BCon Info 8月号 変化のための「矛盾」マネジメントとは

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2015/8/25━━┓
◆ 変化のための「矛盾」マネジメントとは ◆
┗━━━━━━━━━━━━━ BCon Information ━━┛

今月は、Dialogic Organization Development Conferenceという対話型ODの
カンファレンスとAcademy of Managementという経営学の会議に参加するため
カナダのバンクーバーに行ってきました。
驚いたことに、バンクーバーには人口1人あたりの鮨屋の数が日本よりも多い
そうです。それを聞いてちょっとワクワクしたのですが、
店舗内を覗いてみるとカリフォルニアロールのようなものがおいてあったり
するので、江戸前鮨を期待していた私は「あれ?」と、思ってしまいました。
 

街を見渡してみると東洋系の方やインド系の方など本当に多様な方が暮らして
いるのが分かります。お店もベトナム風、タイ風、和風、オーガニックメニュー
中心の食堂など、とにかく様々です。
人種も文化も混ざりあいながら作られたダイバーシティな街なんだなと感じま
した。そして、こういう多様な街で私の好きな「江戸前」でないことにがっかり
するより、違いを楽しんだ方がお得だなと感じました。
 

今回はカンファレンスを通して、気付いたことを書いてみたいと思います。

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◆ 経営学の中心テーマは矛盾? ◆
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カンファレンスの中で頻繁に聞いた単語があります。
それは

contradiction = 矛盾
paradox    = パラドクス
duality    = 二重性

といった言葉です。
 

これらの言葉を聞いた時にすぐに思い浮かんだのは「解消しなければならない、
良くない状態」といったイメージでした。
 

ですが、カンファレンスでは、このような状態を変革の原動力とするために
マネジメントをどのように行うかが議論の焦点でした。
「矛盾」を破壊的なものとして取扱わないで、むしろそれを包含していくこと
で生まれる緊張と衝突の中から新しいものを生み出していこうというものです。
 

これを聞いて思い出したのは、地理学者であった故・鈴木秀夫さんの
『森林の思考・砂漠の思考』(1978年)です。
 

鈴木さんによると、
西洋の論理は「ロゴスの論理」と表現され「善」か「悪」か、常に二者択一を
迫られる論理。
一方、東洋の論理は「レンマの論理」と表現され「善」は「悪」があって初めて
存在するという考え方で、全てのものは互いに相まって存在しているという考え
方だそうです。
 

カンファレンスで聞いた言葉は、この「レンマの論理」を象徴するもののように
感じました。発表者の大半が西洋の大学から来られている中で、東洋的な
考え方を経営に活かしていこうとする試みがとても面白いなぁと感じました。
それと同時に、東洋の論理を活かして経営しようということは、既に日本人で
ある私たちは「できている」のか?と疑問に思いました。
 

日本人は「善か悪か」や「勝った負けた」といったロゴスの論理ではなく、
レンマの論理で曖昧さを許容できる民族だと言われることがあります。
アンケート調査をしても「どちらでもない」という項目に○を付ける人が多いの
もその代表的な例として知られています。
 

だからといって、本当に矛盾を変革につなげるマネジメントができるかというと
必ずしも直接的には繋がらないとも感じます。
 

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◆ Book of Change 変化書 ◆
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そこでもう1つ思い浮かんだのは、『易経』などに書かれている陰陽の概念で
す。『易経』は英語で『Book of Change』と訳されていますが、変化の予測を
体系化した古典です。占いの書と勘違いされることも多いのですが、変化を予測
することで、占いをしなくとも身の処し方を知ることを目的に書かれたものだと
私も最近知りました。
 

陰陽の概念で大事なポイントは、陰と陽は別々のものではないということです。
つまり1つのものに、陰の側面と陽の側面があるという考え方であって、白黒
はっきりさせる「ロゴスの論理」とは違うものです。
1人の人間を例にとっても、長所(陽)だけでなく短所(陰)もあるということ
と同じで「レンマの論理」と同じです。
 

そして、この陰陽の概念でとても面白いのは、お互いに常に対立しているけれど、
別々のものとして独立した形で安定的に固定化しないところです。
お互いに混ざり合おうとして、全ての変化を生じさせ、新たな進化につながると
『易経』には書かれています。
 

私自身を振り返ってみると、社内外でコミュニケーションをとる人が固定化され
ていることに気づきます。意識してというよりも、自然と居心地のよい同質性を
求めているのかもしれません。
そして、いつの間にか意見がなかなか一致しなかったり、葛藤が生まれたりする
異質な人とは、たとえ距離的に近いところにいたとしても疎遠になってしまい
ます。そして、一緒に仕事をすることになっても、無難にコトが進むようにだけ
考えて行動してしまいます。
 

これでは、「許容」というより「どちらでもいい」「どうでもいい」という態度
で、何も変化や新しいことを生み出さない行動だと気づかされます。
 

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◆ 曖昧さの許容の本質とは? ◆
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変化を生み出すための矛盾や二重性の許容というのは、それを分けて扱うこと
ではありません。
 

矛盾したものや異質なものが、日常的にコミュニケーションをとる際に起こる
「葛藤」や「緊張関係」を扱うことなのです。
そしてこれを収めようとしたり、丸めてしまうのではなく、違いがぶつかること
で生み出される新しいアイデアを受け止める準備をしておくことなのではない
でしょうか。
 

とは言え、葛藤は無理やり起こすものでもありません。
 

チームビルディングをする時に、チームがどのようなプロセスで成長していくか
ということを心理学者のタックマン※は、4つの状態として表現しています。

1.Forming(形成期)・・・互いをよく知らない時期
2.Storming(混乱期)・・・価値観がぶつかり合う時期
3.Norming(統一期)・・・互いの考えを受容し、関係性が安定する時期
4.Perfoming(機能期)・・チームの一体感が生まれる時期

 

この中の2.Storming(混乱期)に葛藤が起こりにくくなるケースとして
1.Forming(形成期)に目標を共有していないことが挙げられます。
 

私の経験したあるプロジェクトでは、リーダーもメンバーもそのプロジェクトで
何を実現させたいのか目標が明確にならないままスタートしたことがありました。
その結果、メンバーそれぞれが好き勝手なことをして、プロジェクトは成果も
得られず尻切れトンボで終わったのです。
 

ですから、組織は大きな目標を共有することが大切です。
その上でどのような変化を起こしていきたいか、どのように進めていきたいかを
本気になって対話していくと、自然と価値観がぶつかり合いながら、常に進化
していける組織になるのではないでしょうか。
 

※Bruce W. Tuckman(タックマン)は1965年に『Development Sequence
in Small Groups』の中で、4段階のモデルを示しました。その後、1977年に
『Stages of Small-Group Development Revisited』でモデルに
5.Adjourning:散会を加え、現在では5段階となっています。

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