社員一人ひとりの職位・意欲に応じた能力開発・自己啓発教育 〜『伊藤園大学』による人材育成の実践〜
『伊藤園大学』は、「自己啓発教育の社内大学」として20年以上の歴史を持つ株式会社 伊藤園様の社内教育システムです。ビジネスコンサルタント(BCon®)では、その『伊藤園大学』の一部講座を講師派遣という形でお手伝いしています。今回は職位に限らず多くの社員の方が意欲的に参加されている教育システム、『伊藤園大学』についてお話をうかがいました。
人が動きたくなる場を創る
〜種をまかねば育たない〜
※本事例は2016年10月の取材に基づき作成しています。事例内容および部門・役職等は取材当時のものを掲載しています。
2017年3月掲載
松本ハイランド農業協同組合(以下、JA松本ハイランド)は組合員数32,000人、職員数750名超の長野県松本市を中心に2市5村を管内とする農業協同組合(JA)です。
生活様式の変化や外部環境の変化によりさまざまな変革を余儀なくされているJAにおいて、JA松本ハイランドは地域を盛り立てることができるリーダーとしての“人づくり”を経営の中核に据えています。また、先駆的な職員向け研修や組合員向けのセミナーを展開しながら組合員との関係性を強くする取り組みを展開しています。同組織に対し株式会社ビジネスコンサルタント(以下、BCon®)は「スピード感ある意思決定」を体験学習する場の提供や、現場教育など支援しています。同組織の人づくりをけん引している代表理事専務 髙山 拓郎様にBCon®をご活用いただいている背景や印象深い講座についてお伺いしました。
昔のJAの組合員は強固な地縁・血縁のネットワークでつながり、農業がくらしの中心でした。組合員の未来への願いは同じ方向にありました。しかし今や地域の人と人の繋がりは薄れ、個が優先される時代になり農業の担い手は減少しています。
農業は家族が基本ですから、家族がバラバラになると農業はもとより地域が消えます。地域は水・酸素の供給、食料・森林など都会の生命維持装置でもあります。地域が消えるということは日本が消えるということなのです。
JAは農業を通じて組合員と一緒になって地域を守り引っ張り、「元気な地域づくり」に貢献することが大きな使命なのだと思います。
ここでJAに縁遠い方からまれに誤解されるので1点お伝えしたいことがあります。JAは“協同組合”です。JAにとって組合員は出資者兼運営パートナーであり“お客様”ではないのです。組合の主役は組合員で、リーダーシップをとるのは組合員です。職員は脇役、サポート役という位置づけになります。
地域を引っ張るためには、自ら判断し、人を巻き込むために思いを熱く語り、人の心をつかめるような組合員のリーダーが必要になってきます。そのリーダーを支援し、主体的に動いてもらえるように働きかけ、仕組みを作り、シナジーを生み出す職員が必要です。
これまで職員向けにさまざまな教育に取り組んできました。主にはJAに特化した内容の研修です。
上記とは別に、今後組織のなかで中心となり変革を推進して欲しい人材はBCon®の公開講座に派遣しています。公開講座に行くと他業界の事例と情報が得られます。さまざまな分野の組織に所属する方々と交流し大いに刺激を受けます。これはJA内部にいるだけでは得られない学習経験になります。JAの専門性に特化せずに「人と組織の動かし方」を、必要な人に必要なタイミングで学習してもらえるように活用しています。
JAとしての活動という点でやるべきことは多くあります。「地域をコミュニティ化し組合員同士をネットワーク化することによって、地域活性化を図る」「組合員の中でリーダーを育てる」「“りんご部会”や“すいか部会”といった部会同士のシナジーを高める」などいずれもJA松本ハイランドの職員だけが頑張ればよいという話ではありません。組合員が主役です。職員は組合員が寄っていきたいと思う「場」をつくり、組合員が「主体的」に動いてもらう仕掛けを作り、職員自身が「思い」を語ることが大切です。
この課題意識にぴったりあうのが「組織開発実験室」と銘打ったBCon®の公開講座ODL®(*)だと思っています。この講座は面白いですね。過去の受講者から帰りの電車で涙が止まらなかったと聞きました。このような経験は、大の大人が普段しないですよね。
公開講座ODL®の面白いところは受講生が仮想組織を作り、社長役、副社長役、事業部長役などさまざまな役割をロールプレイのように担います。事業運営のために短時間で意思決定したり、反発を受けたりしながら他の役割の受講者を納得させるといった体験をします。 同じ組織の中に長くいると、自分の影響力やリーダーシップを客観的に認識することができなくなります。この講座ではお互い違う組織、初めて会う参加者同士で組織運営を疑似体験します。普段の役職や地位のパワーは通用しません。自分自身の力だけで人をひきつけてリーダーシップを発揮して成果を出さなければなりません。 受講者は素の自分をさらけ出しながら、全身全霊で影響力を発揮し人を動かす必要があります。逃げ場のない状況で自分がどういう行動をするか、自分の影響力の幅、人や組織がどう動くのかを身をもって経験できる場です。 このように心を揺さぶられる研修は、今後組織を動かす人間にとって必要だと思います。相当な胆力が鍛えられるからです。
*公開講座ODL®:オーガニゼーション・ディベロップメント・リーダーシップ
※参考※ BCon®の公開講座一覧はこちら。
研修の成果を拙速に求める声も組織内にはあります。しかし研修してすぐに効果が感じられるものと、そうでないものがあります。短期的な効果ばかりを見て、取り組みをやめるくらいなら最初からやらないほうが良いです。情報や機会を示し続けておくことで、職員全員が必要なタイミングで成長のチャンスを掴めるようにしたいと思っています。
うまく育つかわからないから、天候が荒れるから、種をまかない、水をやらないという農家はいません。いろいろな要因に左右されるけれど、芽が出て育つことを信じて愛情をかけるわけです。そうして5年、10年かけてよい作物や家畜が育つ。人づくりも同じだと思います。
組織や地域の未来を考えるときにJAがあって当たり前という前提でスタートするのではなく、異業種を含め俯瞰した視点を大切にしたいと思っています。他の組織がどういう動きをしていて、どういう感覚を持っているかについて常にアンテナを張っていなければいけません。 異業種の事例やノウハウを取り入れることも含めてBCon®からの新たな情報提供を楽しみにしています。それらをすべて取り入れるということではなく、上手に取捨選択しながら自分たちの道をつくれば良いと思っています。
また、選抜職員だけではなく、職員の役割に応じてBCon®の公開講座を活用させてもらっています。先ほどのODL®はもとより経営・マネジメントの全般について情報のシャワーを浴びることができる公開講座LEMS®や、組織の持続的成長を見据えバックキャスティングで戦略を立てるためのBSSP、現場で必要とされる財務知識を持った意思決定能力を啓発する経営シミュレーションのBDP®など活用しています。安定して良質な公開講座の提供を通して、わたしたちJA松本ハイランドという組織の土壌を「ふかふか」で豊かにする手伝いをお願いできればと思います。
JA松本ハイランド様とは10年来のお付き合いになります。髙山専務のお話は刺激的で農業に対する熱い思いは高いものを感じます。
さて、JA松本ハイランド様は組合員との密着度を上げるために先進的にさまざまな取り組みを行っており、全国JAグループの中でも有名なJAのひとつです。JAとしてのミッションである「食」と「農」を徹底的に追及した活動を行っています。
国内農業の環境が大きく変化している中で、JAグループは「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」を最重点課題として設定しています。JA松本ハイランド様では、上記の方向性の元、地域に密着し組合員接点の質の向上を図っていくために幹部候補者の着眼点を変える機会としてBCon®の公開講座をご活用いただいています。その講座参加者が事業推進や組織運営の中心になってリーダーシップを発揮されています。
これまで人づくりの取り組みにご一緒させていただいて感じることは、職員の方々が自分の意見を主張し行動に移せるようになってきたことです。職員の意識変革と行動変容を促す機会を継続的に創っていることがカギになっていると言えます。BCon®として引き続き「食と農を基軸として地域に根ざした協同組合」の実現を目指してご一緒させていただきたいと思います。
JA松本ハイランドが地域社会に求められる組織になるため日夜奔走される髙山専務のお話を伺いました。人の能力が開花することを信じて長期スパンで人材育成を行うという専務のお考えに感銘を受けました。
一般的にビジネスパーソンは同じ組織のなかで長く過ごしていると視野が狭くなりがちです。そこで外の公開講座に出て行き、異なる価値観の人々と触れ合いながら学習する機会が重要になります。仮想的にさまざまな役割を疑似体験することがその人の成長を後押しするためです。引き続き多くの方にBCon®の公開講座を活用していただき、ビジネスパーソンとして大きく飛躍する一助として頂きたいと思います。
BCon、ODL、LEMS、BDPは、株式会社ビジネスコンサルタントの登録商標です
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