計画的な人材育成で組織文化が変わりはじめる 〜中期経営計画と連動した階層別研修〜

計画的な人材育成で組織文化が変わりはじめる
〜中期経営計画と連動した階層別研修〜

組織名
ナミックス株式会社
https://www.namics.co.jp/
カテゴリー
  • 人材開発

※本事例は2016年5月の取材に基づき作成しています。事例内容および部門・役職等は取材当時のものを掲載しています。
2016年8月掲載

社員が充実感を持ち 幸せを感じる会社であるために

今年、創業70周年を迎えるナミックス株式会社様は「2015年度 グッドカンパニー大賞」のグランプリを受賞しました。“社員が幸せを感じること”を重視し、”感受性”を持って仕事ができることを大切にしています。そのために必要な学習や気づきの場を計画的に設けており、ビジネスコンサルタント(BCon®)も、階層別研修のお手伝いをしています。 今回は人財育成にかける想いや組織の変化についてのお話をうかがいました。

※本事例記事を紙面でご覧になりたい方はこちら

「Small but Global」をモットーに
「オンリーワン・ナンバーワン」の技術で国際企業を目指す

ナミックス株式会社様はエレクトロケミカル材料の研究開発、製造、販売をしています。新潟に本社を置き、日本全国はもとより、海外各国で事業を展開しています。
導電・絶縁材料のパイオニアとして、私たちの生活の身近なところでもスマートフォンやテレビ、パソコン、自動車などの中で、用途別にその技術力を発揮しています。

ナミックス様は「グッドカンパニー大賞」をはじめ多くの賞を受けられています。いったいどのような経営方針をお持ちで、どのように人財育成を展開しているのでしょうか。組織として大切にしている価値観についても教えていただくべく、今回は代表取締役社長 小田嶋 壽信様、管理本部総務G人事チームグループマネージャー 円山 誠様、同 佐藤 晃一様にお話をうかがいました。

BCon®とのご縁のきっかけ

ロジカル思考の社員が多いからこそ、 行動科学・心理学がベースのBCon®を人材育成のパートナーに

代表取締役社長
小田嶋 壽信 様

現在当社は3ヵ年の全社中期経営計画と連動させて、人財育成を実施しています。
この仕組みができたのは、2009年です。その前も教育は行っていましたが、階層ごとに区切られていたり、単年度ごとに計画したりしていた教育だったので、全社での系統的な育成計画はありませんでした。
2010年から計画的な教育を開始、2011年度からは中期経営計画の方向性とその中の人事・教育分野の主要課題に基づいて、人財育成計画を策定するようにしました。今はかなり計画的な人財成長の流れができてきているように思います。

教育体系の実現には、昔から当社が重きを置いている「人としての感受性」「チームワーク」「人間関係」の考え方をうまくコーディネートできるコンサルタント会社・教育ビジネスの会社からサポートを受けようと考えていました。

そこで行動科学・心理学をベースにしているBCon®をイメージしたのです。BCon®は何をやるにしてもモデルを元に話してくれるので、ロジカルな思考を持つ社員への納得感が高まるのではないかと思ったからです。
また、BCon®はスキル習得・思考変革だけではなく、組織風土の改革も得意なので、教育を起点にさまざまな変化を起こせるのではないかと期待をしました。

教育体系の骨組みは誰でも作れるので、実際の中身が重要だと考えています。その中身を一緒に構築してくれるパートナーとしてBCon®だったら実現できると思い、全面的にご相談しました。それが2009年のことです。

BCon®を介して社員への期待を継続的に伝えることで
徐々に社員の態度や意気込み、反応に変化が現れはじめた

管理本部総務G人事チーム
グループマネージャー
円山 誠様

BCon®の講師はエネルギーやインパクトがあります。講師に熱意が感じられなかったり、教科書的な内容ばかりだったりすると頭に入ってきませんが、BCon®の講師は事例も多く、熱く話すので頭と心に入りやすいと感じました。よくオブザーブをしますが、どの講師でも社員を惹きつけてくれるのでありがたいです。

2010年当時、階層別研修を開始するときには、新しいカルチャー・価値観が入ってくることに猛抵抗・猛反発する社員もいました。それがBCon®で教育を継続して7年経った今、社員の態度も意気込みも変わってきました。社員に対する期待がうまく伝わってきたのだと感じます。

例えば、今の中期経営計画内では、研修会ごとに「この研修を自身の企業人・組織人としての価値を上げるきっかけにしてください」とメッセージしてきました。ここ最近は、「やっと社長が考えていることが理解できるようになってきました」「あの当時はすみませんでした」など、感情や想いを声に出してくれるようになったことも嬉しい変化です。

“人間力”や“徳”の部分のメッセージについては、上司が言ってもなかなか効き目が無いもので、第三者から繰り返し言われないと気づけないところでもあります。そこを今はBCon®に集中的に取り組んでもらっており、翻訳機能を果たしてもらっていると実感しています。徐々にですが社員の意識が変わってきているのがその証しだと思います。

お取り組み

中期経営計画と連動した人財育成計画の策定と展開

実際にどのように人財育成計画を立て、実施してきたかを紹介します。

まずは全階層を対象に教育の土壌づくり

2010年は教育体系展開の最初の年だったので、花火を打ち上げる意味も含めて全階層にヒューマンスキル・コミュニケーション研修(STEP1:自己理解・他者理解の重要性、STEP2:集団の中での自己理解)を行いました。当時は社員が増えて意思疎通が難しくなっていたので、コミュニケーション不足の解消が課題でした。そこで、風土の改善も視野に入れながら全階層に展開しました。

当社は先代社長からずっと“感受性“に重きを置く姿勢を大切にしています。知識があったところで気づきが無ければ知識を活かせません。事象をどうとらえるか、問題をどう認識するか、そして他者の感情をどう察知するかといったことには感受性が影響すると教えられてきました。社会の中で生きていく限り、感受性が必要です。まして仕事をするならとても重要なことだと思います。まずはその部分への土壌づくりという意味で、ヒューマンスキル・コミュニケーション研修を展開しました。


階層別TL研修のグループ討議の様子

中期経営計画と連動した人財育成計画・教育体系

その後は2011~2013年/2014~2016年の中期経営計画に合わせて教育体系を走らせています。 以下、どのように人財育成計画を策定しているか、順をおってご紹介します(※は以降の資料番号と連動)。

  1. まず中期経営計画策定の年には、社長と人事チームで人財育成に対しての方向性を擦りあわせます。
  2. 3ヵ年の人財育成における「階層区分と啓発スキル(※1)」「重点戦略(※2)」を骨子として、中期経営計画と照らし合わせながら人事チームで階層ごとの「基本構想(※3)」を固めます。
  3. 基本構想の実現方法をBCon®とも相談し、階層ごと、年度ごとに「実施イメージ(※4)」に落とし込みます。その後、実施日程などを固めていきます。
    3ヵ年でこういう人財を育てていこう、この階層にこの情報を提供していけばこう育ってくれるだろう、と想定しながら教育を組んでいます。
  4. 人財育成計画は全社員に開示しており、階層ごとに求められる能力や役割を確認できるようにしています。

一部ではありますが、2014年〜2016年度の人財育成計画資料をご紹介します。

※1「階層区分と啓発スキル」

階層ごとに啓発すべきスキルの明示をします(全7階層)

※2「重点戦略」

3ヵ年の人財育成の肝になる部分です

※3「基本構想」

重点戦略の方向性と、中期経営計画で求められている役割により、階層ごとに人財育成の基本構想を明示します

※4「実施イメージ」

年度ごと階層ごとにどのような教育の場を提供するかを検討し、必要な学習の場を準備します

【用語説明】

※1 VIA・・・ポジティブ心理学をベースに、個人が持つ24の徳性の強みを明らかにする自己診断ツール「VIA診断」のこと。VIA=Value in Action の略。VIAを活用することで自分の特有の強みに焦点を当て、強みを仕事や人間関係に活かすと同時に、エネルギーに満ち溢れ、いきいきと充足感に満ちた人生を創り出そうとするもの。

VIAプログラム

 

※2 LIFO®診断・・・行動や思考のスタイルに焦点を当て指向性を明らかにする自己診断ツール「LIFO®サーベイ」のこと。LIFO®= Life Orientationsの略。人間の行動スタイルを調査し、それを診断するツールとして開発された。自己と他者の強みへの理解を深め、個人の行動変化やタテ・ヨコ・ナナメのコミュニケーションをポジティブに促進するもの。

LIFO® (ライフォ)

計画的な人財育成による効果

管理本部総務G人事チーム
グループマネージャー
佐藤 晃一 様

当社は職場が各地に点在していることもあって、なかなか顔を合わせて話をすることができません。年1回二日間だけでも「おまえのところはどうだ〜」と話せる機会があると非常に有意義だと思います。いい会社になるためにみんなで頑張ろうね、という気持ちが彼らや彼女らから伝わってくるようになりました。積極的に研修に参加しようと思ってくれるようになったことも変化として感じます。

エレクトロニクスという最先端の事をやっていても人財育成には時間がかかります。一朝一夕に人や組織は変われません。でも、少しずつですが態度や行動が変わってきている様子がよくわかります。求められる人財として活躍してもらえるよう、毎年計画的にメッセージを投げ続けていきたいと思います。

組織開発・人材開発で大事にしていること

「自立・自動・自助」の精神で「プロセス」を重視した仕事をする

仕事人として大切にしてほしいのは、「プロセス」を重視する感覚です。

仕事は「結果」を求められるものです。しかし「結果」は突然降ってくるものではなくて、それまでの「プロセス」の積み重ねです。

何事も筋道立てて段階を踏んでやっていたかどうかが問題です。もしもいい結果が出ないならばそのプロセスに問題があるのだと思います。プロセスがいいからといって全てがうまくいくわけではありませんが、プロセスがちゃんとしてない人間にいい仕事ができるとは思えません。

当社は細かいことまで部門ごとの計画に落とし込んで進めています。3ヵ年の中期経営計画を1年ごとに落とし込み、全社方針を踏まえて各本部に展開する。各本部で重点計画に落として、部門単位で毎月1回進捗会議を持ち、全社では半年に1回会議を持つなど、緻密ですね。細かすぎて嫌だと思う人もいるかもしれませんが、そこはプロセスを重視した仕事の進め方を学ぶためにやってもらっています。経営層が会社をうまく導くためにやっている事であり、このプロセスの積み重ねが重要だと思うのです。人財育成に関しても同じことで、先々を見越して、何が必要かを考えて進めています。

そもそも、この「プロセス」が大事だと思う根底には、環境がどうであれ、変わると決意するのは自分であり、やろうと決意するのも自分だという考えがあります。誰かに言われたから仕方なくやっている仕事に責任は持てませんし、創造的な仕事もできません。上司に言われたことを何も考えずに実行することが重要なわけではなく、上司に言われたことを自分で咀嚼して、自分が納得した上で実行することが重要です。

当社の行動指針に「自立・自動・自助」があります。物事に対して自ら考え、行動し、自分の事は自分で助けられる人財として事を成しなさいということです。つまり他力本願になるのではなく、個々が自立した個人として自分の意見・行動に責任を持ち、そういう人財が力を合わせて初めてお互いのパワーが出ると考えているのです。
よって、「プロセス」を重視することで、社員にはこのスタンスを身に着けてほしいのです。

外部環境の変化に応じて「Small but Global」を追求
未来への先行投資が組織を強くする〜技術開発・人財育成〜

私は、大きい企業にしたいとは思っていません。規模は小さくても国際企業になりえるので「Small but Global」を経営指針としています。
当社は技術開発が強みで、ニッチな中でも柱商品を持っています。20年ほど前より海外からの需要が増え、2002年から比べると社員数は倍になりました。外部環境の要請・変化に応じて自社を強化していったことで今があります。

私たちの開発する製品が世の中の科学分野の先端で貢献できるということ。これは私自身にとって幸せであり、企業経営をするモチベーションです。

それを実現するための組織体制として技術開発部門は特徴的です。ここ何年かのビジネスを作り上げる部隊と5年先・10年先ビジネスを模索する部隊とに分かれています。今の利益を出すことも大切ですが、今は直接的に会社の業績に貢献できていなくても先々の利益を生み出すための体制づくりをすることも会社を支える要素の一つだと思っています。今売るための技術開発を進めるとともに、大学や専門の研究機関と連携し未来の技術を追求しているのです。

今は利益を生み出さなくともその積み重ねが10年後20年後の未来を創るかもしれない。人財はその最たるものだと思って、戦略的に計画を立てて投資をしているのです。新卒ですぐ戦力になることを期待せず、しっかり育てる。中長期を見据えて教育していくことは決して無駄なことはないのです。

「働く社員が充実感を持って幸せを感じてくれる」会社にする

「10年後どんな会社にしたいか」とたずねられると、私は「いい会社にしたい」と言っています。

本当の意味でいい会社とは、「働く社員が充実感を持って幸せを感じてくれること」だと思います。外から見ても中から見ても「いい会社だね」という会社にしていきたい。働く幸せ・新しいものを生み出す幸せ・お客さまの笑顔を見る幸せ・喜び、いろんな幸せが積み重なったものが会社で得られるといいと思っています。それをいい会社と想定しています。

儲からなくてつぶれる会社で働くことが幸せだとは思えないので、継続的に利益成長できる会社を目指し、そのためにやるべきことを洗い出しています。そしてそこで得た利益を社員に配分して経済的にも豊かになってもらう、これが私にとっての幸せなのです。


ナミックス株式会社 企業理念

会社はなぜ存在するかというと、そこで働く人がいて、働いた結果生み出したものがあり、その生み出したものが周りの人に価値を与えることに意義があるからです。それはお客さまに価値を提供していくことであり、税金を払うことであり、雇用を確保することなのだと思います。そのためには社員が幸せに働きながらいろいろなことを生み出していく事が理想です。

当社の人財育成基本方針の中でうたっていますが、当社は意欲を持っている人に対して成長の場を提供し、公正に処遇します。

さまざまな仕事で忙しい時期もあるかもしれませんが、目の前に難しい課題があってそれを一つ一つクリアしながら前に進むことは、働くことから得られる幸せだと思います。是非いろいろなチャレンジをして、自分なりの幸せを追求してもらいたいと思います。

入社をするということは、会社と個人が相互納得の上で結婚するようなものです。家庭と同じくらいの時間を仕事に費やすので、仕事とは人生そのものともいえると思います。そこでは成長もしてほしいし、充実感を持って幸せも感じてもらいたい。いろんな人たちが少しずつ寄り添い、支え合い、幸せだねといいあえる、そんな会社にしていきたいと思っています。

今後への期待

最近大切にしている人間力や徳の追求や深堀など、新しい見方についてのお知恵を拝借できればと思っています。

社員と話していて、頭では聞いてくれていることがわかるのですが、心に響いてるのかなと思う事もあります。左脳優位なのでしょうか。感受性や人間力に対してダイレクトな刺激を得られえるような体験をさせてあげたいと思っています。心の琴線に触れるようなことがあればいいなと思っています。

そのためには、何より継続的にいい講師を派遣してほしいと思います。

人はそれぞれ受け止め方が違い、理想と思う講師も異なります。色々なバリエーションの人がいればフィットする人もいると思うので、これからも紹介してもらいたいと思っています。

担当コンサルタントより

小田嶋社長より「働く社員が充実感を持って幸せと感じてくれる会社にしたい」そのために「人間力」や「徳」を学ばせたいという想いをお聞きし、計画的な教育展開のご支援をさせていただいています。

ナミックス様は、優れた技術力・専門性で成長し続けている素晴らしい会社です。その秘訣は、課題指向の強さ・スピードの速さにあると思います。ただ一方で、人間指向の弱さや人への関心の薄さ、教育研修に対する抵抗が当初はありました。しかし、計画的・継続的な研修を通して組織内に共通言語ができ、コミュニケーションの重要性が認識されるにつれ、人間関係を大事にする組織文化ができつつあると感じています。

小田嶋社長の想いは、BCon®が考える「人間力あるリーダー」すなわち、組織に高い社会関係資本をもたらすリーダー像に近いと感じています。社会関係資本とは、信頼・思いやり・協働・信用という人間関係が作り出す資本のことで、財務的な資本とは異なり目に見えませんが同じように蓄積されていくものです。また、当社は“働く喜び”“生きる幸せ”を実感できる組織づくりに貢献することをミッションとしており、教育には「知育(頭・IQ)」と同時に「徳育(心・EQ)」がとても重要であると考えます。その観点からもナミックス様の解決したい課題と当社が大事にしている考え方や持ち合わせているテクノロジーが合致 しており、長年教育を託してくださっていると感謝しております。

今後も、ナミックス様の目指したい未来への橋掛けにお役にたてるよう尽力させていただきます。

編集後記

今回は企業理念や中期経営計画と密着した人財育成がもたらす現場の変化についての事例をおうかがいしました。経営の方向性と人財育成が一貫性をもち、教育研修という場で翻訳機能を果たすことによって、社長の想いやメッセージが社員の意識や行動の変革につながってきていることがうかがえました。そして、そういった社員が増えていくことで、変化が激しい環境の中、経営計画を実現し続ける強い組織づくりができていっているのだと感じました。

BCon®では、理念や経営計画を実現するために、教育体系への落とし込みから実施までをサポートさせていただきます。また、経営のニーズに合わせて柔軟にプログラム展開を構築することも可能です。組織・人材に課題を抱えておられるお客さまは是非一度ご相談ください。

BCon、LIFOは、株式会社ビジネスコンサルタントの登録商標です

ナミックス株式会社

ナミックス株式会社
本社
新潟県新潟市
事業内容
エレクトロケミカル材料の研究・開発、製造、販売
従業員
493名(2015年度末現在)
ウェブサイト
https://www.namics.co.jp/

その他の事例