
信頼される組織の鍵は「インテグリティ」―コンプライアンス浸透のその先へ
ガバナンスの体制づくりやルールの徹底といったコンプライアンス浸透に長年取り組みながらも、不正や不祥事、ハラスメント等の課題に悩む組織は少なくありません。これからの信頼される組織づくりのためには、視点を変えて「インテグリティ」を高めることが有効です。
本ページでは、インテグリティとは何か、インテグリティ向上がなぜ信頼される組織づくりと組織の持続的成長につながるのかをご紹介します。

近年ますます顕著になっている人手不足を背景に、多くの組織が人材獲得に力を入れています。その中でも新卒採用は年々難しさを増し、せっかく採用できた人材の早期定着と活躍支援が、人事部門においても管理職・先輩社員においても、重要な課題となっています。
こうした背景を踏まえ、ビジネスコンサルタントでは2025年度より新入社員アンケートを刷新し、調査を実施しました。弊社独自の「適応モデル」に基づき、新入社員が組織に早く適応し、成長していくために、自身の現状をどのように認識しているのか、そして組織・上司・同僚に対してどのような期待を抱いているかを把握できる内容となっています。
本コラムでは、調査結果の一部を抜粋し、全体傾向についてご紹介します。
新入社員が組織に定着し活躍できるためには、「適応」を促すことが重要です。
適応とは、新入社員が自ら進んで行動を起こし、この組織では自分のさまざまなニーズが満たされる実感を持ちながら、定着し活躍しようと思える状態を指します。組織にただ所属しているだけではなく、主体的で自立した人材を目指し、積極的に行動する人材ということです。
この適応している状態を捉えるためには、「先回り行動」「ニーズ充足」「退職意向*1」という3つの指標が役立ちます。そして、適応を促すために、私たちは6つの指標に着目することとしました。
研究によると、若手社員の適応と成長には「先回り行動」「ニーズ充足」「退職意向」という3つの重要な要素が密接に関係しています。これらの要素は単独で存在するのではなく、「先回り行動」が「ニーズ充足」を高め、その「ニーズ充足」が「退職意向」を低下させるという連鎖的な関係にあります。
*1 退職意向……本アンケートでは「退職意向」を「長期勤続意欲」として測定
「先回り行動」「ニーズ充足」「長期勤続意欲」は一見別の概念のように見えますが、実は連鎖的に関係しています。
「先回り行動」とは、自ら進んで行動を起こすことを指します。たとえば、会社の仕組みや方針を理解しようと情報を集めたり、自分の仕事ぶりについて上司や同僚にフィードバックを求めたりする行動です。さらに、部門を超えた人脈づくりや、上司との良好な関係構築に積極的に取り組む姿勢も含まれます。
このような行動は、単に業務をこなすだけでなく、組織に適応しながら、自分の可能性を広げていくための取り組みと言えます。
先回り行動を行うことで、若手は会社の仕組みや方針、業務の意義をより深く理解するようになります。情報収集やフィードバックの中で、自分が何を求め、会社が何を提供できるのかという関係性が見えてきます。
この理解の深まりは、「自分の求めるもの」と「会社が提供できるもの」のマッチング(=ニーズ充足)につながっていきます。
ニーズ充足が高まると、若手社員は「この会社で働き続けたい」と自然に感じるようになります。
たとえば、「この会社なら自分のキャリアプランを実現できそう」「会社の価値観は自分が大切にしていることと合っている」といった納得感が、若手の定着を後押しします。
自分の成長ニーズや価値観と、会社が提供する機会・環境が合致していると実感できれば、わざわざ転職を考える必要を感じなくなり、長期勤続意欲につながるのです。
以下は、2025年度新入社員アンケートの全体傾向です。全国約8,000名の新入社員を対象に実施した本アンケートでは、各設問に対し「1点(否定的)」から「5点(肯定的)」の5段階で回答を得ています。以下に示す数値は、各設問の平均スコアを集計したものです。
【同期や先輩、上司との対話を通じた情報収集】には比較的自信があり、主体的に実行できそうだと感じています。一方で、【社内情報を自力で探る行動】や【自分の仕事の出来に対して上司にフィードバックを求める行動】については、慎重さや不安を抱いている回答も見られます。これらの行動に対しては、主体的に実行するための心理的ハードルがやや高いことがうかがえます。
目標を達成した経験は多数見られる一方で、【計画的に進めたり進捗を管理したりすること】には自信が乏しく、「実感したことがない」とする回答も一定数あります。【成果に至るプロセス】に対する実感が薄く、自分の行動が結果につながるという確信が十分に備わっていない様子がうかがえます。対面での経験が乏しかったコロナ禍の影響も、自己効力感の形成に影響を与えていると推察されます。
上司に対しては、【話しかけやすさ】や【気軽に相談できる雰囲気】を強く求める傾向がうかがえます。一方で、【個々の強みの把握】や【挑戦の後押し】に関しては、個人差が見られます。また、【ミスの許容】や【挑戦の推奨】について一定の期待はあるものの、最も重視されているのは安心して話せる環境であり、上司にはまず【身近で接しやすい存在】であることが求められていると推察されます。
【人間的な成長】や【スキル・技能の向上】に対しては前向きな実感があり、これから働き始めるにあたって「得られそうだ」という強い期待感が見られます。一方で、【自分が望むキャリア形成】や【周囲からの承認】については不確定な見通しにとどまっている回答も一定数見られます。将来像が具体化しておらず、自信を持ちにくい様子がうかがえるため、上司や先輩がキャリアの可能性を示し、対話を通じて道筋を共有することが重要だと考えられます。
【問題発生時の協力】や【具体的なやり方の提示】という実務的なサポートに対する欲求は非常に高く、周囲との連携を重視している様子がうかがえます。一方で、【疲労や負担への労い】など心理的サポートに関する意見にはばらつきがあり、控えめな意見も見られます。心理的な支援の欲求もさることながら、それ以上に実務的な支援を求める、予防的な志向の強さが推察されます。
【自分は成長できる】【人生は自分で決めるもの】という意識は強く、変化への対応に向けた自己変革意欲が備わっている様子がうかがえます。ただし、【仕事への適応】【目標設定】【準備】など、具体的な行動に対しては不安や迷いを抱く意見も見られます。内面的な成長志向がある一方で、実践に移る際にはためらいがあり、不確実な状況への対応に自信を持ちきれない側面があるようです。
【現在の仕事】に対しては前向きに取り組む意欲が高く、精力的に働けそうだという認識が見受けられます。一方で、【将来的な展望やキャリアとの結びつき】が不明瞭で、長期的な勤続意欲は高まりにくい様子がうかがえます。入社を決める段階での選択への迷いや納得感の不足が影響し、「とりあえず働く」姿勢にとどまっている可能性が推察されます。また、【将来像の不確かさ】が、職場への継続的な帰属意識の形成を育みにくくしていることも考えられます。
【仕事に対する緊張感やプレッシャー】を感じ、不安や心配を抱えている回答が一定数見られます。これからの仕事に対して強いストレスを感じるかどうかには意見が分かれています。新しい社会で慣れない環境において気を張る状況が続くことによって、【失敗への恐れ】や【過剰な緊張感】が心身の負担に蓄積されていることが推察されます。
「仕事のやりがいは感じられそう」と考える一方で、「仕事に没頭できる」とは感じにくい意見も一定数見られます。【現業務や将来のキャリアとのつながり】が見えにくく、やりがいを確信しづらい状況がうかがえます。やりがいを感じる具体的要素が不足しており、それが【将来のポジティブな予測】につながりにくいことも推察されます。
| 調査期間 | 2025年3月~2025年5月 |
|---|---|
| 調査方法 | オンラインおよび紙面で実施したアンケート(選択式回答) |
| 調査対象 |
・弊社および弊社グループ会社が実施した新入社員研修の受講者 |
| 回答者数 | 8,127名 |
今回は新入社員アンケート調査の、適応モデルと全体傾向についてご紹介しました。
本調査の結果がOJTをはじめとした職場での育成活動に活用され、新入社員の成長支援に役立てていただければ幸いです。
次回以降は各項目の分析結果を詳しくご紹介します。

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