取引先アンケート支援事例:現状と課題を可視化し、改善につなげる

ローソングループではグループ各社での取引態様を把握するため、取引先企業を対象とした「お取引先さまアンケート」を1998年から実施しています。公正な取引の実現、コンプライアンス・リスク管理体制の改善に生かされる同アンケートについて、ビジネスコンサルタント(BCon®)が支援した事例をご紹介します。

組織名
株式会社ローソン
https://www.lawson.co.jp/company/gr/
カテゴリー
  • 組織開発

※本文に記載の事例内容、取材協力者のお名前・所属等は、取材当時のものです。

課題とソリューション

Before

  1. 他企業との取引における課題を捉え、公正な取引を実現・継続するため、取引先企業からの率直な回答が得られるアンケートの継続が図られた
  2. 長年にわたる実績・データの蓄積を生かすと同時に、質問項目や回答方法について再検討が望まれた
  3. アンケート結果はグループ内、さらに取引先企業とも共有されている。報告書レポートのさらなる充実が望まれた

After

  1. BCon®の専門性に基づいた提案、お客様との共創により、アンケートの改善を進めた
  2. コンプライアンスに関する調査項目を中心にしつつ、サステイナビリティの浸透状況などを尋ね、今日的な課題についても調査できるアンケートとした
  3. 報告書レポートはグラフなどの視覚的情報と分析情報を充実させ、より理解しやすく、活用しやすい媒体とした
  4. 回答者となる取引先企業への依頼・調整もBCon®が担当することで、匿名性を担保し、実態を把握しやすい環境づくりを進めた

背景:取引先企業との信頼関係を築くアンケート

ローソングループは、コンビニエンスストア「ローソン」のフランチャイズチェーンをはじめ、チケット販売やエンタメ物販サービス、映画館、高品質スーパーマーケット、銀行など多分野で事業を展開しています。その基盤として、また組織が担う社会的責任として、公正な取引による取引先企業との信頼関係構築を重視してきました。

「ローソングループ企業行動憲章」の制定や、1998年から毎年実施されている「お取引先さまアンケート」(以下 取引先アンケート)はそうした姿勢の表れであり、理念の実現に向けた具体的な取り組みとして継続されています。

『私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。』としたグループ理念の実現、そして持続可能なサプライチェーンの構築による社会への貢献には、多くの取引先企業との連携が欠かせません。同アンケートの目的は、取引に関する問題点や課題を把握し、取引の実態がローソングループの企業方針と合致しているかを確認するとともに、コンプライアンス・リスク管理体制の見直しや改善につなげることにあります。

調査はBCon®が受託する以前から外部委託されており、2020年に新たなパートナーとしてBCon®が選定されました。以来、アンケートを活用したソリューションを提供する専門チームが担当し、アンケートの設計・実施、アンケートの改善、結果の活用に向けた支援を行っています。

ソリューション:BCon®からのご提案、お客様との共創

アンケートの対象(回答者)となる取引先企業は、膨大な数に上ります。委託にあたっては、アンケートの実施をはじめ、結果の分析や報告書レポートの作成などに関する専門的な能力とノウハウを持った外部組織が求められていました。

BCon®ではこうしたニーズに応えることはもちろん、専門性に基づいたサポートをご提供し、改善に向けたご提案を行いました。また質問項目の検討・検証については、ローソングループ内での調整を担う「事務局」と共同で行うなど、アンケートの改善に向けた共創を進めました。

アンケートに関わる一連の取り組みをサポート

ローソングループの取引先アンケートについて、BCon®は調査項目の検討をはじめとするアンケートの設計から、取引先企業との連絡・調整を含むアンケートの実施、結果をまとめた報告書レポートの作成までを一括して受託。さらに、改善施策への活用についてもアドバイスを提供しています。

課題を明らかにする質問項目の再検討

同アンケートはグループ企業による取引が公正に行われているかを調査するものです。しかし、BCon®が受託した2020年時点ですでに高い水準で目標が達成されている項目や、課題の抽出に工夫が求められる項目も含まれていました。

こうした状況を踏まえて、BCon®では質問・回答項目の再検討をご提案し、事務局との共同作業を進めました。取引先企業からの評価をさらに詳細に捉え、課題を抽出・深掘りしやすいアンケートになるよう、調査項目の整理と、設問の改善(例えば、「問題点を見つけるための設問」から「よりよい関係を築くための設問」への変更)が行われました。

また開始当初と現在では、優先されるテーマ(課題)が異なっていることもヒアリングを通して明らかに。持続可能なサプライチェーンの構築、SDGsへの取り組みに関する項目を新設することで、ローソングループの取り組みに対する外部からの評価や、取引先各社におけるサステイナビリティの浸透状況についても調査できるようになりました。BCon®の専門性が特に生かされたこれらの調査項目は、ローソングループでの新たな取り組みにもつながりました。

内外への結果共有、改善策検討の資料となる報告書の充実

アンケートによる調査は、その結果を適切に整理・分析し、施策に活かすことが重要です。

取引先アンケートの結果は、グループの経営層に共有された後、グループ各社の担当部署による課題の抽出と、解決に向けた取り組みの検討に活用されています。またアンケートに協力した各取引先企業に向けては、アンケートの結果概要とともに各部門のメッセージや改善策を記載した資料を送付。アンケートで明らかになった課題への対応内容を伝えてきました。

つまり報告書レポートは現状の把握とともに改善施策の検討に用いられる資料であり、さらにグループ内外をつなぐコミュニケーションツールの1つでもあるのです。アンケート結果を適切にまとめることはもちろん、結果分析の充実や読みやすさの向上などにより、さらに有用な媒体となることが期待されていました。

報告書レポートについて、BCon®では特に以下の点について提案・改善を進めました。

提案・改善1:回答の傾向と変化の可視化

各項目のスコア(回答の傾向を数値化したもの)を整理するとともに、グラフやヒートチャート(ヒートマップ)などを使用し、ひと目で回答の傾向が捉えられるようにしました。

また経年変化を読み取りやすいデザインにすることで、アンケートの継続による蓄積を活用しやすくしました。取引先企業におけるSDGs推進状況から、ローソングループのサプライチェーン全体での取り組みが概観できる資料ともなっています。

提案・改善2:独自分析に基づいた提案

結果を基にした仮説・考察、あるいは取引における課題の抽出を行い、改善施策検討の資料としています。関連性のある質問項目の結果をかけ合わせて傾向を分析。取引先企業の認知・認識を浮かび上がらせるとともに、より良いパートナーシップを築くためのポイントを提案としてまとめました。
自由記述式の設問については、匿名性を確保しつつ、回答の全文を掲載。「生の声」から得られる情報を改善につなげやすくしました。

提案・改善3:レポート提供先に応じた構成

アンケートの結果は、ローソングループの経営層、各事業を担うグループ企業の担当者、そしてアンケートに協力した取引先企業に共有されます。代表者宛には概要をまとめたエグゼクティブサマリーを、担当者宛には対応内容の説明などを含む詳細レポートを作成。提供先によってレポートの内容(粒度)や構成を検討し、利便性の高い資料としました。
また従来は郵送やメールで送付していたレポートを、ウェブサイト上で閲覧する方式に変更しました。ページ数が多く容量の大きいデータの送受信が不要になり、閲覧・共有しやすい環境に。取引先企業の閲覧状況を踏まえたコミュニケーションが可能になると言ったメリットも得られました。

取引先企業が安心して回答できる環境の構築

BCon®は取引先アンケートに関する業務を一括して受託しており、実施に伴う取引先企業(回答者)とのコミュニケーションについても、すべてBCon®が行っています。

アンケートを実施する際、重要なポイントの1つが回答者の匿名性を担保することです。特に取引先アンケートでは「取引の実態の把握」あるいは「取引における課題の抽出」が目的であることから、実態に即した率直な回答が欠かせません。BCon®は信頼できる第三者機関として匿名性を担保し、取引先企業がビジネスへの影響を懸念することなく、安心して回答できる環境を整えています。

インタビュー:取り組みの成果と、ご評価

BCon®がお手伝いした「お取引先さまアンケート」とその成果について、ご担当者のお二人にお話を伺いました。

アンケートの設計と実施について:

(株)ローソン 事業サポート本部 法務部
新 勝幸 様

新:「お取引先さまアンケート」を続けてきた中で、課題に感じていたのは調査項目の見直しについてです。取引に関する問題をさらに深掘りできるような調査にするためにも、設問の最適化に向けたPDCAを回せるようにしたいと考えていました。ただ、社内での検討だけでは視野を広げることが難しく、考え方が固定されてしまいがちですから、アンケートの改善に向けてBCon®が「一緒に悩んで、考えてくれる」というところが良かったですね。

もう一つの大きなメリットは、BCon®との取り組みには安心感があるということです。回答者であるお取引先の匿名性確保というところはもちろんですが、進捗管理や、お取引先とのコミュニケーションも含めて感じています。

匿名性を担保しながらお取引先へのアンケートを実施して、結果を集計・分析し、報告書を作成して……という一連のフローが、毎年計画通りに進められる。アンケート実施中には回答状況の途中報告がありますし、未回答のお取引先へのフォロー(回答促進)もある。また、アンケートに関連してお取引先からご要望があった際にもていねいに対応していただけたことは、弊社とお取引先との信頼関係にもつながるところだと思います。

(株)ローソン 事業サポート本部 法務部
八田 知樹 様

八田:設問の検討については、グループ内の意見を集約するためのフォーマットをつくってもらえたことも、すごく助かりました。前年のアンケートに対して追加したい質問だとか、逆に「もう不要なのでは」といったコメントを各部署の担当者に書き込んでもらうためのファイルです。以前は具体的な意見を集めることがなかなか難しかったのですが、フォーマットが整えられたことで効率的に進められるようになりました。

お取引先のリストのメンテナンスが進められたことも成果の一つですね。名寄せや入力データの整形といった作業もサポートしていただけたのは助かりました。コミュニケーションも非常に細やかで、アンケートに関する一連の業務が年々進めやすくなっているなという実感があります。

アンケート実施後の報告書について:

八田:報告書に関しても毎年工夫していただいていますが、受け取った担当者から「ページ数が多い」という感想を聞くことがあります。ただ、これは報告書を真剣に読んでいるからこそ出てくる言葉だと思うんです。ローソン社内はもちろん、他のグループ社内も含めて、コンプライアンスに対する意識と「お取引先さまアンケート」に対するニーズが高まっていると感じます。お取引先からも、アンケートを通して毎年定期的にご意見を伺うことについて、肯定的な評価をいただいています。

新:アンケートは取引担当者の課題や反省点を明らかにすると同時に、成長を促す機会にもなっていると思います。以前は「問題がないか」という視点に立った調査でしたが、BCon®との取り組みを経て「期待に応えているか」といった、よりよい関係性を目指すための質問が設けられました。

また、アンケートを通して、お取引先から担当者に対するお褒めの言葉もたくさんいただくことができました。それを読むと、やはり社員は喜ぶし、やりがいを感じられますよね。

八田:お取引での対応に問題があればもちろん直さなければなりませんが、しっかり対応できた担当者に対してポジティブなフィードバックがあれば「また来年も良くしていこう」と思える。そういったスパイラルにつながるアンケートになったというところは、大きな変化だったと思います。

新:私たちのビジネスは、お取引先企業、つまりパートナーが必要です。たとえば商品開発だけをみても、新商品を毎週発売して、キャンペーンを展開して……パートナーとの信頼関係なしには進められません。

信頼関係を高めていくには、こちらから積極的にお取引先の声を聞く、あるいは引き出すというプッシュ/プル型のコミュニケーションをうまく融合させていくことが大切だと考えています。さらに意義のあるアンケートにするために、今後もご協力いただければと思います。

(文中敬称略)

継続の価値を高める:蓄積の活用と変化に応じた改善

ローソングループの「お取引先さまアンケート」は、同グループの取引における信頼を築くための重要な道しるべとなるものです。

長年にわたって継続されてきた取り組みを通じて、グループにおけるコンプライアンス・リスク管理体制を検証することはもちろん、抽出された課題の原因や対策については取引先企業との連携・協力のもと、対策を施す体制が培われてきました。

今後は、蓄積されたデータをさらに活用するため、あるいは社会・外部環境の変化に対応するための資料として、アンケートの改善が期待されます。公正な取引に向けたローソングループの取り組み、そして取引先企業を含めた持続可能な成長への挑戦について、BCon®はアンケートの設計・実施から分析に関する専門性とノウハウをもって支援してまいります。

株式会社ローソン

本社
東京都品川区
事業内容
コンビニエンスストア「ローソン」のフランチャイズ等
従業員
10,648名(連結)(2023年2月末日)
ウェブサイト
https://www.lawson.co.jp/company/gr/