コンプライアンスアンケート導入事例:組織風土の課題を把握・改善

JR西日本では鉄道事業における安全とともに、全社においてコンプライアンスを実現することが最も重要な課題の一つとなっていました。その社会的責任を全うするための取り組みにおいて、ビジネスコンサルタント(BCon)がお手伝いした事例をご紹介します。

組織名
西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)
カテゴリー
  • 組織開発
  • 人材育成
  • 人材マネジメント

※本文に記載の事例内容、取材協力者のお名前・所属等は、取材当時のものです。

課題とソリューション

Before

  1. コンプライアンス推進のため、自社の組織風土の特徴と問題を把握し、改善につなげたい。
  2. コンプライアンスや働きがいの向上に向けた施策の浸透度合いを測り、KPIとして活用できるアンケートを実施したい。
  3. 複数の部署が行っているアンケートを統合し、回答者の負担を抑えたい。

After

  1. アンケート結果をまとめた調査レポートを通して、今後の課題が明らかに。
  2. 経年変化を捉えたレポートにより、支社・職場単位など組織の各階層で取り組むべきことが明らかに。
  3. 並行して行われていた複数の既存アンケートを整理・統合。各部署のニーズに応える新たなアンケートにより、負担を軽減。

背景:コンプライアンス推進が喫緊の課題に

2009年、福知山線列車事故(2005年)に関する航空・鉄道事故調査委員会(当時)の調査過程において、JR西日本の役員などが同委員会委員に対して情報漏えいの働き掛けなどを行っていたことが明らかになりました。

同社ではこれを重大なコンプライアンス(企業倫理)違反と捉え、コンプライアンス推進機能を集約・強化する「企業倫理・リスク統括部」を2009年中に設置。以来、コンプライアンスの向上と企業風土の変革に取り組まれています。

BConは、その挑戦に2010年からご一緒することになりました。また2019年以降は、同社が目指す「人財育成ビジョン」の実現に向けた、人事部による調査もお手伝いしています。

課題:2つの部署、3つの目的

JR西日本でのアンケートについては、主に3つの目的が挙げられました。

組織風土の問題の有無を明らかにする

企業倫理・リスク統括部での取り組みにおいて、当初の重要な課題の一つとなったのが「組織風土の問題の有無」を明確にすることでした。多角的な視点による調査と客観的評価を基に、その特徴や問題点を可視化するツール(調査)が求められていました。

アンケート結果で人財育成に関わる施策のPDCAサイクルを回す

人事部では約10年前からJR西日本グループの社員約3万人を対象に「働きがいアンケート」を実施してきました。その成果をさらに活用するため、複数の視点で経年変化を捉えるとともに、同社が目指す「人財育成ビジョン」の実現に向けて、進捗を計るための調査が求められていました。岡本浩一氏(東洋英和女学院大学教授)の監修を受けた調査と統計的分析に基づくBConのサービスは、この期待に応えるものでした。

アンケート回答者への負担を軽減する

複数部署による大規模な調査が繰り返されると、回答する社員への負担も大きくなりがちです。企業倫理・リスク統括部と人事部が並行して実施していたアンケートを統合することで、社員の負担を軽減するとともに、実施コストの圧縮も期待されました。

 

取り組み:「社員意識アンケート」が各施策の基礎に

3つの目的を達成するため、BConは「社員意識アンケート」を作成。さらに、調査結果を改善に生かすためのフィードバックを実施しています。JR西日本ではこれを活用し、コンプライアンスの推進・浸透と働きがいの向上に向けたさまざまな施策を展開しました。

複数のアンケートを統合し「社員意識アンケート」を作成

コンプライアンスの実現には、仕事に対する個人の意識や、各職場におけるマネジメントのあり方なども密接に関わっています。そのため、企業倫理・リスク統括部と人事部それぞれの施策に関わる調査項目は共通するところも少なくありません。

BConによる「社員意識アンケート」では、複数のアンケートに分かれていた項目を整理、統合しました。さらに、取り組みの進捗や、各年度において特に力を入れるテーマ・課題にあわせた調査内容と分析手法を用いるなど、実施のたびにアップデートを重ねています。

組織の各階層に向けた結果レポートを提供

アンケート実施後は、結果を次の改善施策に生かすための「フィードバック」を行うことが重要です。

当事例では、経営層、支社幹部、主管部署、各職場それぞれに向けたレポートを作成、提供しています。「コンプライアンスに関する組織風土の問題の有無」「働きがいについての社員の意識」といった観点からアンケート結果を整理。さらに各階層において必要な情報を整理・抽出して提供することで、施策の検討や、各職場での取り組みに活用しやすいものにしました。

アンケート結果に基づいたコンサルティング

JR西日本では、コンプライアンス向上のためのさまざまな取り組みを展開しています。BConはアンケート結果のデータを基に、取り組み全体の方向性や考え方、現状の捉え方についてコンサルティングを行っています。

組織の特性にあわせた新たな取り組みを提案

「社員意識アンケート」では、JR西日本(単体)の組織風土の特徴と課題が示されました。またこれとは別に、グループ会社を対象に従来の「企業倫理アンケート」を実施。この結果から、リーダー層を対象とした講演会を実施するなど、課題を解決しグループとしての強みを発揮するための取り組みにつなげました。

取り組みの成果とご評価

BConとの取り組みに対する評価を、各部署のご担当者様に伺いました。

企業倫理・リスク統括部 課長 中田 勝彦様

BConによるアンケートは、取り組みの客観的な指標となるものでした。

組織風土の改革を進めるにあたって、BConには客観的な指標となるものを示してもらいたいと考えていました。10年が経ち、アンケートによる「定点観測」を続けていくことの重要性を強く感じています。

継続的に追いかけていくことで、改善できている点・伸びているところと、そうでないところが見えてきました。また、組織として「この層にはもう少しテコ入れが必要なのではないか」というような課題も見えてきましたし、企業・組織としての我々のカラーや弱点もつかめてきたなと思っています。

グループ会社の組織風土を、アンケート結果の数値から客観的に見られるのもとてもいいですね。「企業倫理アンケート」が定着してきたという手応えもありますし、各社とも、改革につなげていきたいという思いがあるようです。社長が本気になって風土を変えようとしている会社は、アンケート結果にもその成果が現れていますね。

安全とコンプライアンスの向上は鉄道以外の事業においても根幹にあるものですし、アンケートはグループに共通の指標として使えるものだと考えています。

フィードバックのなかでは岡本先生から「大きく変わった」という評価もいただいていますが、我々の実感としては「まだまだだな」というところです。今後の取り組みとしては、数字を追うだけでなく、アンケート結果を基にグループ内各社の状況をていねいに深掘りしていきたいと思っています。

人事部(人財育成・ダイバーシティ推進) 担当課長 片岡 茂樹様

BConの知見とアンケートを、具体的な取り組みに活用していきたい。

人事部として行っていた「働きがいアンケート」と「社員意識アンケート」の統合に向けて期待していたのは、BConからの新しい視点・示唆が得られるのではということでした。

結果として、それまでやってきたことに磨きをかけていく、さらに効果的なものにしていくにあたって、1つ上のステップに行けたという実感があります。

アンケートの統合は「本当に聞かなければいけないことは何なのか」という視点から調査項目を精査し、「フィードバックすべきことは何なのか」を改めて考えるきっかけになりました。「働きがいアンケート」も10年近く続けてきたものだったので、継続して見ていきたい部分もあったのですが、そうしたところも含めて実現することができました。

また2020年度には新型コロナウイルスの影響から、従来のアンケート用紙による調査ではなくWebのみで実施しました。新しい方法を採りながら、同時に「これまでの取り組みとどうつなげるか」というところをBConと意見交換をしながら進めることができました。

BConとの協働ができたということ、そして知見を基にアンケートの見直しができたというところに最もメリットを感じています。

一方、アンケートやフィードバックの方法が変わったことで、現場(社員)からは戸惑いの反応もありました。そこで伝えているのは「アンケート結果の数値に一喜一憂するものではない」ということです。その数値を社員の一人ひとり、あるいは部門や職場で取り組んだ施策の検証に活用し、もし「思っていたほど成果が得られていない」ということであれば、改善に向けた手立てを考える材料にしてもらいたい。

また人事部としては、管理職をはじめ各組織・職場におけるリーダー的な役割を担う層のマネジメント力向上を1つの課題としています。「社員意識アンケート」で得られる知見から、課題や弱みの把握、気づきを得られるようにしていきたいですね。

今後はBConの持つ多くの知見を、私どもの組織内に落とし込んでいきたいと思っています。各組織の状況や、改善・目標に向けたアドバイスを得ながら、アンケート結果を社内の資料・マニュアルとあわせて提示することで、各組織での具体的な施策をサポートできるのではないかと考えています。

さらなる展開:「点」の取り組みを「線」に、そして「面」へ

福知山線列車事故から15年、情報漏えいの働きかけが発覚してから10年あまりが経過し、JR西日本の社員は同事故後に入社した世代が約半数となりました。しかし現在においても、鉄道事業の大前提となる安全対策の充実とともに、組織風土の変革とコンプライアンスの向上・改善、そして働きがいの向上に向けた取り組みが着実に進められています。

BConではさらなる改善をサポートするため、コンプライアンスの推進・浸透に関する豊富なノウハウを基に、調査とフィードバックの充実を図ってまいります。またJR西日本社内で作成されたマニュアルを活用した改善施策を提案するなど、多角的な施策と連携した複合的な取り組みとすることで、全社・グループにおける全面的なコンプライアンス向上を支援してまいりたいと考えています。

西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)

西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)
本社
大阪府大阪市北区
事業内容
運輸業/流通業/不動産業/その他
従業員
48,300人(連結)、26,500人(単体)
ウェブサイト
https://www.westjr.co.jp/