によるものへと進化してきました。社会からの信頼を得る企業となるために、法令遵守にとどまらず、社会的責任を果たす積極的な取り組みが強く求められるようになっています。

    コンプライアンス推進によって、企業活動には次のような効果が期待できます。

    法的リスクを回避できる

    企業がコンプライアンスを重視する理由は、社会的責任を果たし、法的リスクを回避するためです。企業は社会の一員として、倫理的かつ法的に正しい行動を取ることが求められています。

    顧客や取引先からの信頼を得ることができる

    不祥事や法的トラブルを未然に防ぐことで、顧客や取引先からの信頼を得ることができ、持続的な成長が可能となります。従業員の安全や健康にもつながり、結果としてブランドイメージや社会的信頼も向上します。

    コンプライアンス推進は、健全な企業体質を育み、その結果として社員のモチベーション向上、生産性向上など複合的な効果があります。

    コンプライアンスに関連する言葉

    ここではコンプライアンスに関連する用語について、それぞれの意味を確認し、コンプライアンスとの違いや関係性を整理します。

    CSR

    CSR(Corporate Social Responsibility)は、「企業の社会的責任」を意味し、企業は法令の遵守にとどまらず、社会や環境に対して責任ある姿勢を持つべきだとする考え方です。コンプライアンスが法令や規則を守り、法と社会の要求に応えることを重視するのに対し、CSRにおいては社会や環境に対して「貢献する」ことが重要であり、より能動的な概念といえます。

    自然保護活動や地域社会・コミュニティへの参加など、CSRを踏まえて企業が取り組む社会貢献活動は「CSR活動」と呼ばれます。CSR活動は、企業が社会の一員として担うべき責任を具体的な行動として示すものであり、企業の社会的価値の創造・向上にもつながる取り組みです。近年はさらに、社会課題の解決と企業の経済的利益の両立を図る「CSV(Creating Shared Value)」にも注目が集まっています。

    コーポレートガバナンス

    企業が透明性や公平性のある意思決定を行うための組織的な枠組みを指します。企業の信頼性や継続性を支えるという目的は共通していますが、コンプライアンスが主に従業員や現場レベルの行動を対象とするのに対し、コーポレートガバナンスは経営層の行動を監視・統制するための仕組みとなっています。

    例えば、取締役会や監査役の設置、経営陣に対するチェック機能の強化などが挙げられます。これにより、企業は透明性や公平性を保ち、株主やステークホルダーに対して責任を果たすことができます。

    特に上場企業においては、外部の投資家から広く資金を集めているため、経営の透明性や説明責任が一層重視されます。コーポレートガバナンスに関するルールや開示義務が定められており(コーポレートガバナンス・コード)、これに対応する体制を適切に整備・運用することが信頼性の維持や株主価値の向上につながります。

    内部統制

    企業が経営戦略や業務目標を達成するために、組織内に整備し運用する仕組みや制度、業務プロセスを指します。業務の適正性や効率性を確保し、資産の保全、不正や誤謬の防止、財務報告の信頼性の確保などを目的として構築されます。

    内部統制には、職務の分掌や承認・記録のルール整備、内部監査の実施などが含まれ、組織全体で健全な経営を維持するための基盤となります。コンプライアンスもその一部として組み込まれ、内部統制の実効性を高める重要な要素となっています。

    コンプライアンス違反が企業にもたらすリスクとは?

    コンプライアンス違反は、企業にさまざまな影響を与えます。

    法令の遵守はもちろん、企業の倫理観や社会に対する姿勢を重視する傾向が強まっており、コンプライアンス違反が発覚し取引先からの信頼が損なわれれば「違反をする企業からは商品を買わない」「契約を結ばない」という判断を下されることは十分に考えられます。

    さらに、法的責任を問われた場合には罰金や制裁が科されるなど、企業の財務状況にも影響を与えることがあります。またコンプライアンス違反に伴う職場環境あるいは社会的な評価の悪化は、従業員のモチベーション低下や優秀な人材の流出、採用活動への悪影響にもつながりかねません。

    コンプライアンス違反は結果的に企業の生産性や競争力を低下させるリスクがあり、中長期的な企業の成長と企業価値の向上を図るうえでも継続的な対策が必要だといえます。

    グローバルに事業を展開する企業であれば、日本国内はもとより各国の法規制や社会的習慣を踏まえた取り組みが求められます。海外拠点においても従業員への継続的なコンプライアンス教育や、各国の法規制に準拠した内部統制の強化が不可欠です。

    企業内のコンプライアンス違反例とそのリスク

    業種・業界を問わずコンプライアンスの重要性は増していますが、コンプライアンス違反は依然として発生し、企業の信頼をき損する重大な違反が後を絶ちません。ここでは違反の例と、それによって生じるリスクを整理します。

    労働問題

    労働問題は、企業が法規制を遵守していない場合に頻繁に発生するコンプライアンス違反の1つです。労働基準法は厳格に定められており、その違反は法的な制裁を受けることになります。

    長時間労働

    法律で定められた労働時間を超えて従業員を働かせることは、労働基準法違反に該当します。サービス残業が常態化している企業では特にこうした違反が起こりやすく、従業員の健康問題や生産性の低下につながるリスクもあります。

    パワーハラスメント

    職場内での権力関係を利用して、部下や同僚に対して精神的、時には身体的な苦痛を与える行為です。職場の人間関係を悪化させるだけでなく、離職率の増加や企業の評判を大きく損なう原因にもなります。

    差別問題

    性別、人種、年齢、障害などに基づく差別行為は重大なコンプライアンス違反となり、法律でも禁止されています。例えば、採用時に特定の属性を持つ応募者を不当に排除する行為や、昇進の機会を不公平に制限することなどが該当します。

    情報漏えい

    情報管理の不備も、企業内でのコンプライアンス違反としてよく見られる問題です。特に、個人情報や企業の機密情報が漏えいすると、消費者や取引先に直接的な被害をもたらすだけでなく、企業は法的なリスクにさらされ、社会的な信頼を大きく損なう可能性があります。

    顧客情報の流出

    企業が顧客の個人情報を適切に管理しなかった場合、その情報が外部に漏れるリスクがあります。これにより、顧客の信頼を失い、さらには企業に対する訴訟に発展してしまう可能性もあります。

    内部情報の漏えい

    自社の機密情報が、従業員や取引先から外部に漏れるケースです。例えば、従業員が故意に競合企業に重要なビジネス情報を提供したり、誤って機密情報をメールで外部に送信してしまったりすることが含まれます。内部情報の漏えいは、企業の競争力を損ない、場合によっては多額の損害賠償を引き起こす原因となります。

    不正会計

    不正会計は、企業の財務報告におけるデータを故意に操作し、投資家や取引先を欺く行為です。このような行為は企業経営に重大な影響を与え、法的措置や企業価値の大幅な低下を招くことになります。

    利益の過剰計上

    利益の過剰計上は、不正会計の代表的な手法の1つです。実際には得ていない利益を計上することで、株主や市場を欺きます。これにより企業は一時的に高評価を得るかもしれませんが、長期的には市場からの信頼を失う可能性があります。

    損失の隠蔽

    損失が発生しても財務報告に反映させない行為も、不正会計に該当します。企業の財務状況を健全に見せかけることが目的ですが、発覚すると法的制裁を受け、企業の存続が危機にさらされる原因ともなります。

    品質管理の不正

    企業の製品が市場に出回る前には、必ず安全性や品質を確認するための検査・試験が行われるべきです。しかし、企業内の不正や管理体制の甘さから、検査や試験が適切に実施されなかったり、結果が改ざんされたりするケースが報告されています。

    検査結果の改ざんや不適切な品質試験

    製品が規格や基準に適合しているかを判断する検査や試験は、安全性と信頼性の根幹を支える重要な工程です。しかし、社内基準を満たさない製品のデータを書き換えたり、必要な試験を実施せずに合格としたりといった事例が見られます。こうした不正は法令違反であるだけでなく、消費者や取引先に深刻な被害を与えるおそれもあります。企業に対する社会的信用を失わせ、長期的なブランド価値の低下につながります。

    安全性を無視した製品の出荷

    自動車メーカーが検査不正を認識していながら出荷を継続した事例などがありますが、こうした行為は安全性を軽視しているものと受け取られ、企業の信頼を大きく損ないます。大規模なリコールや行政処分、さらには民事訴訟へと発展するリスクもあります。

    コンプライアンス違反を引き起こす職場の特徴

    では、どのような職場でコンプライアンス違反が起こるのでしょうか。違反が起こりやすい職場の特徴を理解することで、違反の予防策を講じることが可能です。

    法令や規則に関する知識が不足している

    従業員が最新の法令や規則を知らない場合、無意識に違反行為をする可能性があります。業界のしきたりや悪習慣に基づく、罪意識の無い行動も含まれます。
    定期的な研修や情報提供を通じて、従業員の知識を更新し、違反を防ぐことが重要です。

    成果や効率優先の考え方が過度に強い

    成果や結果、業務の効率を過度に重視する職場が、コンプライアンス違反の温床となることがあります。例えば営業成績や生産性向上を最優先するあまり、法令や内部規定を無視したり、倫理的に問題のある行動が黙認されたりするケースです。経営陣や管理職が「結果さえ出せばよい」というメッセージを発していると、従業員もそれにならい、法令遵守の意識が薄れてしまうことがあります。
    このような環境では、短期的な目標達成に焦点が当たり過ぎて、コンプライアンス違反による長期的なリスクが軽視される傾向があります。

    職場内の相互チェックが働かない

    従業員同士、あるいは部署・職場同士の相互チェック(けん制)が機能していない場合、コンプライアンス違反が見逃されやすくなります。互いに関心を持ち、協力して問題を指摘・解決していく文化が十分に浸透していない職場では、不正行為や違反が発生しても誰も報告しない、あるいは気付かない状況が生まれます。
    また属人的な仕事も他者からのチェックが入りにくいため、注意が必要です。

    コミュニケーションが不十分

    職場でのコミュニケーションが不足している場合、コンプライアンス違反が発生しやすくなります。例えば上司と部下、あるいは同僚同士の意思疎通が十分でないと、ルールの認識違いや誤解が生じやすくなります。問題が発生してもその報告が遅れる、または適切な対応が取られないことがあり、違反行為が継続、拡大する原因になります。

    モチベーションが低い

    それぞれの仕事、業務に対する従業員のモチベーションが低く、使命感や責任感が希薄な場合、問題に気づいても「関係ない」「どうでもいい」などと考え、法令や規則の重要性を軽視しがちです。
    従業員が自分の仕事の意義や役割を理解できていないと、業務に対する主体性が失われ、結果として、適切な手順やルールに従わない行動が増える傾向があります。

    仕組みが整っていない

    内部通報制度が未整備であったり、定期的な監査が行われていなかったりなど、コンプライアンスを確保する仕組みが整っていない職場では、問題が発生してもそれが表面化しないまま進行してしまいます。
    これを防ぐためには、組織的なコンプライアンス体制の構築と、効果的な監視メカニズムの導入が不可欠です。

    コンプライアンス違反を防ぐ組織をつくるには

    コンプライアンス違反を未然に防ぐために、企業が積極的に取り組むべき対策は多数ありますが、ここではその中でも特に重要な3つの取り組みをご紹介します。

    体制づくり

    コンプライアンス浸透を図るには、組織的な体制づくりが出発点です。

    コンプライアンス推進の責任者(役員クラス)や専門部署を設置し、法令遵守を日常的に監視し支援する体制を整えるとともに、コンプライアンスに関するポリシーや社内ルールを明確にします。また現場レベルでのコンプライアンス推進責任者・担当者を定めて、現場の業務をふまえながら、コンプライアンス推進の目的やポリシー・ルールへの理解浸透を促す体制づくりをします。

    さらに、定期的な職場点検や内部監査を実施し、コンプライアンス体制の有効性を検証した上で、問題点があれば体制やルールの見直しなど、必要に応じた改善を図ることも重要です。

     サーベイによるモニタリング

    コンプライアンス違反を防ぐための重要な手段の1つに、サーベイモニタリングがあります。サーベイモニタリングとは、従業員や関係者に対して定期的にアンケートを行い、組織内のコンプライアンス意識や潜在的なリスクを把握する手法です。

    この手法を活用することで、表面化していない問題やコンプライアンス違反の兆候を早期に発見することが可能です。アンケートにはさまざまな種類があるため、測定領域の妥当性や物差しの信頼性などを踏まえて適切なアンケートを活用することが重要です。

    研修の実施

    コンプライアンス違反を未然に防ぐには、全従業員が関連する法令や社内規則を理解し、日常業務において適切に判断・行動できることが不可欠です。そのためには、継続的な研修の実施が非常に重要です。

    研修では、法令や規則に関する基本的な内容に加え、具体的な事例に基づくケース学習やシミュレーションを取り入れることで、実務に即した理解が深まります。これにより、従業員が自らの行動を見直し、判断力を養うことが期待できます。

    研修の実施傾向(アンケート結果より)

    弊社が実施したアンケートの結果から、企業における研修内容の実施傾向を見てみましょう(図2)。コンプライアンス研修の実施内容は「法令などの知識付与中心」「実際に起こり得るテーマを想定したケース学習(以下、ケース学習)」が多く、特にケース学習の実施割合は59%(2022年)から66%(2023年)へと7ポイント増加しました。実務に直結した学習の重要性がより強く認識されるようになったことがわかります。
    多くの企業では法令の説明・学習を基本としながら、実際の違反事例を用いたケーススタディや、ロールプレイ形式の演習を取り入れています。職場でのコンプライアンス実践を意識したプログラムが、受講者の理解促進に大きく寄与していると考えられます。

    図2 コンプライアンス研修の実施内容は?(複数回答) 「コンプライアンス担当者、施策推進者42名対象のコンプライアンスアンケート」(2023年10月4日~11月7日実施)より

    コンプライアンス実践に管理職が果たすべき5つの役割

    コンプライアンス違反が起こりやすい職場環境を改善し、組織全体でコンプライアンスを推進していくうえで、管理職は大きな役割を担います。ここでは、特に重要な5つの役割について紹介します。(図3)。

    図3 経営管理者の5つの役割

     

    状況認識、判断

    コンプライアンスの問題は、さまざまなステークホルダーとの関係のなかで生じます。一見問題がなさそうに見えても、内在する問題が将来的に取り返しのつかない事態を招く可能性があります。
    経営管理者には、問題意識を持って事象を捉え、適切に判断するリスク認識力が求められます。「わが社の常識」が社会の非常識とならないよう、十分な注意が必要です。

    率先垂範

    部下は上司の「言葉」よりも「行動」から多くを学びます。
    コンプライアンスに対する意識が低い上司の下では、部下の意識も低くなりがちです。コンプライアンス違反があった場合、個人の処罰は避けられません。部下を不幸にしないためにも、上司は高い意識を持ち、自らの行動で模範を示すことが求められます。

    浸透化の努力

    経営管理者は常日頃からコンプライアンスの重要性を繰り返し伝える必要があります。「分かっているだろう」といった考えは禁物です。何度も繰り返すことで、初めてその重要性が伝わります。
    また、そもそもコンプライアンスが必要な理由を、従業員に明確に伝えることが大切です。具体的には、法令遵守や違法行為をしないことだけでなく、よき市民として社会規範にならうことや相手の期待に応えること、良好な信頼関係の構築などが挙げられます。

    何でも言える職場づくり

    困ったことや疑問に感じたことを職場で言い出せる風土が大切です。経営管理者は、従業員の声に耳を傾ける姿勢を強化していく必要があります。トラブル情報が経営管理者に上がりにくい職場は要注意です。

    ダブルスタンダードの防止

    「ダブルスタンダード」とは、同じ状況や条件で異なる基準やルールを適用することを意味します。これにより公平性が失われ、不正や偏見が生じる可能性があります。
    例えば、特定の人やグループにだけ厳しい基準を適用し、その他には緩い基準を適用するような例が典型的です。こうした行為は職場からの信頼を損ねます。従業員に「ルールを守らなくてもよい」という誤ったメッセージを伝えることになり、重大な問題に発展しかねません。法令や社内規定を理解し、一貫した基準を適用することが重要です。

    まとめ:コンプライアンスを組織に根付かせるために

    コンプライアンスの推進・浸透は、企業が持続的に事業活動を行ううえで極めて重要な課題となっています。継続的な研修やサーベイモニタリングの実施、全社的なコンプライアンス推進体制の構築といった施策は、自社への信頼を支える基盤を築き、競争力を高めるための取り組みともいえます。

    しかし、実際には「研修やアンケートを実施したものの、実質的な改善につながらない」「現場の従業員が取り組みの意義やメリットを実感できていない」といったケースも少なくありません。そうした状況では従業員に「やらされ感」が生まれ、せっかくの取り組みも形骸化してしまいがちです。

    一連の施策を効果的に行い、コンプライアンスが根付いた組織文化の醸成を図るうえで特に重要なのが以下の3つのポイントです。

    1. 組織のリーダーと管理職がコンプライアンス違反の背景を理解し、自社における課題や問題点を把握する
    2. 実際の施策においては、現場に近い管理職が「5つの役割」を果たし、職場づくりの中心となって進める
    3. 従業員一人ひとりが主体的に参画し、取り組みの成果とコンプライアンス推進のメリットを実感できるプロセスとする

    継続的なコンプライアンス推進・浸透施策はリスクを未然に防ぐだけでなく、従業員のエンゲージメントを高め、企業としての競争力強化と価値向上にもつながります。自社にとって、そして従業員一人ひとりにとって意義のある取り組みとするために、ポイントを押さえた施策の企画・実施が期待されます。

     

    弊社では組織開発に関する豊富な知見を生かし、コンプライアンス推進施策を多角的にご支援しています。コンプライアンスに関する知識の習得はもちろん、行動変容を促す階層別研修や、組織風土と職場環境の課題を捉えるサーベイの実施・分析、そして職場での主体的・自律的な取り組みを促進するコンサルティングサービスなど、貴社の状況と課題に応じたご支援が可能です。

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