2015年7月発行 BCon Info 7月号 「確かに私には○○に見える」でも・・もしかしたら?

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 ◆「確かに私には○○に見える」でも・・もしかしたら?◆
┗━━━━━━━━━━━━━ BCon Information ━━┛

先日、友人のオフィスで楽しそうな絵本を見つけました。

『りんごかもしれない』 ヨシタケシンスケ著(2013) ブロンズ新社

テーブルの上にりんごが置いてあるのをみつけた主人公の男の子が
「……でも、……もしかしたら、これはりんごじゃないかもしれない。
 もしかしたら、大きなサクランボの一部かもしれないし、
 心があるのかもしれない。
 実は、宇宙から落ちてきた小さな星なのかもしれない……」

ここまで行く?と突っ込みたくなる程、果てしなく想像を広げていくお話し
でした。

今回は、2つのバイアスの相乗効果で対立関係に陥っていくプロセスをご紹介
しながら、「・・・じゃないかもしれない」と立ち止まって考えてみることの
大切さについて感じたことをご紹介します。

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  ◆ こんなに頑張っている自分・・・なの? ◆
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先日、道徳心理学の教授からこんな話を聞きました。
MBAの学生に対して、「自分自身のグループへの貢献度合いは何%か?」とアン
ケートを取ると、グループメンバーの合計は平均139%になるそうです。
夫婦の家事分担にも当てはまるそうで、夫婦の合計は平均120%以上になると
いいます。

実験的に私の配偶者に聞いてみると、自信満々の顔で「70%」と答えました(笑)。

ここから分かることは、人は無意識に自分の貢献度合いを過剰に多く見積もって
しまう傾向があるということです。
これを「自己奉仕バイアス」というそうです。

実はこの「自己奉仕バイアス」が原因で気付かないうちに互いに敵意を持って
しまうことがあるようです。

例えば、職場に「自分がとても頑張っている」ことを主張する人がいたとします。
この方は、恐らく「他の人よりも自分の方が頑張っているんだから認めて!」と
いう思いを持っているでしょう。

一方、同じ職場の他の人はこのような状況に対して「そんなに頑張ってないのに
自己主張が激しいな・・・」と思うかもしれません。

お互いがお互いに、自分よりも相手は頑張っていないと考えている結果です。
こうして、何か顕在化した問題があるわけでもなく、喧嘩があるわけでもない
のに職場の雰囲気は悪くなり、ギクシャクします。

プライベートでもこのような話は良く聞きます。
夫が子育てや家事を少し手伝っただけでも、猛アピールしてくることに妻がうん
ざりしたり、妻は自分がやっていることを夫に認めてもらえずに、イライラと
したり・・・。

皆さんはいかがでしょうか?
残念ながら、私自身にも思い当たる節があります。
もしかすると、身の回りにある対立関係や関係の悪さというのは、誰のせいでは
なく、人の性格の悪さの問題でもなく、人の脳が引き起こす「自己奉仕バイアス」
に起因しているのかもしれません。

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  ◆ 関係を悪くするバイアスのスパイラル ◆
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実は、これに輪をかけて自己主張を激しくしてしまうバイアスも存在するのです。
それが「確証バイアス」と呼ばれるものです。
自分が信じたいことの証拠ばかり集め、それ以外の事実は目に入らず、記憶に
残らないのです。そして、そのバイアスに気づかないまま「私だけは、物事を
あるがままに見ている。だから自分の主張は正しいのだ」という感覚に陥って
しまいます。

ある実験では、「自己奉仕バイアス」について学習しても「相手がそのバイアス
に陥っているに違いない」と考え、相手が「バイアスに陥っている証拠」を探す
ばかりで、自分の考えを修正しないという結果もあります。

お互いに自分が正しいと信じて主張をすると、ますます関係の悪化に拍車をかけ
てしまいます。

本来、集団生活、社会生活の中で生き残る上で進化してきた人間の脳ですが、意
外な落とし穴があるのですね。

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  ◆ バイアスを乗り越え、協働するには? ◆
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分かっていても、陥ってしまうバイアスですが、これを克服した実験があります。

それは、「バイアスについて勉強する」+「自分の主張の弱点をエッセイにする」
ことです。2段階で自分の主張が偏っているかもしれないことを知り、そして考える
機会を与えたときに、人は公正に物事を捉え始めたというものです。

このポイントは「自分の主張の弱点をエッセイにする」ところにあります。
つまり、自分自身の性格を攻撃されないという安心感があるということです。

自分の考えが自分にとって甘い構造になっている事実を突きつけられると、どう
しても「もしかしたら、私って性格が悪いのかな・・」と感じ、そういう自分に
目を向けるのが嫌になってしまいます。

そうではなく、「自分が主張していること」そのものに焦点をあてて、その弱点
を分析してみることで、バイアスが解消されやすくなるのです。

対立が深まり、感情的になった状態では、なかなか主張を覆すのは難しいので、
日頃から「バイアス」があるということを意識し、「私の考えこそが正しい・・
ではないかもしれない」と、すぐに状況を判断しない練習をすることが様々な
対立を回避し、協働するには必要なのかもしれません。

特に「正義」や「道徳」のように、「絶対に正しいんだ!」という主張を掲げる
場合、バイアスに盲目的になり、一見合理的な論理を強引に展開するケースが多
くなるようです。

冒頭の絵本の男の子のように、「りんご」だと思っても、一瞬立ち止まって、
「・・・かもしれない」を習慣にしてみると違った関係を構築し、違った結果を
出すことが出来るかもしれません。

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