組織のエンゲージメント向上につながる7つの観点

ビジネスにおけるエンゲージメントとは、従業員と企業の関係性を表す言葉であり、エンゲージメントが高いということは、従業員と企業が結束し互いに高め合える対等な関係、状態のことを指します。

エンゲージメントを高めることは、従業員にとっても企業にとっても双方に大きなメリットがあり、今後永続する企業を目指す上で欠かすことのできない課題となっています。

  • ビジネスにおけるエンゲージメントとは「従業員と企業の関係性」を表す言葉である
  • エンゲージメント向上が企業のパフォーマンスアップにつながる
  • エンゲージメント向上には「処遇改善」だけではなく「職場の人間関係」「自己成長実感」などの7つの観点が重要である
目次

    エンゲージメントとは

    ビジネスにおけるエンゲージメントという言葉は「従業員と企業の関係性」を表す際に用いられます。そして、働く人々のエンゲージメントが高い企業では、一人ひとりが組織や仲間に愛着心を抱き、貢献意欲や情熱を持って仕事に取り組んでいる状態であるといえます。

    -従業員と企業の関係性の変化

    これまでの従業員と企業の関係は右の図のように、従業員は企業に従属するという主従の関係でした。

    この関係の中では従業員の企業に対する(ロイヤルティ:忠誠心)を高めることが重要だと言われてきました。

    しかし、働き方の多様化や「働くこと」に対する価値観※が変化している中で、これからは左の図のように従業員と企業は結束し互いに高め合う対等な関係であることの必要性が増してきました。

    裏をかえせば、従業員のエンゲージメントを高めることができれば、一人ひとりの能力を十分に発揮できる土壌が整うことになります。

    ※「働くこと」に対する価値観の変化

    ・1つの会社で定年まで働くという価値観が薄れている
    ・自身のキャリアや仕事のやりがいについて、自律的に考え、より充実するために行動する人が増加している
    ・ビジョンを達成でき、働きがいを感じられる企業に転職することが特別ではなくなってきている

    エンゲージメント向上が組織のパフォーマンスに影響する

    従業員エンゲージメントについて80年以上研究している米ギャラップ社の調査データでは、エンゲージメントが組織のパフォーマンスに大きく影響することを示しています。働く人々のエンゲージメント指数が高い上位25%の組織では、下位25%の組織と比較して生産性、収益性、品質、顧客ロイヤルティといった業績に結び付く要素においてプラスの数値を示しました。

    また、安全事故や離職率についても少なくなる傾向を示しており、こういった問題を減少させる効果があることが分かっています。

    したがってエンゲージメントを向上させることは、企業にとって大きなメリットをもたらします。優秀な人材が定着し、生産性や品質向上においてもポジティブな影響をもたらします。

    エンゲージメント向上に関わる7つの観点

    エンゲージメントを向上させるために弊社では下図のような7つの観点から組織全体のエンゲージメントととらえています。

    ①事業の将来性
    事業の将来性に対するポジティブなイメージを社員が持てている。組織の理念に共感し、貢献し続けたいと強く思う。

    ②仕事の意義・貢献
    顧客、組織などに対して、現在または将来への貢献を実感・確信できている。結果、仕事自体に意義を感じることができている。

    ③自己成長実感
    現在の仕事を通じて成長を実感できている。成長のための機会が社内に豊富にあり、活用できると感じている。

    ④上司の支援
    上司からの期待を感じている。自分の努力や貢献を認めてくれている。自身の成長のために、上司が指摘や支援を積極的に行ってくれる。

    ⑤人間関係
    職場の人々はお互いを気に掛けていて、組織の中には心から信頼できる人が何人かいる。職場を越えていろいろな人と関係を築いている。

    ⑥多様な働き方
    国籍、性別、年齢、健康状況、家庭状況(介護や育児)などに対しても不安にならず、多様な働き方の選択肢があると感じている。

    ⑦処遇の公平感
    努力や成果に見合った処遇がなされている。また、一時的な不公平があったとしてもそれを是正できる可能性を感じている。

    会社の制度や仕組みといった側面だけでなく、職場の人間関係などの側面も含めた7つの観点から、組織の課題を解決していくことで、エンゲージメントを向上させる効果が期待できます。

    もちろん最終的には全ての観点で課題を改善していくことが望ましいですが、それぞれの組織によって抱えている課題やその優先度合いも異なってくるため、少しずつでも取り組みを進めていくことが重要です。

    お手伝い事例

    ここでは、7つの観点のうち、いくつかにおけるBCon®のエンゲージメント向上のお手伝い例についてご紹介していきます。

    社員のエンゲージメントの現状把握

    何から手をつければよいのかの優先順位付けをするために、現状把握を目的とした意識調査が有効です。エンゲージメントサーベイは、上で挙げた7つの観点について、現在、組織の従業員が感じている認識を明らかにします。現状把握を行うことで議題を話し合う材料となり、データを基に取り組みの優先順位付けに役立てることができます。

    対 象:組織の従業員(全員)
    方 法:Webを用いたアンケート形式
    期 間:およそ2~3カ月(事前準備~サーベイ結果の報告会まで)

    従業員が感じる幸せについての定義付けと指標づくり

    従業員が幸せだと感じる働き方や職場環境を定義し指標化します。また、その策定に向けた対話の過程を通して自分たちの幸せについて考える機会を設け、エンゲージメントを高めます。自身が組織に所属していることで満たされていると感じる出来事から掘り下げ、幸せという漠然とした概念を具体化していきます。

    対 象:選抜メンバー
    方 法:プロジェクト形式
    期 間:およそ7~8カ月(プロジェクトミーティング10回程度)

    さらにその指標を用いて従業員の認識を測定することで、改善活動に役立てることができます。

    ポジティブリーダー養成

    管理者を対象とし、職場で共に働く人々が未来に向かって夢を抱き、前向きに行動し成長することを支援するポジティブなリーダーを養成します。「ポジティブ・エネルギー」を持ったリーダーがいることで結果的に業績向上、離職率低下、顧客満足度の向上など、エンゲージメント向上につながった例もあります。ポジティブリーダー養成は、そのようなリーダーを養成する研修プログラムです。

    ※ポジティブ・エネルギー…人と人との関係性の中で生まれる力であり、活動したり、何かを創り出したりするときの源となる力のこと。
    例)この人と関わっているとなぜだか元気づけられる、勇気づけられる

    対 象:管理者
    手 法:集合研修(オンライン研修も可能)
    期 間:2日間+1日間

    ※ポジティブリーダーシップについて、さらに詳しく解説している動画はこちらをご覧ください。

    BCon®のアプローチにおける強み

    ポジティブ心理学を基にした科学的なアプローチ

    BCon®は、国際ポジティブ心理学会(International Positive Psychology Association略称IPPA)への参加に加え、一般社団法人日本ポジティブ心理学協会(Japan Positive Psychology Association略称JPPA)の会員組織として最新の情報を得ています。

    そこで得た知見やつながりから、ポジティブ心理学をベースとしたプログラムで教育やコンサルテーションが実施可能です。

    ※ポジティブ心理学…「どのようにすれば、幸せでより良い人生を送ることができるのか」について、科学的に研究する学問で、個人、組織、社会の三つの観点からの幸福に焦点を当てた学問です。

    組織開発における最先端ノウハウの活用

    国内外に研究者や実務家のネットワークを有しています。常に最新の研究やテクノロジーとも連携しながら、顧客組織の「自ら変革し続けられる組織づくり」を長年支援しており、拠点開発や職場開発(OD)の手法を用いた組織変革プログラムが豊富にあります。

    仕組みづくりの実績も豊富

    人事制度、教育体系など、制度や仕組みづくりに関する豊富な実績やノウハウがあります。また、それらを実現するためのタレントマネジメントシステムの活用支援も可能です。

    他流試合コースの充実

    リーダーシップの発揮が期待される役員や管理職向けの他流試合コースが充実しています。

    まとめ

    冒頭で触れたように、働き方、働く人々の価値観、従業員と企業の関係性などの変化といった背景から、エンゲージメントの向上は企業にとって重要な課題となっています。

    エンゲージメント向上に必要な7つの観点と具体的な3つの施策として「社員のエンゲージメントの現状把握」「従業員が感じる幸せについての定義付けと指標づくり」「ポジティブリーダー養成」をご紹介しました。

    企業全体に対して、あるいは従業員に対して行うなどさまざまなアプローチ方法がありますが、それらを通してエンゲージメントを向上させることは、従業員にとっても企業にとっても大きなメリットがあります。

    BCon®ではこれまで培ってきたノウハウやポジティブ心理学をベースとした科学的なアプローチにより、さまざまなサポートが可能です。こちらのフォームからご相談ください。

    メールマガジンを登録

    組織開発や人材開発の最新の情報やソリューションのご案内をお送りしています。

    オススメのコラム

    オンライン研修について知っておきたいこと

    人材育成における研修の手法が、大きく変化しています。テレワークが普及し、研修もオンラインで実施することが多くなりました。しかし、これまで対面形式で行ってきた研修をオンラインに切り替えることに、不安を感じている組織も多いのではないでしょうか。

    ビジネスコンサルタント(BCon®)では、2020・21年度の2年間に、オンラインで12000件以上の研修やコンサルティングを実施してきました。そこで培った知見やノウハウを基に、このコラムではオンライン研修の特長や、集合研修との違い、オンライン研修の効果を高めるポイントについてご紹介します。

    働き方改革に重要な2つの観点 その① 生産性向上とは

    日本で「働き方改革」が話題に上るようになって久しいですが、DXや競争環境のさらなる激化によって、ますます重要性が高まっています。

    働き方改革を推進するに当たっては、2つの観点を持つことが重要です。1つは、組織の労働生産性を高める「生産性向上」という観点。そしてもう1つが、業務に取り組む従業員の幸福感や充実感を指す「ウェルビーイング」という観点です。

    今回は特に「生産性向上」に焦点を当て、その概要を押さえつつ、取り組みの進め方をご紹介します。

    サービス化:第1回 企業と顧客が共創する、新たなビジネスモデルへの挑戦

    産業界は、無駄な消費・消耗を抑えてサステイナビリティー(持続可能性)を目指す、変革の時を迎えました。そして市場・消費者はモノ(製品)からコト(経験)、さらに「イミ(価値)消費」の重視へと価値観を変化させています。こうした変化の推進力となっているのが「サービス化(サービタイゼーション Servitization)」です。従来とは異なる視点・概念に基づき、IoTを活用することで、新たなビジネスモデルの創出を目指す取り組みです。

    このコラムシリーズではサービス化をテーマに、基礎的な考え方を整理するとともに、事業のサービス化に向けたアプローチを探ります。第1回となる今回の記事では、サービス化の基盤となる考え方とIoTの関係についてご紹介します。