伸興電線株式会社 ~中期経営計画を通した組織の変革~

 

2018年6月掲載

※本事例は2018年3月の取材に基づき作成しています。事例内容および部門・役職等は取材当時のものを掲載しています。

  • 組織開発
  • 人材開発

伸興電線株式会社

本所:
香川県さぬき市
事業内容:
電線製造販売
従業員数:
184名(平成30年1月時点)
HP:
http://www.shinko-ew.co.jp/

伸興電線株式会社は、通信ケーブルいわゆる「電線」の製造を通して、情報インフラ整備に貢献している香川県の企業です。2019年には、創業60周年を迎えます。今回、お話をお聞きしたのは、代表取締役社長の尾﨑勝様。

社員一人ひとりが意識を高め、生産性向上を図ることで、組織の成長を目指しています。そして「四国で働きやすい会社№1になる」ことをビジョンとして掲げ、社員の方と共にチャレンジし続けています。

今回は、中期経営計画の策定と実行を通して、組織文化変革と人材育成を進めた伸興電線様の事例をご紹介します。

BConとの出会い

社長に就任してまもなく、経営者として組織の方向性を思案しているときでした

代表取締役社長 尾﨑 勝 様

社長に就任した時、私は46歳でした。当社はオーナー系企業ですから、それから先自分が25年~30年経営者を務めることになる。10年を1つのステージと考えると3ステージある。当時の私は、どのような会社にすべきかと思いつつも、会社の業績が良かったのでそれほど深く考えず、社長になってから2年が経とうとしていました。

しかしながら社員からは、「会社の方向性が見えない」という声が上がっていて、社内は一枚岩になっているとは言えない状況でした。

そんなときです。若いBConさんの営業が飛び込みで会いに来られました。

それからBConさんに自分の想い、組織の状況について時間をかけて話し、相談した結果、ビジョンを含め、組織の5年後の姿を想定した中期経営計画(以後、中計)をつくる取組みをBConさんに手伝ってもらうことにしました。

取り組み

中期経営計画づくりは、我社の強みを改めて認識する機会になりました

本当のところ、中計を作ることの必要性については半信半疑でした。それまでは単年ごとに計画を作っており、5年、10年先のことを決めても、その都度状況の変化に合わせる必要があるため、長期で決める意味がないという意見がありました。しかしながら、実際中計づくりを通して、社長としての自分自身の姿勢を定める機会になったと感じています。

当社が45年間走り続けてきた歴史を振り返りながら、存続できた、自社の立ち位置を改めて知る良い機会になりました。わが社の「コア・コンピテンス」は何かを幹部と語りあい、常に顧客に選ばれてきたのは、真面目に誠実な会社だったからだという結論になりました。

そういった組織を支えているのは、現場の製造、前線に立つ営業担当、そしてスタッフなのだと思うと、彼らなくして会社はない、彼らが意気に感じて動いているのかということが経営者として、胸に突き刺さったような衝撃を覚えました。

 

新たなマーケットにチャレンジする

中計づくりは、全体を見回りして考え、いろいろなことを模索する大きなきっかけになりました。単眼的ではなく、複眼的であること、事業軸を何本かもっておくことも必要です。当時、わが社の売上の6割は、ある専門商社に依存していました。私が経営を引き継ぐ以前も、その比率を下げようと取り組んでいましたが、実現できずにいました。

そこで中計では、長年の当社の課題であった顧客構造の是正に取り組むことにしました。売上構成比を変えるには、他の顧客の売上を上げるしかありません。そのためには、新たな市場に進出することが条件となりました。保守的な業界なので新たな取引先を開拓するのは難しいだろうという先入観がありましたが、実際に訪問してみると歓迎されるケースが大半でした。こういった営業展開を支えるために、顧客から注文を受けたらすぐに受注できる体制を作ることにして、新たに東京と大阪に拠点をつくり、お客様の声に対応できる流通体制を整えました(2018年5月時点で福岡、そして2019年春には愛知にも拠点を置き、全国5拠点になる予定)。

この戦略が功を奏して、受注案件も増えていきました。新しい人材も増やし、社員の世代交代もすすみ、徐々に新しい戦略を推進して活躍する社員がでてきました。

ただ、はじめは中計で掲げた目標や戦略を実行するのに、社員の足並みがそろっているとは言えない状況でした。中計で「四国で働きやすい会社No.1」になることをビジョンとして掲げ、それを実現するためにどんな会社を目指すのか、活動方針も示してこれをクリアしたらこうなるという青写真を見せました。しかし、社員はすぐには納得せず、「いまさらこんなことやってどうなる」というネガティブな姿勢を見せていました。

全社をあげて取り組んで、結果が出ないのであれば自分の責任ですが、方針を出しても社員がついてこなければ答えも出ない。私が言っていることを社員が信じて全力で向き合えば会社が変わるかもしれないという考えが浸透して、変えられるという雰囲気を作る必要がありました。

 

組織変革を支える、計画的な人材育成

そこで私は、組織の変革を支える人材育成をBConにサポートしてもらうことにしました。当時は定期的に採用をしていなかった弊害もあり、管理職層は薄く、かつ次世代を担う幹部が不足していました。ビジョン達成にはそれぞれの部門をしっかりリードしてくれる人材が不可欠で、その育成は急務でした。そこで5年間の次世代育成計画をたて研修を実施しました。同時に採用計画をしっかり立て、途切れることなく毎年、新人を採用することを決めました。

私は、20年先の組織を考えた人材育成戦略は必須条件だと思っています。多種多様な人材がいることで、互いに競い合いあえる環境が生まれます。うぬぼれたり怠けたりしても許される規範を持った組織は崩壊します。人材はちょっと多めに抱えるくらいがちょうどいいと考えています。当社では、そういった互いに刺激し合える環境作りとともに人材育成において大事にしていることは、社員の価値観に配慮することです。

香川という土地は、気候が温暖で、貯蓄率も高い地域です。田畑や土地があって、一家に一台ではなく、一人に一台の車をもつ文化です。仕事にしゃかりきになって、プライベートを犠牲にするという土地柄ではありません。農作業期や地元の祭りになると休む社員がたくさんいます。そういった文化を受け入れつつ、休み明けにしっかり頑張ってくれればと思います。

社員には、自分たちの会社だという意識をもっと持ってほしいと思っています。方針や戦略は決めるけれど、それに向かって社員が全力で対峙し、問題解決して目標を達成し、社員全員が潤うような会社にするのが理想です。地域の気風を受け入れつつ、社員と本気になって「四国で働きやすい会社№1になる」を実現したいと思っています。経営者として胸を張れるような待遇もしたい。そんな気持ちにさせてくれたのも、中計でした。

 

苦しい時も長期の成長を見据えた変革

しかし、中計のさなか2008年にリーマンショックが起きました。それは衝撃的な出来事でした。

業界としてマーケットが25%縮小しましたが、人材を増やし、設備にも投資をし続けました。現場からは「社長、わかっていますか」と言われもしました。でも、私はゴールを少し先に置いていたんです。中計を作る過程でこれからの市場性、業界の変遷を真剣に考えて議論したことが、段々と現実になってきて私たちの戦略がフィットしていると自信を持てるようになっていました。市場が変化する中で売上を伸ばすには、新しいことに投資し、それまでとは違うレベルで受注することが大事だったのです。

本当に苦しい時期でしたが、リストラも社員の報酬カットもしませんでした。当時は、ようやく社員のまとまりができつつあるタイミングでした。苦しいからと言って、リストラなどしてしまったら、自分自身が「会社は社員みんなのものだ。君たちが頑張ればより働きやすい会社にできるんだ」ということを繰り返し訴えてきたことがチャラになってしまうと思いました。ですから、経営は苦しかったけれども内部留保を切り崩してでもなんとか対処しようと決断しました。このことが、私の考えが社員に理解され、徐々に浸透していったターニングポイントのように思います。

成果

組織の中で信頼関係が生まれ、組織風土が変わってきました

BConに手伝ってもらう前は、経営側と社員との信頼関係づくりに10年かかると読んでいました。しかし、6年間で、社員がある程度同じ方向を向いてやってくれるようになりました。それを実感した時、嬉しくてBConのコンサルタントに電話したことを今でも覚えています。

中計の策定に参加したメンバーとは、「どのような会社を目指すのか、給料を上げるのか、無駄を省けば給料もあげることができる。やることやって主張するのはよいけど、そうでなければ会社はダメになる」といった話を互いに生産的にやりとりできるようになりました。

中計を実行するには、それまでの組織文化とは違うことをする必要があったし、これまでの価値観と異なることをする必要がありました。「自分たちが頑張れば、より働きやすいステージにいけるんだ」と私がことあるごとにメッセージするので、「尾﨑教」を植え付けようとしていると感じる社員も多くいました。しかし、そこに第三者としてBConが入ることで、私がメッセージしている内容を他社の事例を提示して、話を一般化してくれました。当社が求めていたのは、まさにこのような立ち位置で改革を促進してくれるパートナーでした。

BConさんと長くお付き合いできているのは、当社の事情や私の人となりを理解し、柔軟に対応できる会社だからです。私の想いや社員に伝えたいことを助けてくれたのがBConでした。また社員が聞く耳を持つような環境づくりができるように、いつも気を配ってくれたことを嬉しく思っています。これまでBConさんとは一緒に様々なバリエーションで研修を実施してきました。研修の場で私が登場した方が良いと思ったら私が出て行って話すのですが、途中から話がメインテーマから他へ展開していっても、BConさんはそれを事前に予知していたかのように、資料を準備していてメンバーに補足説明してくれるのには、感心します。 

今後への期待

社員一人ひとりが「自分たちの会社」と思って、全力で目標に向かう組織になりたい

「ずいぶん組織が変わりましたね」と言われますが、私が考える理想の姿からすると60%というところでしょうか。社員には、自分たちの会社だという意識をもっと持ってほしいと思っています。方針や戦略は決めるけど、それに向かって全力で対峙する、問題解決することで社員全員が潤うような会社が理想です。会社の発展と社員一人ひとりの幸せが一致するという価値観を持った会社になりたいと思っています。そういった会社になれたら当社は地域の中でも今以上に認められ、是非働きたいという人材が押し寄せてくるのではないかと夢を見ます。

当社はアイテムによっては、国内シェア30%以上、ある商品だと45%に達しているものもあります。有り難いことに北は稚内から南は石垣島まで当社の名前を知ってくださっている人がいます。次のステージでは、ファンを作っていくことがテーマです。顧客の方から当社の製品を使いたいと言ってもらえるようになれば、一次店流通は自分のところで扱わせてくれないかということになります。卸の先にいる顧客と接点を持つことで共同で商品開発をする機会やこれまでなかなか得られなかったニーズを押さえることができるようになります。さらにブランド力を高めていきたいと考えています。いま、ビジョンに掲げていますが、今より20%アップの売上100億円を達成することが一つの大きな目標です。

当社は規模に対して、応分の存在感を見せることを大事にしています。先代がなくなる前に遺した言葉は、「分相応に」でした。必要以上に節約するのもいけないし、力もないのに大きなマーケットに打って出るということも良くないと思っています。だから、基盤になる建設マーケットで地道に事業展開しながら機会をうかがうのがよいと思っています。でも、できるだけ早く目標を達成できるような会社になるためには、組織の活性化が必要ですし、社員一人ひとりの意識を高めることが必要だと思っています。

どんなことでも向き合い方ひとつで結果が変わってきます。自ら楽しむのか、楽しませてくれるのを待つのか、受動的か能動的かによって結果に違いが出ます。例えば、フォークダンスを踊っている若者をみて、「チャラチャラして」と言って傍観している人がいたら、私は「一度その中に入って踊ってみないか」と言います。社員一人ひとりが当事者意識を持ち、自分の会社を大切にしながら、目指すべき方向に進んでいくような組織になりたいと思います。

 

担当コンサルタントより

尾﨑社長とは大変長くお付き合いをさせて頂いております。
尾﨑社長の人柄はインタビュー通り、熱く、賢く、信念を持って経営に真摯に取り組まれている方で尊敬できる経営者のおひとりです。

「四国で働きたい会社No1になる」
このビジョンを決定する際、いろいろと葛藤もありましたが、決めた以上その方向にわき目もふらず一心不乱に経営に邁進されている姿は大変素晴らしいと思います。

階層別研修、次世代リーダー研修、全社員研修、他流試合など様々なものを組み合わせながら、一貫性のある取り組みをご一緒し、会社が変わっていく過程を共に歩ませて頂き、私自身とても嬉しく思っております。
伸興電線様の更なる高みを目指す活動について、これからも良きパートナーとしてサポートさせて頂きたいと思っております。

編集後記

取材を通して、尾﨑社長が「社員が、自分たちの会社なんだという意識を持って、自分たちが頑張れば、会社が成長し、その結果自分たちが働きやすい組織を作れるんだ」と思える環境づくりに一貫して取り組まれてきたことが感じられました。人と人との関係性を大事にし、強い思いで社員とともに歩もうとする尾﨑社長の徹底した姿勢は、組織風土変革や社員のエンゲージメント向上に大きく貢献していると思います。

今回BConの「中期経営計画づくり」では、幹部が自社の強みや立ち位置を再認識し、その強みを生かした成長戦略を描きました。また取り組みの最中は、リーマンショックのような大きな環境変化がありましたが、人材育成、組織文化変革、設備投資を地道に続けて、ブレることなく、長期的成長を目指していらっしゃったことは素晴らしいことでした。

BConは、中期経営計画づくりのお手伝いだけでなく、戦略を実行するための「組織風土変革」や「人材育成」のお手伝いをしています。組織の価値観の浸透や組織文化変革の課題をお持ちの組織はお気軽にご相談ください。


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