5つの経営資本(The Five Capitals)

弊社は、企業が持続的、永続的に成長と発展を遂げるためには、5つの経営資本をバランス良く高めていく必要があると考えています。ここでいう“成長”とは、単なる規模の拡大を意味しているわけではありません。共に働く人々の生産性の向上と成長・発展や、働く意義や生きる喜びも同時に追求していくことが含まれます。

5つの経営資本

5つの経営資本とは、財務的・経済的資本(Financial Capital)、技術的資本(Technological Capital)、知的資本(Intellectual Capital)、社会関係資本(Social Capital)、アイディオロジカル資本(Ideological Capital)です。

5つの経営資本 氷山モデル

財務的・経済的資本は、財務諸表の健全性、利益の最大化、キャッシュの最大化を目指し、経済合理性を徹底追及するために重要なものです。

技術的資本は成長の源泉となりうる強み、特許をはじめとする知的財産、技術力・ノウハウの蓄積などコアコンピテンスになりうるものです。

知的資本は、企業として保有する知的財産を生み出すことにつながる個々人の持つ知恵や知識です。

社会関係資本は相互の信頼をベースとした人と人との関係により生まれ、蓄積される資源で強い絆、繋がりを指します。

アイディオロジカル資本は組織としての志、思い(念い)、理念やリーダーが持つ志や思いについて「情」と「理」を総動員して説いて聞かせ、社員一人ひとりの骨の髄まで浸透し、年期を重ねて社風・体質・組織文化になった財産のことです。他社が一朝一夕に、簡単にマネできない最大かつ最強の財産のことです。

経営者と経営屋 ―― アイディオロジカル資本と財務的・経済的資本

欧米のビジネススクールの多くは、財務的・経済的資本の最大化を目的とし、その他の資本は、ある意味軽視しているような主張をしています。

よく政治家と政治屋は異なるといわれます。政治家は世の中をより良くするために貢献し、社会をよくしたいという志を持って先を見て政治をする人といわれます。一方、政治屋は自分が当選するかどうかが最大の関心事であって、次の選挙のことしか考えない人といわれます。

同じように考えると、経営者と経営屋が存在しているといえます。

経営屋は自分が経営に携わっている期間だけ利益とキャッシュを最大化すればいいと考えて財務諸表という自分の通信簿をよくすることだけに奔走している人といえます。そして目に見える指標化できる財務諸表ばかりに目も心も奪われた自己顕示・名誉欲の塊のような人です。

経営者は財務的・経済的資本以外の目に見えない指標化しにくい4つの資本を本当に大切にし、経営・組織の持続可能性のために全身全霊を込め育んでいく人です。

企業経営においては、事業を継続するために必要とされる運転資金(売上債権と棚卸在庫から仕入債務を引いた金額)が必要です。海外のMBAプログラムの中には、運転資金ではなく回転差資金(運転資金がマイナスの状態)を提唱するケースがあります。

日本のある経営者は回転差資金を見て「取引先いじめだ」といったことがあります。支払いを遅らせるだけであり、自分の経営の考え方に反するといいました。

ある大手企業は、長きにわたって技術開発を継続し、数十年かけて製品化したというケースがあります。財務的・経済的資本を重視した経営では、絶対に成し遂げなかったどころか、10年ぐらいで中止の意思決定がされたといわれています。

最近、「論語」が注目されています。海外のMBAプログラムでも東洋思想に学ぶ、論語を学ぶケースが見られます。日本では渋沢栄一氏の「論語とそろばん」が有名であり、まさにアイディオロジカル資本と財務的・経済的資本の両立を目指し、“士魂商才”を育成するという考え方といえます。

企業がサステイナブルであるためには

私たちは財務的・経済的資本を軽視していいとは主張していません。利益やキャッシュがなければ、将来にむけて成長のための投資ができません。財務的・経済的資本が大切であるがゆえにその持続性を生みだす他の4つの資本も重要であると考えています。バランスが重要であるといえます。

5つの経営資本の中でアイディオロジカル資本が土台であり、それと対になり相互に強い関係を持つとても大事な社会関係資本が存在します。そして、その上に知的資本、技術的資本が積みあがっていくのだと考えています。経営の永続性に本当に必要な良い人材、良い製品は良き社風であるアイディオロジカル資本なしに育たないといえます。

アイディオロジカル資本は、志、思い、ビジョン、理念、哲学、経営者の生き様が作りだし含まれます。企業としてどういう考え方を大事にしていくのか、志、これが資本の礎になるといえます。

ビジョン、思い、志は、一緒に働く人々の心に火をつけ、“働く喜び・生きる幸せ”をもたらすと同時に人々を結集する力になります。その結果として社会関係資本が高まることになります。思いが年期を重ねて積みあがり共有されると社会関係資本が充実していきます。同じ思いを持って集まるとコミュニケーションが活発になります。

しかし、アイディオロジカル資本が高い組織でも、社員同士のつながり、関係性、絆が弱いケースも見られます。その場合、社会関係資本にフォーカスした強化策が必要であるといえます。

社会関係資本の構築は、明確な意図や目的を持って取り組んでいく必要があります。経営効率を考えると無駄に思えた取り組み、例えば、飲み会や運動会を復活してきた企業が見られます。

理由を確認してみると、希薄になってしまった社会関係資本を再構築する狙いがあるといいます。財務的・経済的観点からは一見無駄に見えた事も、社員のつながり、絆、一体感を創りだすために無駄の効用を敢えて選択している経営者もいます。まさに、5つの経営資本をバランスよく取り組んでいるといえます。

私たちは企業がサステイナブルであるためには5つの経営資本をバランスよく強化していくことが重要であると信じています。

2016年9月14日