JR九州バス株式会社

JR九州バス株式会社

  • 持続的成長
  • 人材開発

2017年4月掲載

JR九州バス株式会社

JR九州バス株式会社

本社:
福岡県福岡市
事業内容:
高速・路線バス運行、不動産事業
従業員:
221名(2016年7月時点)
HP:
http://www.jrkbus.co.jp/
JR九州バス株式会社

JR九州バス株式会社はバスの運行を主な事業にしている会社 です。九州と本州をつなぐ高速バスや定期観光バス、また鉄道の通っていないエリアをバス路線でカバーしています。特徴的な赤い車体は地域住民の足として地域に根付いています。
2015年、主力であるバス事業の見通しが決して明るくないという問題意識を背景に、新規事業プロジェクトが立ち上がりました。株式会社ビジネスコンサルタント(以下、BCon)からの情報提供とファシリテーションのもと200件を超える新規事業の種が生まれ、一次・二次スクリーニングを経て最終的に1つの事業プラン(特殊フィルムを使った土を使わないトマト栽培)に絞り込みました。特殊フィルムの開発会社であるメビオール社からの技術協力を得るなど社内外の関係者を巻きこみながら事業化を進め、翌2016年11月に先端農業技術「アイメック®」を使用して栽培したトマトの販売を開始しました。

今回はBConがお手伝いした新規事業プロジェクトの事例をご紹介します。
常務取締役総務部長にして当事業の担当役員でもある寺地孝幸様と本事業の発案者である上山隆憲様に当時のお話を伺いました。また代表取締役社長の大石和弘様より新規事業への思いとBConへの今後の期待をお聞かせいただきました 。

JR九州バス株式会社

※以下のサイトから当事業の甘くて濃いフルーツトマトが購入できます。
BUS TOP FARM:https://www.bustopfarm.com/

※アイメック®はメビオール株式会社の特許技術です。

背景

Qなぜ新規事業に取り組むことになったのですか?

JR九州バス株式会社 常務取締役総務部長 寺地 孝幸様

常務取締役総務部長 寺地 孝幸様

寺地様 バス事業だけでは限界がある、と感じていました。路線バス 事業は損益という面では不採算事業です。しかし乗り合いの路線バスは地域住民の方々の生活を支える足として運行を継続する必要があります。そのため国や県から当社が補助金を受けながら運行を続けている状況があります。
 実際のところ当社の主な収益事業は建物や土地を貸す不動産ビジネスです。既存の不動産物件は年を追うごとに価値が目減りしていくことは明らかで借り手も減少しています。バス事業は黒字化が難しく、不動産事業も見通しが悪い。この状況においてこのまま手をこまねいて見ているわけにはいかない、という危機感がありました。そこで社内から15人を選抜し、ワーキンググループを結成して新規事業プランを作ることになりました。

上山様 自分たちの会社の将来はこのままで大丈夫なの?!という意識がありました。ワーキンググループのメンバーに選ばれた社員は自分を含め40代前後の社員でした。自分たちはあと20年この会社に勤めます。20年後自分たちが60歳、65歳になった時にこの会社で働いて良かったね、と言いたいと思っています。だったら今自分たちが行動を起こさなければならないと考えました。

新規事業プロジェクト

JR九州バス株式会社

QBCon講師と共に取り組んだ新規事業プロジェクトについて、印象に残っていることを教えてください。

寺地様 BConにはもともと営業所の支店長研修やバス乗務員のCS研修でお世話になっていました。上記の問題意識をBConの担当営業や講師に相談して、プロジェクトに関わってもらうことになりました。毎月1回のワーキンググループを半年にわたって実施し、事業プランを作り、役員陣にプレゼンし実現化に向けて1つを選ぶというものです。
初回はセミナー形式で情報提供してもらいました。BCon講師から「このような先駆的な取り組みがある」「こういうものがうまくいった」とか「このような失敗がある」など豊富な事例を提供してもらいました。
特に印象に残っているのは「わかりましたか?では次に進みます。」というような丁寧なペースで進むわけではないということです。ビジネスですからそんな悠長なことは言っていられません。
参加者は何を参考にするのか主体的に情報を選択しながら、必要な考え方や情報を身に付けていきました。
セミナーの後、メンバーには次回までに事業のアイディアを一人50個出すよう宿題を出されました。最初は50個なんて無理だ、という反応でした。しかし“なんとなくインターネットを見るのではなく、どういう見方をすればいいのか”“アイディアと探しにいく方向や場所はどういう切り口があるのか”など、BCon講師が勘所を教えてくれました。

事業プランを作るにあたって、こうすればうまくいく、という方法はありません。まずは「量は質を生む」という考え方を大切にして、どんどんアイディアを出す勘所を教えてもらったのは効果的だったと思います。

JR九州バス株式会社 アグリ事業担当部長 上山 隆憲様

アグリ事業担当部長 上山 隆憲様

上山様 1回目、2回目のワーキンググループでメンバーが出したアイディアは 似た感じになってしまいました。バス事業に結び付けなければいけないという固定概念があったと思います。たとえばバス修繕ビジネスとか、バスを使った観光ビジネスとか、バスから離れられない傾向がありました。そんな時にBCon講師と役員から「もうバス事業は気にしなくても良いから、もっと発想を広げてみよう」と投げかけられたことをきっかけに、自分もほかのメンバーもバス事業とはまったく関係ないアイディアを考えてくるようになりました。たまたま私は学生時代に茶畑でアルバイトした経験があって農業に親しみを覚えていたことと、何年か前にフィルムでトマトを作るというニュースをみた記憶がありました。ネットで調べたら特殊フィルムを使って土のないところでトマトを栽培する面白い技術があると知って、この事業を発案しました。

寺地様 各回のワーキンググループの終わりには次回までの宿題がたくさんでました。

  • ・このタイミングまでに〇〇のアイディアを出してください
  • ・次までに○○を調べてきてください
  • ・実現に向けた収支計画書を作ってください、など

また、「社員に対してどういう関わりをもつ必要があるか」「地域に対してどういう見せ方をするか」といったビジネスを成功に導くためのポイントを押さえながらワーキンググループは進みました。

上山様 ワーキンググループの中でBCon講師や役員から「事業プランは具体的にする必要がある」と言われていました。そこでフィルムの開発者に何度も電話して詳しい情報を教えてもらったり、フェイスブック上でこのフィルム技術を使って農家を始めたばかりの人が見つかったので、話を聞きに行くなどして計画に現実味を持たせていきました。

寺地様 ワーキンググループの最終回では15人がそれぞれ1案をプレゼンテーションしました。そして15案の中から、トマト事業を含む3つのプランに絞り込みました。

Qトマト事業に決めた理由は何ですか?

JR九州バス株式会社

寺地様 トマト事業を選択したのにはいくつか理由があります 。

  • ・農業と沿線地区の親和性

    我々の路線バス沿線地区には農業をやっている方が多く、農業に入っていくのが地域にとって自然で受け入れやすいだろうと思いました。

  • ・新技術の農業で地域活性化

    九州の農業は盛んですが、栽培を計画したのと同じ品種のフルーツトマトを作っているところが少なく競合しないというのも理由です。またフィルムを使ったトマト事業はほとんどの地区で初導入となり、新しい技術は話題を集め地域の活性化につながります。新技術かつ初挑戦なので初めから大量生産はできないだろうと考えていました。現実的に新規事業に割り当てられる予算や人員の規模からみても、高品質な農作物を少量生産するというは当社の身の丈にあっていると判断しました。

  • ・雇用の創出

    この事業のために社員やパート従業員を採用できると考えました。また特殊フィルムアイメック®を使用した農作業は農業未体験でも取り組める点が魅力的でした。農業未経験でも若くてやる気のあるスタッフを招き入れることができ、生産量を拡大するとともに若者の雇用を増やして地域に貢献できます。

これらの理由から総合的に地域貢献を具体化していけると結論づけ、特殊フィルムを使ったトマト事業が選ばれました。

事業化までの道のり

さて、BConが関わった新規ビジネスプロジェクトは事業プランが決定された段階で終了となりました。BConの関わりもここまで、です。以下ではその後の事業化への道のりをお聞きしています。

Q最終プレゼンの後、事業化は順調に進みましたか?

JR九州バス株式会社

寺地様 まったく順調ではありませんでした。まずJR九州グループ 会社の中でバッティングするという反対意見にぶつかりました。実は数年前に複数のJR九州グループ会社がそれぞれ持っていた農業部門をあつめて農業専門の会社(JR九州ファーム株式会社)を作ったのです。再び個社が農業に参入するのは流れに逆らっているように見えます。当初、親会社であるJR九州本体からは期待する返事がもらえませんでした。そこで社長とわたしでJR九州の会長のところへ直談判に行きました。すると「面白いやないか、やれや」と二つ返事でOKがもらえたのです。その後バッティングすると危惧されたJR九州ファーム株式会社の既存ハウスを活用できることになるなどピンチがチャンスに変わりました。

上山様 作付けまでも山谷ありました。作付けのための土地は7月末までJR九州ファーム株式会社が作業をしていて、そのあとを我々が借りる契約でした。しかしその土地で農業を始めるためにはJAや農業委員会や土地の地権者などさまざまな関係者の調整が必要で、正式に許可がおりたのは8月5日でした。そこからハウスの中に残されていた鉄骨を取り除き、850枚のコンポジットパネルを敷き詰めるリフォーム作業を突貫工事で行いました。真夏の炎天下での作業だったので体力的に厳しい作業でした 。

JR九州バス株式会社

<整備中のビニールハウス>

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<整備後のビニールハウス>

寺地様 上山からは発案者として現地に張り付きたいと言われましたが、彼には本業の企画部の仕事もあります。現地専任スタッフとして30代の夫婦二組を社員として採用しました。子供も連れてわざわざ他の土地から引っ越してきてもらいました。今回の栽培方法に必要なのは「愛情」です。というのも現場で作業するスタッフには自分の子供に接するような愛情深い関わりが必須だと思っていました。「水が欲しいのか?」「食べ過ぎやないか?」「葉っぱの裏に何かついとるぞ」というように一株一株よく見て、物言わぬ植物だけどその子たちが何を言おうとしているのかを分かろうとする人たちに来てもらえました。

上山様 2016年11月に初収穫を迎えました。初回にしては驚くほど良いトマトができました。普通のトマトの糖度は6度程度ですが、このトマトは糖度が9~13度あります。いつまでも口の中に濃い甘みが残って、フルーツのようです。農業未経験の自分たちでもここまでできたとうれしく思います。ぜひ多くの人に召し上がっていただきたいです。

寺地様 私の信条は「一生懸命やっていれば道は拓ける」です。これまで本当にたくさんの人に助けられました。困ったら誰か出てきて手伝ってくれる、天候も味方してくれる、偶然良い情報が舞い込んでくる、そのような体験の連続です。

今後への期待

2016年末に紆余曲折の末、トマト事業を開始することができました。ようやくスタート地点に立ったと思っています。当面の目標は単年度黒字化できるよう安定的に収量を確保することです。そのため、事業規模を拡大するための新しいビニールハウス建設候補地の検討などを行っているところです。

代表取締役社長 大石 和弘様
代表取締役社長 大石 和弘様

当社はバス運行事業者として安全安心をとても大切にしています。その反面 新しいことに挑戦する気概や風土が育ちにくい部分もあります。その中でも殻を破って、アイディアをだし、挑戦する組織にしていきたいと思っています。今回の事業は良い呼び水でした。私を含め役員層は鉄道事業出身者が多く、既存事業を安定的に運営することには長けていても、事業創造の経験はあまりありません。BConに手伝ってもらってアイディアを数多く出し、それを絞り込んでいくプロセスやコツを学ばせてもらいました。BCon講師の「新規事業に必要なのは情熱」という言葉は本当にその通りだと思います。この事業がスタートできたのも担当者の情熱があったからこそです。

今回BConには事業創造で力を発揮してもらいました。以前よりBConにはサービス品質を高めるためのお手伝いをしてもらっています。本業のバス事業において安全と並んでもう一つの大切な基盤はサービスです。こちらも引き続きご支援よろしくお願いします。

担当コンサルタントより

JR九州バス様から新規事業創出についての相談を受け、運転士の方から内勤の方、男性も女性も混在したワーキンググループによるプロジェクトをご提案し、15名のメンバーが集まって新規事業プロジェクトがスタートしました。

最終案に選ばれたトマト事業がさまざまなハードルを乗り越え実現に漕ぎつけたのは、プロジェクトに関わった方たちの「情熱」が連鎖したからです。アイディアを磨き上げるために相互に厳しい指摘をし合ったプロジェクトメンバーの「情熱」、指摘を糧に何度もアイディアを練り直した提案者の「情熱」、アイディアを現実にするため精力的に社外と交渉された役員の「情熱」、そしてすべての「情熱」を受け止め、親会社の会長に直談判し、ゴーサインを取りつけた社長の「情熱」。どれか一つが欠けても実現しなかったでしょう。

JR九州バス様は、安全と顧客満足向上を地道に追及して実践する姿勢が一貫しています。2016年は熊本地震で大打撃を受けながらも、その姿勢は崩れることなく貫かれました。JR九州バス様の「情熱」と「一貫した姿勢」を、社員や顧客、地域社会の感動と笑顔につなげるお手伝いができてとても光栄に思います。

編集後記

新規事業創造プロジェクトはBConが多くお手伝いする案件の一つです。企業が持続的に繁栄するために既存事業の充実とともに、新規事業が大切だと分かってはいても、何をどうすればよいのか本を読んでも今一つ具体的なイメージが持てないビジネスリーダーの方もいらっしゃるのではないでしょうか?

当社でも新規事業が経営課題に挙がっている、というお客様は一度ご相談ください。数多くの企業をお手伝いしてきたBConが時に専門家として理論と事例を伝え、時にファシリテーターとして議論を促進するなど、さまざまな役割をとりながら伴走し、新規事業創造をご支援します。

 

この事例で活用した主な商品・サービス

新規事業
事業創造、ビジネスモデルイノベーション、事業戦略、マーケティング戦略、投資収益性に基づく判断などに関する実践的なスキルを習得します
イノベイティブ・シンキング
思考を妨げる箍(たが)に気づくとともに、革新的思考発揮のために各種技法を習得します

 


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